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日本のDX台所事情➋

(第2回)日本企業におけるDX推進の課題

本ブログ(日本のDX台所事業)の第1回では、「DXが意味するもの」を整理してきました。今回からは、日本企業におけるDX推進の課題について考えていきたいと思います。

多くの日本企業が抱える2つの課題

昨年あたりから、日本企業におけるDX推進に関する調査レポートを目にする機会が増えてきました。

どのレポートを見ても、DXを推進していく上で最も大きな課題として「人材がいない」というのが突出しています。

DXであろうとなかろうと、人材がいないことを嘆くのではなく、ビジネスを正しく運営していくために必要なスキルや能力を身に付けるための継続的な人材育成は、いつの時代においても企業が怠ってはいけない活動の1つだと思うのは、私だけでしょうか?

さて、もう1つの大きな課題として「予算がない」というのも見受けられます。

「人材がいない」や「予算がない」というのは、DX推進に関する課題というよりは、DXに本格的に取り組まない口実のようにも聞こえます。

これが、かつてジャパンアズナンバーワンと呼ばれた日本企業の現状だとすれば、少し悲しい気持ちになります。

もちろん、DX推進は法律で決められたものではないので、全ての企業が一様に取り組む必要はありませんが..

それはさておき、今回はDX予算について考えてみたいと思います(DX人材に関しては次回以降のブログで取り上げることにします。

予算とは何か?

最初に、予算とは何かについて明確にしていきましょう。

インターネットで検索すると、予算とは「何かを始める前に、必要な金額を見積もること」と出てきます。

ここで1つの単純な疑問が浮かびます。

どれだけの企業がDXを推進および実現するために必要な金額を見積もっているのか、あるいはそもそも事前に見積ることができるのかという疑問です。

例えば、ある企業が「X業務をIT化したいが、見積もってほしい」とITベンダーに依頼し、「Y億円かかります」という回答が返ってきたとしましょう。経営陣は、「そんな予算を確保することは無理だ」と思うかもしれません。

これであれば、「予算がない」ことの意味が分かります。

でも、これがDXに対する正しい進め方(予算確保を含む)でしょうか?

前回のブログにおいて、日本のDXは業務(業務プロセス)のIT化の延長戦上(もしくは同じものとして)にDXを置く傾向があるとお話ししました。

現代においては、もっと違うアプローチが必要となるのではないでしょうか?

DX推進に膨大な予算が必要か?

この質問に即答することはもちろん困難ですが、企業変革(デジタルであろうとなかろうと)を推進していくための有効な考え方の1つとして、「小さな成功を積み重ねること」があります。

少し視点を変えて、約半世紀前(1970年代)から始まった汎用コンピューター導入によるIT経済時代と現在のデジタル経済時代を比較してみましょう。

当時、汎用コンピューターを導入するためには、少なくとも数十億のコストがかかりました。もちろん、中小企業にはそのような予算を確保することができない時代でした。

現代はどうでしょうか?

私のブログではしばしば取り上げていますが、企業規模や業種にかかわらず、DXを実現するための汎用的なテクノロジーとしてSMACITがあります。

SMACITは、ソーシャル、モバイル、アナリティクスと人工知能、クラウド、IoT(モノのインターネット)という5つのデジタルテクノロジーの頭文字から構成されるもので、少なくとも汎用コンピューター時代と比べれば、はるかに安価で活用することができます。

図1

その反面、汎用コンピューター時代において、投資対効果は比較的見積もることは容易でした(例.処理時間の短縮や要員の削減)。

一方で、DXに関する投資はその効果を推定することがはるかに難しくなる場合があります(例.特定業務領域における人工知能テクノロジーの採用)。

これらの特性を考慮すると、多大な初期投資と後戻りが困難な計画という従来のアプローチから、少額の初期投資とテスト/検証による小さな成功の積み重ねという新しいアプローチを採用することが重要となってきます。

特に、VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)と呼ばれるデジタル経済の時代においてはなおさらです。

現代において、米国や中国を中心に、数多くのユニコーン企業(創業10年以内、評価額10億ドル以上、未上場、テクノロジー企業といった4つの条件を兼ね備えたスタートアップ組織)が台頭してきています。

図2

当然のことながら、ユニコーン企業には潤沢な予算が最初からあるわけではありません。

これらの企業は典型的に、SMACITのような安価なテクノロジーを上手く組み合わせながら、新しいビジネスモデルの様々な側面をテスト/検証しながら成長していくわけです。

見方を変えれば、このようなアプローチを採用することによって、中小企業にとってもDXへの取り組みが十分可能となることを意味します。

最後に..

DXというとシステム開発(システム導入)にのみ日本では焦点が当てられますが、多くの企業にとって組織開発や人材開発(能力開発)に対する適切な予算の確保も必要でしょう。

今回はここまで。

次回は、このようなアプローチのサンプルとして、お金と時間をかけることなくDX施策の有効性をテスト/検証するために、私がDXワークショップで使っているエクササイズの1つをご紹介しましょう。


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