【似非エッセイ】本命
先日、ボクシングライターの重鎮・丸さん(丸山幸一さん)と電話したときのこと。
「あれだろ。バレンタインは娘さんにチョコ貰うんだろ」
唐突に言われた。まあ、丸さんあるあるだ。後から考えれば、以前の職場の同僚女性から、いまだに毎年義理チョコを貰っているという、軽い自慢話の前フリだったようだが(笑)。
まもなく高校を卒業し、短大進学を決めている娘。あの子が小5とかそのくらいに1度だけ郵送してもらったことがある。しかも、好きな男の子にあげるために自分で作ったものの、失敗してしまった駄作を。そんなん黙ってりゃいいものを、我慢できずに言ってしまう。ここはオレに似ちゃったのかもしれないな。
“本命”チョコというものを、人生でたった1度だけ貰ったことがある。たしか小5のときだから1983年。もう、かれこれ40年も前のことだ
学校から帰宅してのんびりテレビかなんか観ていたら、ピンポ~ンってチャイムが鳴ったので出た。クラスの女の子が立っていた。
「はい、これ」
「え、ナニコレ」
「いいから早く受け取って!」
「……」
色白の彼女の顔が真っ赤になってるのがわかった。でも、バレンタインなんて完全に他人事だったから、状況がまったくわからずにポカ~ンと立ちつくす。小さな箱をオレの体に押しつけるようにした彼女は、逃げるようにその場を立ち去った──。
こんな感じで、あのときの光景はいまだに鮮明に憶えてる。オレ、よっぽど嬉しかったんだろうなぁ。たしかハートマークのチョコだった。いまそんなん貰ったら、頭ん中をいろんな妄想が駆け巡ってグッチャグチャになっちゃうだろうけど、当時は「うめーうめー」なんつってただただかじりついただけ。
でも、翌日からその子にはなんとなく冷たい態度で接してしまったのだ。照れ隠しで。ホントは嬉しいくせに。変に意識してしまって。ちょっとエロイこと考えていただけに逆に。そんなことだから、その子もなんとなく引き気味になってしまい、それっきり何もなく時は流れてしまった。
後年仲の良い女子にそれとな~く探ってもらったら、「声変わりしたからかわいくなくなっちゃった」だとさ。オレ、かわいかったのか!(笑)。まあ、声が変わったらみんな「男」どころか野獣へと変わっちゃうからな。賢明な判断だったと思う。
SJちゃん。今振り返ると、切れ長の目が色っぽい(小5なのに)、スゲーべっぴんさんだった。
オレたちの地区はそのまま中学まで一緒だけど、卒業したらそれっきりって子が多い。同窓会も何度かあったんだろうけどそれすら知らん。だから、彼女がどうしてるのか、全然わからない。元気にしてるのかなぁ。オレは元気だよ(笑)。
ってなわけで、バレンタインどうのなんて関係なく、チョコレートは大好物だ。先週、何年ぶりかにアルファベットチョコを買ってしまい、やっぱり連日のように貪り食ってしまってる。
印字されてるアルファベットなど意識したことがなく、小さな透明の包みをひたすら剥いてはポンポン口の中に放り込み、ガリボリやるだけ。先日ふと思いついて、なんのために? その用途は? なんてちょっと考えたけど、結論が出ずに終わった。
が、今日、この聖なる日に浮かんできた三文字があった。
「それ、集めてみよ!」って急に思い立って探してみた。けれども残念ながら「S」しか見つからなかった。「Y」とか「I」とか「P」は3つずつ入ってんのに。アルファベット全部が満遍なく入ってるわけじゃないのね、って知ったことだけが収穫(なんの?)だった。
この聖なる日にふさわしい三文字。わかるかなー(笑)。
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