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億の眼

ひどく青ざめた夕暮れ 黒い蝶が飛んでいく
街にひとはおらず にもかかわらず 億の眼に見つめられている
足先に踏みにじられたケシの花 誰にも摘まれることもなく 踏まれ 雨に打たれ それでも花を増やす
歩道に煙草の灰を落とす 億の眼がささやきだす
僕は背後を振り向く 電柱の影が揺れ 工場の煙が赤く染まり 億の眼がささやきだす
億の眼は僕を裁きだす 神でも法でもない億の眼に僕は裁かれる
煙草を落とし ケシの花もろとも 靴底で擦りつけ 唾を吐く
億の眼の声が街に響き渡り 青ざめた空に舞う蝶は烏に 烏は鷲に変わり
僕にめがけて飛んでくる
何も持たない僕には 身体を守る盾もなく
裁きを受けよ 過ちを認めよ 億の眼は厳格に正邪を判じる
僕の身と心を滅ぼして


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