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デジタル経済を読み解くための8つの重要なトレンド❻

連載ブログ「デジタル経済を読み解くための8つの重要なトレンド」、第6回目はパイプラインvsプラットフォームについて簡単に整理していきたいと思います。

パイプラインvsプラットフォーム

ビジネスモデルは、様々なタイプで大別することができます。例えば、対象とする顧客が個人消費者であればB2Cビジネスモデル、企業や組織であればB2Bビジネスモデルに大別することができます。

価値を生成および提供するための基本的な仕組みによって、パイプラインプラットフォームという2つのビジネスモデルに大別することもできます。

パイプラインは、20世紀における支配的なビジネスモデルであり、価値は上流で生産され、下流で消費されるという直線的な企業活動の大きな仕組みです。バリューチェーンという言葉も、ほぼ同じような意味で使われることがあります。

一方でプラットフォームとは、特定のエコシステム内における様々なプレイヤー(典型的には、価値の生産者価値の消費者)の間の取引や交流(または価値の交換)を円滑化するための場、またはその場を運営するビジネスモデルを意味します。古くは、クレジットカード業界などがプラットフォーム型ビジネスモデルといえます(買い物客と小売店の取引を円滑化している)。

デジタル化時代におけるプラットフォームは、デジタルテクノロジーを活用したオンライン上における取引や交流を円滑化するための場を運営するビジネスモデルを示すことが多いようです。

パイプラインとプラットフォーム

「プラットフォームが21世紀における最強のビジネスモデルである」といわれることがあります。

株式時価評価額の視点で捉えてみましょう。

世界の上場企業トップ10社のうち、8社が何らかのプラットフォームをもっています(赤いグラフの企業)。トップ5社は、誰もが知っているGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)と呼ばれるテクノロジー企業の巨人です(アルファベットは、グーグルを傘下に置く持株会社)。

ところで、よくよく考えてみると、アップル、アマゾン、マイクロソフトの3社はパイプラインとプラットフォームの双方を組み合わせながら上手く運営していることが分かります(アップルとマイクロソフトは製造業、アマゾンは小売業も兼営している)。

私は、これをハイブリッド型ビジネスモデルと呼んでいます。

時価総額トップ10企業

一方、創業10年以内、評価額10億ドル以上、未上場、テクノロジー企業といった4つの条件を兼ね備えた新興企業であるユニコーン企業トップ10社の多くが、何らかのプラットフォームをもっています。

ユニコーン

プラットフォームを運営している企業が非常に高い評価を得ているのは、ネットワーク効果限界費用ゼロという2つの大きな現象から経済学的に説明されることがあります。

ネットワーク効果を簡単に説明すれば、プラットフォーム上に価値の生産者や価値の消費者が集まれば集まるほど、双方にとってのベネフィットが指数関数的に増える現象を意味します(例.ヤフオクやメルカリ、フェイスブックやユーチューブを考えてみましょう)。

一方で、限界費用ゼロとは、1つ追加で価値あるものを生成および提供するためにかかるコストが限りなくゼロに近づく現象を意味します(例.物理的なプロダクトとデジタルコンテンツを比較してみましょう)。

エコシステム

ところで、先ほどエコシステムという、最近私たちがよく耳にするキーワードがでてきました。

エコシステムとは元来、海洋のエコシステムというように、生態学で使われていた概念であり、「協働と競争の双方を通じて、価値の生成と消費を行う、多様なプレイヤーから構成される、動的かつ共進化するコミュニティ」を意味します。

ちょっと難しいので、オリンピックのエコシステムを考えてみましょう。

オリンピックには様々なプレイヤー、例えば、運営事務局、国、種目別のチームやアスリート、サポーター、一般観戦者などが存在します。また、オリンピックを支える様々な組織やボランティア、オリンピック特需で売上を増やそうとする企業もいるでしょう。アスリート達はチーム内で励まし合い、ライバルとしのぎを削ることによって、お互いに成長、つまり共進化していきます。

コンサルティング・ファームであるマッキンゼー社は、2025年までに12の大きなセクターからなるエコシステムが台頭し、その市場規模は世界の総所得のうちの30%を占めるであろうと予測しています。

エコシステム

エコシステムという概念は、従来の産業区分である製造業、小売業、サービス業といったセクター間の境界線をクロスすることになりそうです。また、各々のエコシステム内において、デジタルテクノロジーを活用したプラットフォームを運営する企業が台頭するかもしれません。それは、既存の企業かもしれないし、次世代のGAFAMを虎視眈々と狙うユニコーン企業かもしれません。

例えば、MaaS(移動をサービスとして提供する)のプラットフォームを構築しようとしている企業は、モビリティ(移動)というエコシステム内における様々な生産者と消費者の間の取引や交流を促進することを事業の柱とすることでしょう。

さて、皆さんの企業は、近い将来どのエコシステムに所属することになるのでしょうか?


次回は、デジタル経済を読み解くための7つ目のトレンド、これは今回のプラットフォームに関連するのですが、生産者vs消費者について触れていきたいと思います。


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