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事業戦略とマーケティング戦略

この記事では、事業戦略から落とし込み、具体的にマーケティング施策をどのように考えるのかフレームワークをメインで紹介していきます。


事業戦略とは

企業戦略
企業理念、ビジョン︓ 企業が普遍的な価値観として対外的に掲げるもの。 企業が⽬ざす⻑期的な将来像。 (どういった具体的な価値を創出するのかを⽰す)

事業部戦略
全社戦略︓ 全社の⽬標とそれを達成する⽅策(事業領域、 事業ポートフォリオ、強み、リソースの配分)

機能別戦略
個々の事業部の戦略。特定の製品・サービス分野 をある競合環境下で事業展開する⽅針。

マーケティング戦略
事業戦略の実現のために、環境やニーズの変化に 適合した事業活動をコーディネートする⾏為。

事業部戦略を実現するためのマーケティング戦略という位置づけです。

MarketingとSellingの違い

マーケティングとは・・・ 特定市場(顧客)のニーズを理解して、「売れる仕組み」をつくること。 (製品・サービスそれ⾃体を含む


マーケティング戦略策定プロセスとは

【事業⽬標及び 事業戦略】
環境分析・⾃社分析

事業機会の発⾒
・SWOT分析
・PEST分析

【マーケティング 戦略】
提供価値の決定
・STP(市場のセグメント化 、ターゲット市場の選定 、ポジショニングの決定)

マーケティングミックス
・4P
・4C


事業機会を⾒つける『SWOT分析』

環境変化や⾃社の状況から、アクションへの⽰唆を得るための⽅法論。 ・ まず「SWOT」で事実と認識を整理してみる ・ 各項⽬を⾒て、事業への⽰唆がないかを考える(クロスSWOT)



機会や脅威は『PEST分析』であぶり出す
製薬業界の例
【政治】
医療費抑制策の進展、包括化、分業化 年⾦制度、後期⾼齢者医療制度 開発プロセス、審査基準の標準化 後発医薬品の拡⼤、医師との⾯談機会の抑制

【経済】
市場・競争のグローバル化(他業界にも共通した変化) 企業間の合従連衡、M&Aなどの⼀般化 研究開発⽣産性の低下(投資⼤型化、ピカ新減少、バイオ拡⼤) ⼤量MR投⼊によるパワーマーケティングの限界

【社会】
急速な少⼦⾼齢化、疾病構造の変化 医師のEBM意識、5分間診療、薬局の統合 ⼥性医師の増加、看護師不⾜、医療ツーリズム 消費者のインフォームドコンセント、QOL意識、セルフメディケーション

【技術】
バイオ、ゲノム、インフォマティックス、遺伝⼦診断 創薬・開発・販売の多様化(ベンチャー/⼤学、アウトソーシングなど) 電⼦カルテ、 WEBの普及と浸透(モバイル、SNS、動画配信など) スマートフォン、タブレットの普及び浸透


マーケティングミックスと環境変化

外部環境及び内部環境の変化をキャッチし、⾃社にとってのターゲット市場 と、マーケティングミックスを再構築しつづけることがマーケッターの役割


4P

Product︓製品戦略 意思決定のポイント
1. 何を売るのかを明確にする
• 具体的な製品と、それがもたらすベネフィット
• サービス(時間、空間、移動 など) • 情報(最新の情報、知識、データベースなど) • 精神的効⽤(爽快感、優越感など)
2. 製品の仕様、⾊、⼤きさ、デザイン、商品名、パッケージを決める。
• 製品差別化 • ブランド・エクイティの創出
3. 製品ラインを考える。
• 多様なニーズへの対応(カスタマイゼーション)
• 顧客の囲い込み効果
• 魅⼒度を⾼める VS. トータルな収益性 (例︓デパートの品揃え、航空会社の路線ネットワーク)
4. 付加機能を決める (アフターサービス、アップグレード、品質保証、返品など)
• 安⼼感、顧客のロイヤルティ VS. 販管費アップ、リスク

プロダクトライフサイクル

プロダクトライフサイクル(製品ライフサイクル/PLC)とは、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4つのステージからなるS字型のカーブの製品・市場の成長パターンです。成長ステージによって、市場の成長性や競合の多寡、顧客の製品への理解度などが異なります。PLCは、成長ステージにあったマーケティング施策がとれているか確認したり、競争環境や顧客ニーズの変化などを予測し、数年後にとるべきアクションを想定するために用います。導入期から衰退期までの典型的な特徴は以下のようになります。

さまざまなマーケティング施策を駆使して成熟期を⻑く維持することを「プロダ クト・エクステンション」という。その⼿法としては⼤きく以下の3つがある。 1. 市場/ポジショニングを修正 例)ポケベル ︓ビジネスマンの仕事の道具から若者の連絡ツールにシフト シーブリーズ ︓海に⾏く20-30代の男性からティーンの⽇常使⽤へ 2. 製品を修正 例)PHS ︓P-in、Air Edgeなどデータ通信専⽤サービスの投⼊ ハイボール︓「最初の⼀杯」の座を狙ってウイスキーを復権 3. その他のマーケティング・ミックスの修正 例)スマートフォンゲーム︓ ⽉額課⾦からフリーミアムモデルへの転換。


ブランド

ブランドとは、競合相⼿やその製品・サービスとの違いを明確にするために⽤いられる 名前、⾔葉、デザイン、シンボル、またはそれらを組み合わせたもの ブランドの役割 3つの機能 1. 「識別」機能・・・・・・・・・・購買に関する情報処理の時間やコストを節約する 2. 「品質保証」機能・・・・・・・・購買リスクの軽減、回避をする 3. 「意味づけ」機能・・・・・・・・満⾜感を⾼めたり、⾃⼰実現の⼿段となる

ブランドの役割
1. 商標権を設定することで法的保護が受けられ、競合企業と差別化できる
2. ブランドに対する消費者のロイヤルティを築くことで、安定的な売上を確保できる
3. プレミアム価格の設定が可能となり、プロモーションへの依存度が⼩さくなることで、 ⾼マージンを実現できる
4. ブランドの拡張により成⻑機会を増すことができる
5. 流通チャンネルが販売リスクを低減させるために積極的に取り扱ってくれる
6. 新規参⼊者に対する障壁となり、競争優位の構築に貢献する


Price︓価格戦略

意思決定のポイント
 1.いくらで売るのかの⽬標を設定する
– コストのカバーを考える – 競合、代替財の存在を意識する
– 需要構造を理解する
– 事業の達成⽬標による違い︓ 利益の最⼤化、売上の最⼤化、最⾼品質

2.価格体系を決める
– 製品ライン別(⾼機能機種、バンドリング など) – 顧客別価格設定(パソコンソフトのアカデミックプライス など)
– 数量別(ボリュームディスカウント など)
– チャネル別価格設定(インターネット販売価格の設定 など)
– 時期別(休前⽇ホテル料⾦、新製品の価格 など)
– プロモーショナル価格設定(ロス・リーダー など)

3.値上げ・値下げ
– 外部環境の変化対応(ライバルの価格変更への対抗、需要変化への対応) – ⾃社主導の値下げ/値上

損益分岐点

損益分岐点(BEP : Break Even Point)とは、費用を収益でカバーして損益が「0」になる利益状態で、「損」と「益」の分岐点を指します。

損益分岐点を超える売上高、あるいは売上数量であれば利益が出る状態であり、損益分岐点未満の売上高、あるいは売上数量であれば損失の状態です。

損益分岐点 → 売上高 - 費用 = 0

3つの価格設定⽅法
• 製造コストに基づく価格設定
• 競争に基づく価格設定
• 価値に基づく価格設

製造コストに基づく価格設定
• コストプラス価格設定︓総コストに加え、⼀定%の利益を上乗せ
– 例
• 固定費1,000万円、変動費3万円 予定売上げ数量1,000個
• 総コスト4,000万円
• 10%利益上乗せ︓売上⽬標4,400万円、単価44,000円

• マークアップ価格設定︓仕⼊原価に⼀定%の利益を上乗せ
– 例
• 仕⼊原価 4,000円/個、 10%マークアップ、単価4,400円

• ターゲットリターン価格設定︓総コストに初期投資に対する期待収益を上乗せ
– 例
• コストプラスの例で初期投資2,000万円
• リターン10%/年を期待しているとすると期待利益/年は200万円
• 期待総売上は4,200万円︓単価42,000円


競争に基づく価格設定
• 現⾏レート価格設定
– 競合の価格動向を⾒て決める
– コモディティーではほとんどの企業が同じ価格設定
– 中⼩企業はリーダーに追随
• ⼊札価格
– 予想される競合他社の価格設定をもとに価格を表⽰
– 多数の売り⼿が価格を提⽰し、最も安い価格を提⽰した 売り⼿が落札する。


価値に基づく価格設定

知覚価格設定
– 提供している価値に顧客はいくらまでなら払えるか探す価格プレミアム
• バリュー価格設定
– 提供している価値に⽐べ、「お得」に感じるであろう価格をつける
– EDLP、「ハイ・ロー」プライシング

導⼊〜成⻑時のプライシング意思決定

「浸透価格戦略」
• 条件
– 規模の経済が効く
– ⾼い粗利率
– 価格弾⼒性が⼤きい
– 価格以外の差別化要因が少ない
• 効果
– 新規参⼊を阻⽌
– シェアを急速に拡⼤
• リスク – 後で値上げはやりにくい
– 安物イメージのリスク

「スキミング価格戦略」
• 条件
– 規模の経済が効かない
– 差別化が可能
– ⾼価格でも⼗分な需要が存在
– ⾼価格が⾼品質を想起させる
• 効果
– 早期に投資回収
– ⾼い利益率を維持
• リスク
– 新規参⼊の誘引
– 優位性の継続性の⾒誤り

浸透価格戦略の類型︓ 「フリーミアム戦略」 Webサービスなどを中⼼に無料で利⽤を促進、利⽤経験をしてもらって から利⽤度に応じて課⾦するなどの⼿法も広がっている

価格体系を決める

価格カスタマイゼーション
• 顧客、場所、製品、時期、時間帯などに応じて異なる価格設定
• 知覚価値に応じてセグメントにわけ、フェンスを設ける
• 映画館の例
ー 顧客別︓⼦供割引
ー 場所別︓指定席
ー 時期・時間︓レイトショー
ー 製品組み合わせ︓2本⽴て

プロダクト・バンドリング  
• 2つ以上の製品またはサービスを、個々の価格の合計より安いセッ ト価格で売ること
ー マイクロソフトオフィス、シーズンチケット

販促価格
• 流通向け
– キャンペーン向け商品/セール商品
– リベート、キックバック • 消費者向け
– ⼼理的割引 (⾼い通常価格)
– ⻑期割引、家族割引
– 保証/融資

Promotion︓プロモーション戦略

意思決定のポイント
1.プロモーションの⽬標を設定する
• ⽬的は何か
-構造化する
• ⽬的の達成をどう測定するか
• ⽬標達成の資源/期限
2.コミュニケーションミックスを構築する
• 販売促進 (試供品、クーポン、値引、プレミアム、懸賞、展⽰会、 DM、 ノベルティーや販売店報奨⾦など)
• 広告 (テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、看板、交通広告、インターネット)
• ⼈的販売 (セールスマンによる訪問、店員の助⾔、接待など)
• パブリシティ(記事、イベントなど)
• ⼝コミ
3.プッシュ戦略かプル戦略か

目的を明確にすることが重要。
※「いきなり売る。」ではないため


プロモーション⽬標設定
プロモーションを打つ際に、どのような反応を求めるのかを整理。

上記を踏まえ、反応ヒエラルキーモデルは以下のようにパターン化される。

販売促進のバリエーション

【消費者向け】
・バリュー訴求型・・・試供品 プレミアム(おまけ、懸賞、応募もれなく) ノベルティー クーポン 増量パック セット価格
・コミュニケーション型・・・チラシ DM POP 陳列(エンド、島、⼤量)

【流通チャネル向け】
・インセンティブ・・・報奨⾦ キックバック 特売(セール)品提供
・販売⽀援・・・販売⽀援員の派遣 、販売員研修会 、ディスプレイ提案、 販促ツールの提供 、トレードショー協賛


Place︓流通(チャネル)戦略

意思決定のポイント
1.外部の販売チャネル(中間業者)を活⽤するかどうか
2.販売チャネルを設計する
• 販売チャネルの⻑さ-卸売業者経由、⼩売業者と直︖
• 販売チャネルの幅/密度
- 開放的流通
- 選択的流通 -
排他的流通
• 展開エリア
• チャネルメンバー選定
• チャネルメンバーとの関係
-在庫、配送、サービスの役割分担をどうするか︖
3.チャネルへの動機づけ
• マージン/ボリュームディスカウント/コンテスト/販売⽀援

バリューチェーン

バリューチェーンとは製品の製造や販売、それを支える開発や労務管理など、すべての活動を価値の連鎖として捉える考え方のことで、競合と比較して強み、弱みを分析して事業戦略の改善策を探るフレームワーク。

流通チャネルの5要素


地域 ・・・都市部/郊外、東⽇本/⻄⽇本、東京都、◯◯沿線など
密度・・・ コンビニ全国5万店舗、郵便局2万4千箇所 など
種類・・・ コンビニ、スーパー、専⾨店、デパート、通販、訪販、⾃販 機、ネット販売 等
⻑さ・・・ 直販(0)、卸/⼩売(2)、⼀次卸/⼆次卸/⼩売(3) など
幅・・・ 排他的、選択的、開放的

排他的流通政策
• ⼀つの業者にある地域の販売権を独占的に与える⽅法。 顧客に対する 事前・事後のフォローが重要なもの、⾼いブランドイメージを保持し て価格競争を避けたい場合に取られる。

選択的流通政策
• 取引先を⼀定基準で絞り込む⽅法。売上効率の良い業者を選んで集中 的にサポートする場合などが典型。イメージを保ったまま流通コスト を押さえることが⽬的。

開放的流通政策
• 取引先を限定せず、顧客がどこでも買える状況をつくる⽅法。市場を 広くカバーすることが重要なものの場合に多いが、販売先同⼠の価格 競争を招くことも多い。

プッシュ戦略/プル戦略

広告にはプッシュ型とプル型に分けられる。
プッシュ型→• ⼈的販売 • 販売促進/販売⽀援 • ⾼い商品知識/実績重視 • ⾼いマージン設定
プル型→• 広告/パブリシティー • 消費者への訴求︓品質、ブランド、価格 • 低いマージン設定、⼤量販売による利益




最後までご覧いただきありがとうございました!!





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