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米国企業のDXへの取り組み動向❶

DX戦略とSMACITテクノロジー

8回にわたる連載ブログ「デジタル経済を読み解くための8つの重要なトレンド」に続き、今回からは「米国企業のDXへの取り組み動向」というテーマでブログをスタートしていきたいと思います。

初回は「DX戦略とSMACITテクノロジー」です。

DX戦略の焦点

企業レベルにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、「デジタルテクノロジーを活用したビジネスモデルを通じて組織を変革し、業績を改善すること」を意味します。

ここに、デジタルテクノロジービジネスモデルという2つのキーワードがあります。

ビジネスモデルキャンバスを考案したコンサルタントであるアレックス・オスターワルダー氏によれば、ビジネスモデルとは「組織が価値を生成、提供、獲得する方法の論理的根拠を説明するもの」です。

私は、既存企業がDXを推進していく上で、大きく5つの戦略的な焦点領域があると考えています。それは、

プロダクトの革新(例.XaaS:全てをサービスとして提供)
顧客経験の生成(例.OMO:オンラインチャネルとオフラインチャネルの融合)
オペレーションの変革(例.インダストリアルインターネット)
プラットフォームの構築(例.現在のプロダクトやサービスに対する補完材をプラットフォームで提供)

そして、以上の結果を踏まえた
収益モデルの確立(例.サブスクリプションによる継続課金)です。

図4

ところで、米国「2019年DX市場トレンドレポート」という調査報告において、米国企業がDXを推進していくために焦点(DX)を当てている領域が示されています。

最も多かったのが「顧客経験と顧客との関係管理の拡張」となっており、これは私が言及しているところの「顧客経験の生成」に相当し、業績の改善という視点では収益の拡大を目的とするものです。

これは、ビジネスモデルを構成する要素の中で、主に「チャネル」と「顧客との関係」に対して、デジタルテクノロジーを活用しこうとするものです。

以下、「業界における競争力の維持」、「ビジネスプロセスの合理化」、「ビジネスプロセスの合理化」、「新しいビジネスモデル」、「生産性の拡張」、「コスト節約の改善」、「収益生成の改善」、「プロダクト開発の拡張」、と続いていきます。

図1

一方、日本企業の多くは、従来のIT投資の延長線上として、コスト削減や生産性の拡張を目的としたオペレーション領域に焦点を当てているケースが多いようです。

昨年(2020年)に行われたIT調査会社IDCによれば、DXに関して「顧客体験に役立てる」、「デジタルを活用したビジネスの拡大を目指す」などの点で、日本と世界水準との間で大きな差があったと指摘しています。

オペレーション領域のみに焦点を当てることの問題の1つは、オペレーションコストの削減には下限がありますが、収益の拡大には上限がないということです。

SMACITテクノロジー

DXにおける、もう1つのキーワードがデジタルテクノロジーです。

デジタルテクノロジーとは、「デジタルデータを生成、変換、蓄積、プロセシングするための電子ツール、システム、デバイスなどのリソース」を意味します。

米国MIT(マサチューセッツ工科大学)は、どのような業界や業種にとっても、DXを推進していくために活用することができる汎用的なテクノロジー、SMACITを提起しています。

SMACITとは、ソーシャルモバイルアナリティクス(私はここに人工知能も加えました)、クラウドモノのインターネット(IoT)という5つのテクノロジーの頭文字をとったものです。

図5

また、MITは、多くの米国企業がSMACITを活用することによって期待されるDX上のインパクトについてアンケート調査を公表しています。

図2

SMACITテクノロジーを最も有効に活用している企業として、ネットフリックス社が挙げられるでしょう。

DVDの宅配ビジネスからスタートした同社は、ストリーミング配信サービスへと移行することによって、10年間で売上を約10倍に伸ばしてきました。

図3

DXを推進していく上で、SMACITに代表されるデジタルテクノロジーを有効活用していくために、DX推進チームは以下の4つの能力を養っていく必要があるでしょう。

デジタルテクノロジーがビジネスモデルに与えるインパクトを理解する能力
■ 複数のデジタルテクノロジーを組合せたシナジー効果を生成する能力
■ デジタルテクノロジーを活用してビジネスが上手く機能する仕組みをデザインする能力
■ プロトタイプの制作を通じて迅速な実験を行う能力

次回からは、代表的な米国企業のDXへの取り組みと業績の向上(主に株価)に関する実際の事例をいくつかご紹介していきます。


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