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会社の機関設計

今回は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則4「取締役会の責務」の中の「会社の機関設計」の基本について説明したいと思います。ここでは、上場会社の大部分である大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)を前提にお話します。

1.ガバナンスを支える機関設計

2015年5月に施行された改正会社法で、従来の監査役会設置会社と指名委員会等設置会社の2つの機関設計に加え、新たに監査等委員会設置会社が新設されました。

2002年に導入された委員会等設置会社は、委員会設置会社、指名委員会等設置会社と名称が2度変更されていますが、監査委員会のほか、取締役の選任や報酬を過半数の社外役員で構成される指名委員会および報酬委員会で決定する仕組みであり、なかなか思うように導入が進んでいないようです。

監査等委員会設置会社は、監査役会設置会社と指名委員会等設置会社の中間的な位置づけとして新設され、この制度に移行している会社が増えています。なかでも社外役員の人数が最低2名で足りる点が導入につながっているようです。

2.監査役会設置会社とは

監査役会設置会社は、会社法の規定により監査役会を設置する会社です。 監査役会には3名以上の監査役が必要で、そのうち半数以上は社外監査役でなければなりません。また、監査役会は監査役の中から常勤監査役を定めなけれ ばなりません。

監査役会設置会社は、取締役の業務執行の監督を強化するため取締役会とは別に監査役によって構成される監査役会を置きます。監査役には、取締役会への出席義務や意見陳述義務はありますが、取締役会に おける議決権はありません。

また、監査役会制度は日本独自の制度であるため、海外ではあまり馴染みがない仕組みです。 このため、日本のコーポレートガバナンスが弱いのは監査役会制度のためである、との批判を海外の投資家から受けることがあります。

監査役の任期は4年と長く、最低1名の常勤監査役の設置が求められ、監査役の権限には会計調査権、事業報告請求権、業務調査権、子会社調査権などがあり、意外と強力です。

3.指名委員会等設置会社とは

指名委員会等設置会社とは、取締役会の中に指名委員会、監査委員会、及び報酬委員会を設置する会社です。

取締役会の中に設置される各委員会では社外取締役が過半数を占めることが求められます。そして、指名委員会等設置会社の取締役会は、非常に重要な意思決定を行うだけになります。

指名委員会等設置会社では、取締役会から権限移譲を受け、意思決定や業務執行を行うために執行役を置くことになります。執行役は、任意で設置される執行役員とは異なり、その設置が義務付けられています。

指名委員会では、株主総会に提出する取締役の選解任に関する議案の内容を決定します。 報酬委員会では、取締役及び執行役の個人別の報酬等の内容を決定します。このように指名委員会等設置会社では、社外の人が中心になって取締役の選任や解任、報酬を決めることとなるので、社内取締役(及び取締役を兼務する執行役)にとっては大きなプレッシャーになることでしょう。

監査委員会は監査役会設置会社の監査役会に代わって設けられるものですが、常勤の監査委員の選任は義務づけられていません。 このように、指名委員会等設置会社は取締役会の監督機能に主眼をおいたモニタリングモデルを志向したものとされます。

4.監査等委員会設置会社とは

監査等委員会設置会社とは、指名・報酬・監査の各委員会を設ける指名委員会等設置会社のうち、監査委員会だけを設けるものです。

前述したとおり、指名委員会等設置会社は取締役会に強力な監督機能を持たせるには適した制度ですが、社外役員に指名や報酬権を握られてしまうので、社内の取締役にとっては大きなプレッシャーになります。また機関設計が大規模(3委員会と執行役の設置)になるため、企業規模に比べてバランスが悪いケースも出てきがちでした。

そこで、委員会型の取締役会の使い勝手を良くするために、監査等委員会設置会社が新設されました。 監査等委員会設置会社の場合には、指名・報酬を社外取締役に委ねず、就任する社外役員数も最低限で済みます。

すなわち、監査役会設置会社では監査役会に半数以上の社外監査役を置くため1名以上の社外取締役とあわせて最低3名の社外役員が必要となるのに対し、監査等委員会設置会社では、監査等委員会の過半数である最低2名の社外役員(社外取締役)で済みます。

なお、改正会社法の規定では、社外取締役を置かないと、置かないことが相当であることの理由の開示が求められることから、実質上社外取締役の設置が必要となります。このほかに、上場会社に適用されるコーポレートガバナンス・コードでは、東証1部と2部の会社には社外取締役が2名以上必要とされています。

ちなみに監査等委員会には常勤者が不要であり、内部監査部門と一体運用すればコンパクトな仕組みを構築しやすくなります。そういったこともあり、監査役会設置会社から監査等委員会会社へ移行した上場会社が多数あったようです。(作成日:2016年3月31日)

■執筆者:株式会社ビズサプリ パートナー 庄村 裕

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