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小さな物語。

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掌編・短編集。
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2018年7月の記事一覧

悲しみかたを教えて

 梅雨が終わると、夏が始まった。
 晴れているのは、始めだけだ。あとは、梅雨にだしきれなかった雨が、少しずつ遅れて吐きだされるように、雨の日が続いている。夏の雨は、なぜだか、安心する。とりわけ、夏の夜の雨などは。
 からん、とグラスの氷が回る。
 私は甘みのない炭酸水を飲みながら、キッチンのへりに寄りかかり、雨の音を聞いていた。ときおり、前髪をさわる。昨日、髪を切ったのだ。首が露わになるくらいの、

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