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【ドラマ】『たそがれ優作』でまたしても実感。狂おしいほど愛おしいテレ東系ドラマ

 バイオレンス臭ぷんぷんのただならぬ雰囲気の幕開けから、一転してゆるやかに進んでいく変調がたまらない。ドラマの制作現場がどんなものか、ただの素人には全く知る由もないが、ストップウォッチでタイムを計測する担当さんがいるんじゃないか。そんなことすら考えてしまうほど、心地よいテンポが貫かれ、流れていく。それを実現する役者さんたちの細かい“間”もきっと絶妙なのだろう。
 普段、ボクシングを見ていて「テンポ」だの「間」だの「リズム」だのに憑りつかれている自分としては、それらをさらに深く考え、堪能する学びともなっている。

 名バイプレーヤーの道を歩んでいる北村有起哉が、同じく脇役としてようやく売れっ子となった「北見優作」を演じている。まさに、彼のためにあるかのような役どころである。そんな彼をはじめ、出演している役者さんたちのほんのわずかな表情の変化、何気ないさりげない所作が、言葉(セリフ)をともなわずとも、こちらをひたひたと心地よく刺激する。

 ヘアメイクとスタイリスト。優作担当の若い男女の“いじり”テンポが軽快で良い。同じ団地に住む“評論家”小学生。彼女の達者さが末恐ろしい(良い意味で)。毎回、最終的に行き着くバーのママ(坂井真紀)のひと言が、硬軟織り交ざった見事な調子で染み渡る。出てくる人、出てくる人、全員が愛おしい。第4話の内田慈なんて、ファンのわたしにゃ卒倒レベルだった。

 地上波放送の『すべて忘れてしまうから』といい、かつての『湯けむりスナイパー』、『まほろ駅前番外地』、『リバースエッジ 大川端探偵社』の“大根仁三部作”(←勝手に命名)といい、なぜにテレビ東京系は、こんなに愛おしく狂おしい名作ばかりを提供してくれるのだろうか。
 ……と、そんなことを考えながら何気なく録って観てほんわかしてしまった『ちょこっと京都に住んでみた』も系列(テレビ大阪)じゃないか。しかも、2019年のスペシャルと、去年の連続(全6回)があったなんて。

 死ぬまでにどれだけのテレ東系名作を掘り起こせるか。また、追いかけられるか。人生が、さらに豊かに楽しく思えてきた。

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