⑦慢性腰痛アプローチを取り巻く様々な課題点
前回の記事を見ていない方はぜひこちらからどうぞ♪
【前半戦スタート】慢性腰痛エキスパートのセミナー参加してみた
【前半戦中盤】Kieran O'Sullivan氏 腰痛セミナー
【前半戦後半】非物理的要因に対してセラピストは何をすべきか
【後半戦①】LOW BACK PAIN X COGNITIVE FUNCTIONAL THERAPY
【後半戦②】慢性腰痛に対して理学療法士の私は何をどうすればいい?
【後半戦③】Kieran O'Sullivan氏腰痛セミナー後半戦も終盤
ここまで慢性腰痛に対して理学療法士がCFTを用いて具体的にどうアプローチしていくことができるのかの可能性をオサリバン氏のセミナーをもとに紹介してきました。
セミナーの終盤はやはり、「夢物語で終わらせちゃいかんよ」とオサリバン氏はさまざまな課題点を指摘してくださいました。その内容をここみなさんとシェアしながら議論出来たらなぁと思います。
1. CFTに関する留意点と警告 – 「Reminders & Caveats」
Cognitive Functional Therapy(CFT)は、慢性腰痛(LBP)の治療において効果的なアプローチとして広く認知されていますが、いくつかの留意点や限界が存在します。
〇多職種連携の必要性
CFTは、患者の痛みや障害を総合的に管理するために設計されていますが、物理的要因を超えた心理社会的要因や経済的な問題など、筋骨格系の専門家が対応できない領域もあります。これらの要因は痛みに大きく影響することがあり、そのために多職種連携が必要になる場合があります。
〇LBPに対する「治癒」は存在しない
現時点では、慢性腰痛に対する完全な治癒法は存在しません。CFTは腰痛の管理と機能回復に効果的ですが、根本的に痛みを完全に取り除くことを目指しているわけではありません。患者と医療者の双方がこの現実を理解し、治療の目標を適切に設定することが重要です。
〇改良の余地あり
現在のCFTの実践には改良の余地がまだ多く残されています。患者と医療者の両方が腰痛に対する思考を変えることが多々必要であり、これは容易なことではありません。
〇異なる医療環境の影響
医療提供の状況は、患者プロファイル、公共と民間の違い、社会経済的背景、専門家の役割など、医療環境ごとに異なるため、CFTの効果は場所や状況によって異なる可能性があります。理想的には、公衆衛生、予防、治療のメッセージが一貫していることが望ましいですが、現実にはそううまくいきません。
〇それでも、CFTはガイドラインに適合している
それでも、CFTは現代のベストプラクティスガイドラインに準拠したアプローチであり、科学的根拠に基づいています。慢性腰痛の管理において、CFTは有効な治療法として認められており、実際の治療現場でも広く活用されています。
〇筋骨格系リハビリ専門家の役割
筋骨格系のリハビリテーション専門家は、CFTを通じて患者と医療者の間のギャップを埋める役割を果たすことができます。専門家がCFTの実践を深く理解し、患者のニーズに応えることで、治療の効果を最大限に引き出すことが可能です。
2.サービス提供における課題と示唆 – 「Implications for Service Delivery」
Cognitive Functional Therapy(CFT)を実践する際には、単なる治療法の効果を超え、医療サービスの提供方法や保険報酬の仕組みなど、様々なシステム上の課題が関わってきます。
〇混合されたメッセージ
現在の医療システムには、慢性腰痛の治療に関して混合されたメッセージが多く存在します。異なるアプローチや治療法が推奨される中で、CFTのような統合的で個別化された治療が確実に伝えられるようにする必要があります。
〇統合的なケアの不足
CFTのような多職種間連携を要するアプローチは、多職種・学際的なケアが依然として希少で断片的であるため、実践が難しいとされています。各分野の専門家が連携し、患者に対して包括的なケアを提供することが求められていますが、その実現には課題があります。
〇サービス提供と報酬体系がガイドラインと一致しない
多くの場合、サービスの提供方法や報酬体系は、現行のガイドラインと一致していないことが課題です。患者中心のケアやリハビリテーション、ライフスタイルおよび心理社会的なサポートに焦点を当てた治療が推奨されているにもかかわらず、これらが十分に報酬として評価されていないことが問題です。
〇「より多くのケア」を提供することの難しさ
CFTのようなアプローチでは、物理療法、リハビリテーション、ライフスタイルのサポート、心理的支援など、より多くのケアが必要となります。これを患者中心のケアとして提供することは、医療者や保険制度において実施するのがやや困難とされています。
〇「より少ないケア」を提供することの困難さ
一方で、CFTの原則に従って、不適切な検査(過剰な画像診断など)や、長期的な薬物療法、効果の薄い治療を減らすことも目指しています。これには、長期的な治療方針を見直し、短期的な痛み治療に偏らないアプローチが必要ですが、これを実行するのは非常に難しいとされています。特に、従来の医療慣習や収入源に依存している治療法を減らすことは大きな課題です。
〇慣習や実践を変える難しさ
医療現場では、慣習や実践、収入源を変えることが難しく、多くの医療専門家や機関、保険会社、病院などが、従来のガイドラインやシステムに依存しています。これらの変更には、関係者全員の同意と協力が必要であり、その実現はなかなか困難です。
3.セミナーの最後に講師のKieran O'Sullivan氏に質問してみた
せっかくの機会だし・・・と思い、質疑応答の時間に、オサリバン氏の臨床経験に基づいたエピソードなどを聞いてみました!
質問「生物心理社会モデルを用いながら患者さんをサポートしていくなかで、特に難しいと感じる場面はどのような時ですか?In your experience with patients, what situations do you find particularly challenging when applying the biopsychosocial model?」
私はオサリバン氏が臨床と研究を続けていく中で、実際彼自身なにが一番Challengingと感じるのかを聞いたみたかったので質問してみました。
少し質問内容が抽象的かなと思ったのでついでに「具体的には年齢・文化・診断名など」と付け加えて質問しました。
以下、彼からもらった回答(の一部)です。
※回答していただいてる途中で、だっこ紐で寝かしつけしていた3女がすごい雄たけびをあげだして聞き取れなかった部分がありまして(こちらはミュートにしていたので他の参加者の方たちには迷惑はかけていないです!)・・・すみません!(´;ω;`笑
1. 経済的な制約や生活環境の問題
貧困にある患者は、十分な医療やリハビリにアクセスすることが難しい場合があります。例えば、定期的な通院やリハビリに必要な交通費、処方薬、検査費用などが経済的に負担となることがあります。その結果、治療を継続できず、効果的なアプローチが行えないことが課題だとおっしゃっていました。貧困層や社会的に弱い立場の人々は、不十分な住宅環境やストレスフルな生活状況に置かれていることが多いです。これにより、患者が適切なリハビリを行うためのスペースや、適切な栄養、十分な休息を取ることが難しい場合があります。また、家庭や職場でのストレスが、心理的な回復の妨げになることもあります。
2. 文化的背景からくる医療に対する偏った考え方
この部分で娘が雄たけびを上げだして聞こえずらかったのですが、確かポーランド出身の患者さんの例を挙げて、痛みに対する治療は「絶対こうあるべきだ」という固定的な考え方を変えていくことがとても難しかった経験をお話しされていました。残りは聞き取れませんでした!すみません!!
何はともあれ、とても実りのあるセミナー参加となりました。
皆さんは、CFT、実際に臨床で使っている方いらっしゃいますか?もしいらっしゃる、もしくはやっている人を知っている!って方いらっしゃったらぜひコメント欄やX等で経験談をシェアしていただけたらとても嬉しいです!
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
マガジンにしているので、また機会があったら読んでもらえると嬉しいです😉シェアも大歓迎✍️✍️🫶💯
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