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売上平均成長率77.0%。拡大中の米国中古車市場における新たなオンライン売買プラットフォームの先駆者Vroom(VRM)は買いか、売りか!?最近の米国IPOを追ってみた。

6月9日に上場したVroom (VRM)は公開価格の22ドルから取引が開始。初日終値は48ドルと公開価格から117%の上昇を見せた。同社の時価総額は約54億ドル。

1. 会社概要

ニューヨークに拠点を置くe-コマースの会社で携帯アプリやウェブサイトを通じて中古車の売り手、買い手に新たなプラットフォームを提供している。
CEO:  ポール・J・ヘネシー
本拠地: ニューヨーク、アメリカ                   会社沿革: 2013年自動車業界の重鎮であったケビンウェストフォール、マーシャルチェスローンによりCarAmericaとして創設された。その後2014年よりVroomと名前を変え、2015年には金融専門家、また企業や個人のドナーにより2億300万ドルの資金調達に成功する。 

主な事業としては、携帯アプリやウェブサイトなどのインターネットを通じた中古車売買プラットフォームを提供しているのだが、驚くべきはその手軽さにある。

車を購入する場合

①車両を選び  ➁取引画面に移行 ➡ ➂支払方法を選択 ➡ ④追加オプション等を選択 ➡ ⑤配送料無料で自宅に車が届く

購入から実際に手元に来るまでの一連のプロセスをアプリやウェブサイトを通して簡単に行える。

また、車を売りに出す場合

メーカー、モデル、走行距離などの車両に関する情報を記載  ➁売り手の情報からデータベースを介して車両の価値に影響する要因(市場の需要、再調整コストの見積もり、減価償却など)を計算し査定する ➡ ➂売り手が同社の提示するオファーを承諾する ➡ ④引き取り日時の指定 ➡ ⑤代金を受け取る

さらに同社の特徴として挙げられるのが、

• プロダクトとして扱う前に、その車を自社で細かく査定することにより一定のクオリティを維持、また細かくカスタマイズすることのできる検索機能による消費者の時間節約に貢献する。

• 車の価格はKelley Blue Book、Truecar、CarGurus(車両に関する情報を提供するウェブサイト)から得られた情報に基づいた適切な価格設定で提供するリアルタイムプライシング

• 購入者が七日間、または250マイルまで運転し、そこで何か問題があれば相当の割引制度、また購入後90日間、または6000マイルまで車両すべての機械部品に当てはまる保証が付く。

VroomCareという追加オプションに加入すればさらなる恩恵が受けられる。(10年、または10万マイルまでの定期的な車両点検など)


2. ビジネスモデル

主な収益は中古車やVroomCareなどの付加価値商品の販売からであり、主にeコマースセグメントを通じて消費者に車両を直​​接販売している。

また、Vroomの小売販売基準を満たしていない車両をオークションを通じて販売しており、さらにTDA(Texas Direct Auto)で中古車および付加価値商品の小売販売を通じて収益を生み出している。

2019年12月31日までの1年間で、eコマース、TDA、オークションの各セグメントは、それぞれ総収益の49.3%、32.8%、17.9%を占めていた。また2020年3月31日までの3か月間でeコマース、TDA、およびオークションのセグメントはそれぞれ総収益の62.0%、23.2%、14.8%を占めている。

3. 資金調達額

主な資金提供者には資金管理、投資会社のT. Rowe Priceやビルゲイツ氏が創設したCascade Investment Office。また以前アメリカンプロフットボール(NFL)のクォーターバックであったジョンエルウェイがいる。

2020年に入ってからはすでに約9億ドルの資金を調達しており、総資金調達額は約17億ドル。

4. 財務

                            (Vroom S-1

5. 競合他社

オンラインで中古車の販売をする企業の中でVroomのライバルになるといわれているのはCarvana、CarMax, Cargurus, Truecarだ。

Carvana                             Vroomと同じくe-コマースでの中古車販売を主に手掛けるが、特徴として購入した車両を配達するか、会社の24台の自動車が収納できる“自動車自動販売機”と呼ばれる建物でのピックアップのいずれかでを選択できる。
コロナウイルス騒動に対応して、同社ではタッチレスデリバリー方式を採用し、またピックアップに関しても配慮している。ポストコロナでも株価において回復を見せており、一旦22ドルまで落ちたが、現在111ドルを値を戻してきている。
• 本拠地: アメリカ、アリゾナ州テンペ
• CEO:  アーネストガルシアIII
スタンフォード大学で経営科学、また工学の学士号を取得しており、億万長者のビジネスマンとして知られている。
• 2017年NYSEにて上場
• 総売上: 39億ドル(2019)
• 総資金調達額: 30億ドル
• 時価総額: 77億ドル
Carmax   
Carmaxはアメリカ最大の中古車小売業者であり、フォーチュン500(アメリカのビジネスマガジン、フォーチュンが毎年掲載するアメリカでもっとも市場規模の大きい500の企業のこと)のリストに入っている。
主に中古車マーケティングに重点を置いているが、1997年より同社は新車マーケティングにも取り組みだした。1999年までに、三菱自動車、トヨタ、日産の新車フランチャイズを追加した。Vroomと比較して同社は対ディーラー取引が主なサービスである。
• 本拠地: アメリカ、バージニア州リッチモンド
• CEO: ウィリアム・D・ナッシュ
• 1997年NYSEにて上場。
• 総売上: 約18億ドル (2019)
• 資金調達額: 4.37億ドル
• 時価総額: 146億ドル
Cargurus
CarGurusは新車や中古車のe-コマースウェブサイトを運営しており、ユーザーがローカルで利用可能な車を見つけ出し、価格やディーラーの評判などで売り手を比較できるのが特徴である。
• 本拠地: アメリカ、マサチューセッツ州ケンブリッジ
• CEO :   ラングレー・シュタイナート
• 2017年NASDAQにて上場。
• 総売上: 4億5400万ドル
• 総資金調達額: 180万ドル
• 時価総額: 28億ドル
TrueCar     
新車と中古車の購入者向けの自動車の価格と情報のWebサイト。消費者は、TrueCarを使用して、他の人々が地元の新車や中古車に支払った金額を知ることができ、15,000以上のTrueCar認定ディーラーのネットワークから手ごろな価格で受け取ることができる。
• 本拠地: アメリカ、カリフォルニア州サンタモニカ
• CEO: マイケル・ダロー
• 上場 2014年
• 総売上: 3.53憶ドル
• 総資金調達額: 3.4憶ドル
• 時価総額: 3.1億ドル

6. 市場環境 

アメリカ内での中古車市場は2018年時点で約8,410億ドルの市場規模があると言われており、その規模は新車市場6360億ドルと比べるとその違いは明らかだ。(左から中古車、食品事業、新車、家リフォーム事業、パーソナルケア商品など、アパレル、家具)

                           (Vroom S-1

また同社のeコマース部門は順調に発展の一途を辿っており、2016年から2019年までの売上で77.0%の年平均成長率を見せており、2018年から2019年の1年間ではでは95.3%の伸びが見られる。

            同社のeコマース売上推移


7. 実績/提携パートナー

1600を超える利用可能な車両を取り揃えており、また今までに169,230台の車両を販売してきた。                        またアメリカのビジネスマガジンのForbesでは過去に「2015年の最も急成長しているEコマーススタートアップ」として取り上げられており、同社について金融やビジネスについての記事を取り扱うウェブサイトBusiness Insiderでは「2015年で最もアツいスタートアップ」の一つとして取り上げられている。



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