デジタル経済を読み解くための8つの重要なトレンド❸
連載ブログ「デジタル経済を読み解くための8つの重要なトレンド」、第3回目はクラウドvsエッジ(正確には、クラウドコンピューティングvsエッジコンピューティング)について簡単に整理していきたいと思います。
SMACITテクノロジー
クラウドvsエッジに触れる前に、米国MIT(マサチューセッツ工科大学)が提唱しているSMACITというコンセプトをご紹介しましょう。
SMACITとは、ソーシャル、モバイル、アナリティクス(私はここに人工知能も加えました)、クラウド、モノのインターネット(IoT)という5つのテクノロジーの頭文字をとったものです。
SMACITは、インターネットと同じく、どのような業界や業種にとっても、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していく上で欠かすことのできない汎用的なテクノロジーです。
ビジネスモデル(ビジネスが上手く機能する仕組み)に対して、SMACITは以下の意味合いをもちます。
◆ソーシャル - ソーシャルメディアネットワーク(SNS)またはWebサイトにおいて、特定のトピックに関心をもつ、あるいは特定の専門知識をもつ個人や組織のグループやコミュニティ。
◆モバイル - スマートフォン、タブレット、ウェアラブルなど、いつでもどこでもデータを容易に収集することができる消費者の多くが常時携帯しているチャネル。
◆アナリティクス/人工知能 - 様々な内部/外部ソースから収集された膨大なデータを顧客や企業の意思決定に役立つ知識や洞察(知的リソース)に変換する手段。
◆モノのインターネット(IoT) - 従来は口をきくことができなかったモノが、ヒト、ビジネス、他のモノと知的に交流することができるようになること。
クラウドは、上記4つのテクノロジーから収集される膨大なデータを交換/蓄積/プロセシングすると同時に、デジタル化されたプロダクトやサービスを提供/消費するための(典型的には)組織外部にあるコンピューティング環境を意味します。
エッジコンピューティングの台頭
ところで、テクノロジー調査会社のIDCによれば、様々なセンサーを搭載し、インターネットに接続されるプロダクトやデバイスは、2025年には416億個、そこから生成されるデジタルデータは年間79.4ゼタバイト(10の21乗!)にも上ると予測しています。また、人工知能や機械学習を活用したアプリケーションの増加が、データの膨張に拍車をかけています。
ネットワークやコンピューターの処理速度が速くなったとはいえ、それ以上に膨張するデータをクラウド上で処理させることは、応答時間、運用コスト、セキュリティなどの面で課題がでてくるようになりました。
そこで生まれたので、エッジコンピューティングというコンセプトです。
エッジコンピューティングとは、クラウド側の負荷を減らすために、利用者に近い場所でデータ処理を行うためのテクノロジーを総称したものです(例えば、デバイス内部またはデバイス近辺のプロセッサでデータ処理を行う)。
歴史は繰り返す(集中処理vs分散処理)
さらに、クラウドコンピューティングとエッジコンピューティングの間を埋めるかのように、近年フォグコンピューティングというコンセプトが生まれました。
ォグコンピューティングは、テクノロジー企業であるシスコシステムズ社によって提唱されたコンセプトであり、メタファーとしてのクラウドが雲を意味するのに対し、フォグは霧を意味します。つまり、フォグは、クラウドとエッジの間に位置することになります。
例えば、オフィスにあるルーターの中にフォグコンピューティングが同居するようになるかもしれません。また、アマゾンのエコーのようなプロダクトが、ネットワークにつながった家電から収集されるデータを処理するようになるかもしれません。さらに、プロセッサを内容した信号機が、自動走行車と連携することもあり得るでしょう。
コンピューターの歴史がホスト(汎用機)による集中処理から始まり、2000年の終わりごろにはホスト-サーバー-クライアントによる分散処理に移行していきました。2000年以降になると、クラウドによる集中処理が始まり、今後はクラウド-フォグ-エッジによる分散処理に再度移行するのではないかという見解も広まってきているようです。
「歴史は繰り返す」とは、よく言ったものです。
次回は、デジタル経済を読み解くための4つ目のトレンド、デジタルvsフィジカルについて触れていきたいと思います。
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