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J-KISS型新株予約権について

最近では、クライアント先から資金調達の相談を受けることが多くなってきています。
今回はスターアップ企業のシーズ期における資金調達方法として注目を集めているJ-KISS型新株予約権をテーマとします。
最後までお読みいただければ幸いです。

1.シード期の資金調達とJ-KISS型新株予約権

スターアップ企業はこれからの事業展開にあたり多額の資金が必要となり資金調達が必要となってきます。一般的には、創業者が保有する普通株式に比べて優先的な条件が付される優先株式の発行による資金調達が行われています。
しかし、優先株式の発行は、発行条件の交渉、契約書の締結や企業価値の評価などに時間がかかってしまいます。その欠点を克服する資金調達方法として、J-KISS型新株予約権が注目を集めています。

J-KISS とは、アメリカのシリコンバレーで普及している「KISS」投資契約書の日本版です。
KISSはKeep It Simply Securityの略で、「簡潔かつ安全に資金調達する」ということです。J-KISSの投資契約書のひな形や必要書類などは、無償公開されているので、誰でもダウンロード可能です。
J-KISS型新株予約権はJ-KISSを使って投資家から有償新株予約権として資金調達し、一定期間が経過した後に次回の資金調達が実行されることを条件として株式に転換するスキームです。

2.J-KISS型新株予約権の発行による資金調達のメリット

J-KISS型新株予約権の発行による資金調達のメリットの1つは、厳格な企業価値や投資条件の決定の先延ばしが可能ということです。
J-KISSは優先株式などの第三割当増資と異なり、資金調達時には、厳格な企業価値算定をせず、株式数が確定していません。J-KISS型新株予約権の場合、その後のラウンドでの厳格な企業価値評価に基づき株式数が確定し、株式に転換されます。

次のメリットは、資金調達のスピードが速いことです。前記した通り厳格な企業価値の算定や資金調達の細かい条件は次回の資金調達時に行われるため、投資実行時には時間がかかりません。
また、弁護士や税理士などの専門家によるレビュー済みの投資契約書のひな形が無償提供されているのでリーガルチェック時間の短縮や交渉の簡略化による時間削減ができます。

また、発行コストが低いのもメリットです。資金調達時の厳格な企業価値評価コストや投資条件交渉時間の短縮、投資契約書のリーガルチェックコストの軽減等による発行コストが低く抑えられます。

3.J-KISS型新株予約権の発行による資金調達のデメリット

メリットだけではなく、デメリットについても言及します。
J-KISS型新株予約権の発行による資金調達のメリットとして、発行コストが低いことを挙げましたが、メリットを享受できず、必ずしも低コストにならないことがあります。
日本での普及がまだ充分に浸透していないため対応できる弁護士、公認会計士や資金調達の専門家が限定されることにより報酬相場が高めになってしまいます。
また、他の協調する投資家やシリーズA以降の投資家等と個別に調整する必要があるため、調整や対応コストがかかってしまいます。

2つ目のデメリットは、株式転換価格のバリュエーションキャップ(企業価値の上限)を低く定めてしまうと、実際の企業価値よりも低い価格で株式転換されてしまう可能性があることです。実際の企業価値通りに株式発行した場合に比べると機会損失が発生してしまうことになります。

以上、スタートアップ企業などで注目を集めているJ-KISS型新株予約権の発行による資金調達ですが、メリットとデメリットが存在しますので、十分検討の上、J-KISS型新株予約権の発行による資金調達を是非ご活用ください。(作成日:2,023年4月12日)

■執筆者:株式会社ビズサプリ パートナー 庄村 裕

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