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ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用 単行本 – 2015/7/10

「もう終身雇用を守るのは難しい」

日本で最も影響力のある企業のトップがこう発言したのは2019年のことでした。

「え? そうなの?」というよりも、「うわっ、とうとう言っちゃったか」という反応が多かったのではないでしょうか? 長くとり続けていたポーズだったけど、その裏側はとっくの昔に変わってしまっていて、もはや言っていることとやっていることの矛盾を隠し切れなくなってきたというのが実情なのではないかと思われます。

本書は、サブタイトルにある通り、新しい雇用関係を提案するもので、これまでの会社と社員との関係性を変えて考えましょうという話です。私がこの本から読み取ったコンセプトを思い切って超訳すれば、以下のようなセリフになります。

企業:「賃金を支払うのでこの仕事やってください」
個人:「わかりました、請け負います」

いわば依頼者から請負者へという一方的で、かつ向き合った関係性から…

企業:「世に××という価値をもたらしたいので一緒にやってくれませんか?」
個人:「それいいですね、自分にとってもいい機会なのでぜひやらせてください」

提案者とそれに賛同して加わる仲間という、同じ方向を向きつつ、双方の利害を尊重し合う関係に変わるイメージです。

すべての仕事がこんなキレイなセリフの中の関係性に収まるとは思っていませんが、傾向としてこの種の職場が拡大していかざるを得ないのではないかと想像しています。より少ない投資でより大きな成果を生み出すことが企業のミッションだとしたら、世の中から求められる価値の性質が変わるに従い、組織の作り方、そしてその中に属する個人のあり方も変化を求められていくことは必然です。特定の誰かが変えようと思ってそうしているというより、時代が求める形にだんだん変わっていくのは自然なことなのだろうと思います。

新しい雇用形態は、現在の会社内でもよく見かける、プロジェクトの考え方に近いと感じました。何をいつまでに成し遂げるか、期限と成果物が想定されていて、その中の分担を決めて仕事を進めていく集団です。必要に応じて集まり、役目を終えたら解散というとてもシンプルな目的志向の集まりで、人によっては複数のプロジェクトを同時に兼任しているみたいな状態。これを社内だけではなく、社会全体に広げたら、ここで言うAllianceの考え方に近づくのではないかと。

そういえば、著者はリンクトイン(ビジネスパーソン向けSNS)の創業者です。なるほど、雇用関係に関する著者の思想が反映されたウェブサービスだったのねと、あらためて頷くことにもなりました。そしてさらに一言加えるなら、こんな大事な話をほんの200ページあまりで読めるという意味で、たいへん優れた一冊だと思いました。

(おわり)


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