😎【中II.２学期/社会レポート】題目：空き家問題

※本レポートは、中学２年生2学期に息子が書いたレポートです。誤字脱字がございますが原稿をそのまま下ろしたものですのでお見逃しください。

題目：空き家問題
副題：~空き家の活用から考える～

序論

　今、日本では、増え続ける空き家が大きな問題となっている。総務省統計局が平成25年に行った「住宅・土地統計調査によると、全国の総住宅数は6063万戸であり、そのうち空き家は820万戸、空き家率は過去最高の13.5%という結果がでていると、板橋区老朽建築物対策計画2025では、述べている(1)。さらに、牧野智弘氏著の「空き家問題」では、このまま増えてゆくと2020年までには、空き家数は1000万戸にものぼるという。(2)これは、十分な社会問題と言えるだろう。このことをうけて、私は、自分の住む区ではどうなっているのかと興味を持ったため、このテーマを選んだ。
　本文の第一章では、板橋区の空き家の現状、空き家は、何が問題となっているのか、なぜ空き家が出来るのかといったことを述べる。第二章では、空き家問題に対する対策を述べた後になぜその対策で減らすことができないのかを述べる。第三章では、空き家を減らすための対策を述べる。

第一章　空き家の現状と問題点と増加する理由

第一節　板橋区の空き家の現状
　今日本で空き家が問題となっているということは序論で説明したが、板橋区ではどうなっているのかを、この節で説明する。
　東京都板橋区都市整備部建築指導課の資料「令和元年度実績等について」で、述べられていた「平成30年度住宅・土地統計調査」によると、板橋区の総住宅数は336,280戸となっており、そのうち空き家の数は、36,640戸で、空き家率は10.9%となっている(3)。東京23区でもありながら、全国の空き家率と3%ほどしか変わらないのだ。さらに、同資料によると、板橋区の空き家率は東京23区のなかでも10位となっている(4)。
　東京都板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループのパンフレットによると、空き家の種類は四種類に分かれており、危険度Aが危険な空き家、危険度Bはやや危険、危険度Cが安全（老朽化はしているが危険はない）、危険度Dが老朽化なし、となっている。板橋区が調査した空き家1525件のうち、危険度Aが118件、Bが354件、Cが347件、Dが706件、となっている(5)。危険な空き家は7.7%、やや危険も含めると30.9%と、3分の1が危険なのである。
　さらに、前出の東京都板橋区都市整備部建築指導課の同資料によると、板橋区の老朽建築物等の相談件数は平成27年度が39件、平成30年度には92件と、増加している(6)。こ
れにより、板橋区の空き家問題の解決への需要が、年々高まってきていることがわかる。
　これらのことから板橋区の空き家問題の解決は非常に重要なことだと考えられることだろう。

第二節　空き家の問題点
　さて、ここまで序論と一章一節で空き家の現状について説明してきたが、ここからは空き家によって周囲にもたらされる悪影響について説明していく。
　まず、　東京都板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループの資料によると、板橋区で起こる主な問題として建物の倒壊、樹木の繁茂、動物等の発生があげられるという。前出の牧野智弘氏の同書では、建物の倒壊について、柱が傾いたり、腐敗したりすることによって建物が崩れ近隣の家に飛び出したりするだけでなく、崩れた建物は火元になって火事の原因となってしまうという(7)。これは、近隣の住人にとってはいつ崩れるか分からず危険なうえ、道路を歩いている時にいきなり崩れてきて下敷きなってしまうなどの可能性があるのである。また、樹木の繁茂について、中川寛子氏著の「解決！空き家問題」では、樹木が生い茂ることで景観上よくなかったり、樹木が死角となることによって前がみえず事故の元となったりするという(8)。また、動物等の発生について、東京都板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループの鈴木氏は、空き家に放置されたゴミなどを求めてアライグマやハクビシンなどの害虫が住処にしたり、実際に板橋区では、空き家にスズメバチが巣を作ったりしたという例もあるという(9)。これは近隣住民からしてみれば、自分は家をきれいにしているのに、近くに空き家があるだけで、害獣や害虫による被害を受け、場合によっては死に至るというのだ。これは主な例だが、前出の中川寛子氏の同書によると、これだけでなく、空き家に放置されたゴミによる悪臭やハエなどの害虫の発生や、ゴミによる引火、不良が空き家をたまり場して教育上よくなかったり、不審者が住み着いて犯罪を誘発したりしてしまうなどと非常に危険なのである(10)。
　これらのことから空き家は非常に危険な問題で、場合によっては人を死に至らせるほどのものであり、近くに住んでいる、というだけで、誰でも被害者になりかねないため、とても難しい問題で、だからこそ、近隣住民たちは一刻も早く取り除いて欲しいとおもっていることだろう。

第三節　空き家問題の原因
　さて、第二章で空き家の対策を述べる前に、この節ではなぜ空き家ができ、増えるのかということをのべる。
　国土交通省のデータ「新設住宅着工戸数の推移」によると平成25年の減失戸数は127戸となっている(11)。減失戸数とは、解体された家のことで、減失戸数が127戸なのに対し、空き家の総数は846万戸なのだから、ほとんどの空き家が解体されることなく残っているのだ。ではなぜ解体されないのか、土地カツnetの記事「空き家問題の2019年最新状況は？増加の原因と対策・解決策」によると、家に思い入れがあって解体するのをためらうというものや、また、経済的な理由としては、住宅のない土地では固定資産税の特例がなくなり税率が6倍に増えてしまううえ、さらに解体に費用がかかるということだ(12)。つまり、お金を使って解体するのにさらに税率が上がるため、使っていなくても、わざわざ解体する、という人が増えないということである。もう一つ深刻な問題として、土地カツnetの同記事では、古い空き家では、現行の建築基準法の施行以前に建てられたものが多く、そういった場合再構築が認められない土地になってしまっているケースがあるという(13)。そうした場合、再構築ができないのだから、解体してしまうと宅地として用を足さず、放置するしかなくなるだろう。ならばその住宅を解体せずに売るか貸すか、すればいいなどと思われがちだが、土地カツnetの同記事によると、空き家をリフォームしても、これから住宅を得る層は、やはりどうしても品質が確実な新築住宅にいくため、新しい層は入ってこず、賃貸においては、木造の売買物件は築10年で半額程度まで落ちるが、木造の賃貸物件が築10年で半額になることは考えられないため、中古の賃貸は借りる側の割安感が小さく、賃貸でも大きく差のない新築に流れて中古物件の空き家が増えるという(14)。つまり空き家の物件は売ることも貸すこともできない状況に陥るものが増えるのである。　　　　　　　　　　 　　　　
　こうしたことから管理のできない空き家が増え、老朽化し、周囲への被害を増やしているのだ。

第二章　空き家問題への対策

第一節　板橋区での対策
　板橋区での空き家への対策では主に二つのことを行っている。それは専門家派遣事業と、除却助成事業である。まず、専門家派遣事業について説明する。　
　専門家派遣事業とは、東京都板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループの資料によると、空き家に対する知識がなく、どうすればいいのかわからないという人に向けて、板橋区内で、建築士、不動産鑑定士、弁護士、司法書士、行政書士などの専門家を、一回につき二時間を限度として同じ対象者につき三回を限度として無料で相談できるというものである(15)。この制度があれば空き家について知識がなくとも適切な対応ができるためとても助かることだろう。実績としては東京都板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループの別資料によると、平成29年度で11件相談があったという(16)。
　助成金事業とは、特定空き家等又は特定老朽建築物に認定された建築物の解体費用の一部を助成するというものである。助成費用は接道のある敷地は解体費用の5/10で上限は100万円まで、接道のない敷地は8/10で上限が200万円となっている。接道のあるなしとは、東京都板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループの鈴木氏によると、接道のない敷地とは、道路と接する面が2メートル以下の住宅を接道のない敷地という。なぜ接道のない敷地の助成金が高いのかというと、接道のない敷地はクレーンなどの機械が入らず手作業で解体しなくてはならないため通常の物件よりも手間がかかってしまうからだという(17)。これらの政策は平成28年度から実施されたため、まだ大きな成果は見込めないが、東京都板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループの出原氏の話によると、これらの事業について板橋区は啓発事業を行って、これらの事業について知らない人にも知ってもらおうとしているという(18)。さらに、これらのボランティアの政策だけ でなく、板橋区老朽建築物対策計画2025では、所有者が特定される特定老朽建築物の対策として「助言」、「指導」を行った後、「勧告」を告げ、後に「命令」を行ってそれでも解体しようとしない場合、「行政代執行」を行って老朽建築物を解体するというものだ(19)。私がフィールドワークを行った場所は成増四丁目行政代執行といわれ、実際に行政代執行が行われた場所である。この＜資料1＞は行政代執行が行われる前で、建物は倒壊し、ゴミは放置されているというひどい状況だが、行政代執行によって＜資料2>のように今は解体され空き地となっている。

第二節　これらの対策の問題点
　板橋区は様々な対策を行っているが、実際には結果はあまり出ていないのも事実である。では、なぜこれらの対策では結果が出ないのかということをこの節では解説していこうと思う。
　まず一つ目はやはり板橋区民が前に述べた政策等を知らないというところにあると東京都板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループの出原氏は語る。啓発事業を行っているとはいえども空き家の所有者が空き家の政策等に関心がなければ目にすることもなく、専門家に相談するにも相談の仕方が分からない場合は諦めてしまったり、解体しようにも助成金がでることを知らない場合はお金がかかるから解体しなくてもいいやなどとなってしまったりするという。さらに難しいのが二つ目のそもそも解体する気がない場合である。どういうことかというと、空き家に思い入れがあって解体したくないという人や、住宅のない土地では固定資産税の特例がなくなり税率が6倍に増えてしまううえ、さらに解体に費用がかかるから解体をしないというケースもあるという(20)。こういった場合こそ行政代執行を行うべきだと思うかもしれないが、同グループの出原氏は、行政代執行を行うには条件を満たさないといけないため困難であるとともに満たしたとしても、指導、助言、勧告、命令には、時間がかかるため効率良く空き家を解体していくことは難しいという(21)。

第三章　行うべき空き家の対策

　私は空き家を対策するにあたって、解体するのではなく、他のものとして上手く活用できないかということを考えた。そこで、前出の牧野智弘氏の同書では、市街地再開発事業の応用、シェアハウスへの転用を例にあげている。市街地再開発事業とは、都心部などに数多く存在する住宅や商店などの密集地について、それぞれの権利を持ち寄って一体の土地にし、高度利用や都市機能を取り入れ公共性にも配慮した建物に建て替えることで都市の再開発を促すという事業である。この手法を空き家問題の解決につなげるというのはどういうことかというと、まず、空き家はもちろん高齢化してお年寄りの一人暮らしが進んだエリアを選ぶ。高齢者の一人暮らしだと一人で住むにはとても広く、家という資産を持て余しているという人が多いいため、その高齢者たちに住宅の権利を持ち寄ってもらい、状況に応じて再開発事業のシェアを決め、対象エリアの容積率を上げ、自治体などがそこに高齢者専用の賃貸住宅などを建設し、権利者の高齢者たちはそのまま施設に入居することができるのだという(22)。この手法ならば空き家も無くせ、空き家予備軍も未然に防げるうえに、高齢者を介護施設に入れることまでできてしまうのだ。しかしこの手法の欠点としては大掛かりなため時間と手間暇がかかるという点である。シェアハウスへの転用とは前出の牧野智弘氏の同書では、シェアハウスというのも、大勢の人が同じ家で暮らすというものではなく、地域に貢献することができるものである。空き家を地域の人々の憩いの場として安い利用料でシェアして使ってもらうというものだと述べる(23)。この場合朽ち果てかけているような家では難しいが、ある程度の規模ならばこどもの遊び場にするなどといろいろな活用法があるため、地域に貢献しつつ空き家を解体しないで済むことになる。
　ここまでだと板橋区にはさらなる対策はないのかと思われるかもしれないが、板橋区では、現在福祉関係の場所と協力してなにか活用ができないか空き家所有者などに意向調査中だと、東京都板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループの乙川氏は述べる(24)。

結論

　このレポートでは、第一章で板橋区の空き家の現状や、空き家による問題、なぜ空き家ができるのかを説明し、第二章で専門家派遣事業や、除却助成事業、行政代執行などを説明し、なぜそれらの対策でなくすことができないのかを述べた。第三章では、市街地再開発事業の応用や、シェアハウスへの転用を説明した。
　空き家問題について調べて、自分の近くの家が空き家で被害を被っていたらと考えると迷惑なため空き家を地域に貢献できるように活用に取り組んでいって欲しい。
　本レポートでは、板橋区の空き家について書かれた文献を見つけることができなかったため、一、二章の引用が偏ってしまったため今後のレポート執筆にこの失敗を活かして取り組んでいきたい。

引用注
　(1)　板橋区老朽建築物対策計画2025　板橋区都市整備部建築指導課　2016年　p2
　
　(2)　牧野智弘著　「空き家問題」　祥伝社　2014年　pp.14-15

 (3)　 板橋区都市整備部建築指導課　「令和元年度実績等について」　2019年　ｐ5

　(4)　 板橋区都市整備部建築指導課　同上書

　(5)　 板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループ　パンフレット　

　(6)　 板橋区都市整備部建築指導課　前掲書

　(7)　 板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループ　資料

(8)　中川寛子著　「解決！空き家問題」　ちくま新書　2015年　p66

　(9)　 板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループ鈴木氏のお話

　(10)　中川寛子著　前掲書

　(11)　土地カツnet　https://www.tochikatsuyou.net

 (12)　土地カツnet　同記事
　
　(13)　土地カツnet　同記事

　(14)　 土地カツnet　同記事
　(15)　 板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループ　前掲資料

　(16)　 板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループ　「令和元年度実績等について」

　(17)　 板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループ鈴木氏のお話

　(18)　 板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループ出原氏のお話

　(19)　板橋区老朽建築物対策計画2025　pp.44-46

　(20)　 板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループ出原氏のお話

　(21)　同グループの出原氏のお話

　(22)　牧野智弘氏著　前掲書

　(23)　牧野智弘氏著　同上書

　(24)　 板橋区都市整備部建築指導課老朽建築物グループ乙川氏のお話