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【読書】恋愛小説4選

お久しぶりです。今回は、かれこれ15年ほど読書を続けてきた筆者が、恋愛小説を4作品紹介したいと思います。

・「よだかの片想い」(島本理生)

<あらすじ>
主人公のアイコは生まれつき、顔に大きな痣を持っています。そのことが彼女のコンプレックス、心に影を落とす原因でもありました。しかし、アイコは友人の紹介で「顔に痣や傷を負った人」のルポルタージュ本の取材を受け、その本は話題となり状況は一変。映画化の話が持ち出され、その映画を撮る監督飛坂と出会います。アイコは飛坂と話しをしているうちに、どんどん惹かれていくわけですが……

<一言>
純文学系の文学賞出身の作者ですが、この小説はややライトに書かれています。島本理生さんの書く恋愛小説に、一時期はまって読み漁っていました。彼女の小説には理不尽な男性がけっこう登場するのですが、それも現代的に思えてリアリティを感じていました。ほかにも、「あられもない祈り」「ナラタージュ」など名作がありますが、ストレートに心に届く作品としては「よだかの片想い」かなと。

・「ホリーガーデン」(江國香織)

<あらすじ>
女子校時代からの友人関係、果歩と静枝。果歩は過去の傷を引きずり、静枝はそんな果歩に胸を痛めるものの、静枝は静枝で不倫関係にはまっています。果歩はその静枝の行動を理解できません。でもそれは、お互いを嫌っているからではなく、近くにいすぎて自分のことのように感じてしまうから。

<一言>
誰かがレビューで「お守りのような本」と言っているのを目にしたことがあります。最終的には、果歩の過去・彼女を傷つけた相手がどんな酷いことをしたのか――が、遠まわしに語られるのですが、後味が悪くなく、周囲の登場人物に心が洗われる作品となっています。江國香織さんの書く、繊細な言葉選びが好きなんですよね。影響を受けた人も多いと思います。

・ノルウェイの森(村上春樹)

<あらすじ>
37歳の主人公は飛行機のなかでビートルズの曲が流れ、激しく心を乱されます。理由は18年前――当時大学生だった主人公と、亡くなった友人の恋人・直子、そして大学の友人緑との、過去を思い出したから。青年期に訪れた喪失、そしてそこからの再生を描く作品。

<一言>
ちょうど、大学時代に何度も読み返した作品です。登場人物の直子に感情移入したわけですが、友人とするなら緑と話をしてみたいとも思いました。年月を経て、また再読したところ、村上春樹作品にしてはあまりにも表現をストレートに書いているのでそれも驚きでした。もっと文章が小難しいと思っていたのに、構成もそれほど複雑ではないし。重たいテーマですが、とっかかりやすい作品かなと。

・ニシノユキヒコの恋と冒険(川上弘美)

<あらすじ>
優しく、さわやかで、容姿もよく、女性を引き寄せる男・ニシノユキヒコ。恋愛対象としては適切な男性――と思われているのに、いつも最終的には女性から振られてしまいます。それなのにも懲りず、真実の愛を求めてニシノユキヒコは、生涯女性と付き合い・別れを繰り返すのですが……

<一言>
一応、長編小説?だと思いますが、ニシノくんに関わる女性のエピソードをそれぞれ短編として書き、それを連作形式にしています。一見、非の打ち所がないように思えるニシノユキヒコ。でも、読んでいるうちに、「ああだから振られるのね」となんとなく彼のしょうもなさを察してしまう。川上弘美さんは、この微妙なニュアンスを表現するのがとても上手です。決定的なダメ要素を露骨に書かず、ストーリーを辿るうちに読者が文脈を読んで「察する」。

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ほかにもおすすめの小説があるのですが、今回はここまで。嫌なニュースや情報が氾濫しているなか、本の世界に入ることは、心の静けさを取り戻すことだと思います。ではまた。

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