八重樫東トレーナー率いる箱根キャンプ。大橋ジム4選手が最後はバスケで締めくくり
※写真=左から武居、今永、八重樫さん、保田、清水。同地でのキャンプは2年ぶり2度目となる
23日から始まった神奈川・箱根キャンプの最終日25日もあいにくの雨に見舞われてしまった。
「外でできたのは昨日の午前だけ。何もできませんでした」と八重樫東トレーナーはガックリとうな垂れる仕種を見せるのだが、選手たちは前日の午前中にトラックでだいぶ鍛えられた様子。「めっちゃ走ってもう足がヤバい」(清水聡)、「動かないです」(保田克也)と、最終練習前から悲鳴を上げる。武居由樹、今永虎雅の若いコンビも、時折奇声を発しながら(最近の彼らのこれがトレンド)、自身を叱咤して取り組んでいた。ロングランやダッシュだけでなく、体育館内で行われる地味に見えるメニューもまた、彼らの下半身にじわじわと負荷をかけている。それが「八重トレ」である。
この日はウォーミングアップ・ランの後、三段跳びの「ホップ&ステップ」で周回、同「ジャンプ」で周回、「反復横跳び」、「ダッシュ→ストップ&ゴー」、「跳び箱」を消化し、ラストを飾ったのは3対3のバスケットボールだった。
中学時代、バスケ部に所属し、「岩手の田臥」と呼ばれた(!?)八重樫さんらしい発想。選手たちも体育の授業等でやったことがあるだけに、懐かしそうでなんだか嬉しそうである。
「ボクサーは球技が苦手」というイメージが昔からあった。「だから個人競技に走った」と、ボクシングを始めたきっかけとする選手にもたくさん会ってきた。けれどもロイ・ジョーンズ(アメリカ)やマニー・パッキャオ(フィリピン)のように本格的に二足の草鞋を履いた選手もいるし、国内では、柴田昭雄や阿部麗也(KG大和)のように、バスケ出身者が活躍してもいる。彼らを見ていれば、バスケのリズムやフェイント、そして足さばきは見事にボクシングにマッチしている。手にボールさえなければ、バスケとボクシングのスタイルには共通点が多いのだ。
こうして25分間のノンストップ・バトルが幕を開けた。
ドリブルは当然のことだが決して上手いとは言えない。けれども、みんなやっぱり足運びがさまになっている。フェイントのかけ方や、ボールの奪い方も堂に入っている。とても何年ぶりにやったなんて思えないレベルだ。
相手をおびき寄せておいて、フッと“間”を作り、それを抜いてかわす。リング上とやっていることは変わらない。ボクシングジムで見る光景と大差ない。そんな気さえしてきた。
テクニカルな面だけでなく、ボディーバランスを保ったり、相手をかわしていく際の体の使い方だったりは、「八重トレ」で積み重ねてきた集大成でもあると思う。そこが八重樫さんの狙いでもあったのだろう。
清水、保田、武居チームvs.八重樫、今永、武居の知人のカメラマンさんチームは前者が勝利したが、同チームはゲームをしている最中に、役割分担が出来上がっていったところが興味深かった。清水が相手のゴールを妨害する役、保田がドリブル、武居がゴール近辺に待機する「メッシ」(清水)といった具合だ。清水は決定打を打たせない、保田はフットワーク、武居は決定力、今永はオールラウンダー、といったように、ぞれぞれのボクシングスタイルが表れていたのがなによりおもしろかった。
足が動かない、と嘆いていた4選手だが、気がつけばバスケを楽しみながらスムーズに動いていた。そこにプロフェッショナルを感じるとともに、動かないと思っていた足が動くヒントを見い出した気がした。
「今回、5人部屋だったんですよ。みんなそれぞれの世界を持っていて、自分勝手に動いてるんですが(笑)、その中でも几帳面なやつ、大雑把なやつっていろいろタイプが分かれてて、でもそれでうまく回ってる。そんなところもおもしろかったです」と八重樫さん。ジムワークの付き合いだけではわからない一面も見られる。それもまた指導者としては学びになり、選手たちは互いに刺激を与え合う場となるのだろう。
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暁視GYOSHI【ボクシング批評・考察】
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