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その幸運は偶然ではないんです! 単行本 – 2005/11/18

著者はスタンフォード大学で活躍された教育心理学者のJ.d.クランボルツ博士。成功したと評価されているビジネスパーソンを対象に、彼らにはどんな特徴があったのかを詳細に調べた研究が有名で、そこから「個人のキャリアの8割は、偶然の出来事によって決定される」という理論を導きました。

「偶然? じゃあ将来の目標を立てて云々とか意味ないじゃん!」となりそうですが、そこで話が終わりではないところがミソ。上記は「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」として発表されたのですが、ご覧の通り、“偶然”なのに、それが“計画的”ということで、この矛盾を一言で表現するのは難しいため、理解を助けるソリューションのひとつとして、今回紹介している本を制作したのではないかと推察しています。

本書は、学者が書いた本なのですが、お堅い学術書ではないですし、単に読むのに優しく書き直したビジネス書ともちょっと違います。理論についての説明自体は極めて簡単なものにとどめ、転機を生かして人生を動かした45名のインタビューが掲載内容の中心です。彼ら・彼女たちの語りを通じて、上述の理論の実態をつかんでもらおうという試みになっているというわけです。

これらを読んでいくと、要するに「目標は描くけど固執しない」ということかなと思いました。「チャンスを待つのではなく、自ら小さな行動をしながら、興味・関心の方向に自分自身を常に開いておくこと」が、計画的偶発性を引き寄せる要素なのだそうです。本書には、それらをまさに体現している人物たちのストーリーが描かれており、読者にとって、自分ならどうするかを考え始めるための問いが詰まっているような気がしました。

なるほど、先行き不透明な世の中で、「固執しない」というのはキャリアに関わらず大事なんだろうなと。「目標を立てなさい!」とか「ゴール必達!」と言われ続けてきた世代の私などは、目標設定の価値を、達成するか否かのゼロサム評価に置きがちです。しかし、大事なのは小さくてもまず行動を起こすこと。したがって、目標設定の価値を、動き出しの方向感を示すコンパス機能に置くことを、もっと認めてもよいのではないでしょうか。なにしろ、人は新しい行動に起こすことにとても億劫ですから、動かないくらいなら「とりあえずアッチのほうへ」は効果的だと思いました。

(おわり)


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