DX戦略とビジネスモデル➋
(第2回)プロダクトの革新
DX戦略とビジネスモデルという連載ブログの1回目において、デジタルテクノロジーを活用したプロダクトの革新、オペレーションの変革、顧客経験の生成、プラットフォームの構築、その結果としての収益モデルの確立というどのような企業においても選択することが可能な5つの焦点についてご紹介いたしました。
今回は、デジタルテクノロジーを活用したプロダクト革新の大きなテーマとして、何社かの先進的企業が取り組んでいるXaaS(ザース)について簡潔に整理していきましょう。
XaaS(Xをサービスとして提供する)
所有から利用へという言葉を耳にするようになって久しくなりました。
このような消費者行動の大きな変化だけでなく、モノ(物理的なプロダクト)だけでは差別化が困難になってきたというメーカーの課題から注目を浴びるようになってきたのが、XaaSというコンセプト、またはビジネスモデルです。
これは、SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)というビジネスモデルの拡張コンセプトであり、IoTやビッグデータといったデジタルテクノロジーの普及がXaaSを後押しする格好となっています。
日本の伝統的なメーカーの中には、脱メーカー宣言をしている企業がいます。
もちろん、これは物理的なプロダクトを製造することを止めるわけではなく、プロダクトのスポットまたは単体販売ではなく、関連する付加価値サービスを融合させることによって、継続的な収益の獲得を狙いとするものでしょう。
私は、XaaSを「特定の対象に関係するものをサービスとして提供すること。または、特定の目的や行動に必要なものをサービスとして提供すること」と捉えています。
もちろん、旅行パックのように従来においてもXaaS的なサービスは存在していました。
従来の旅行パックが、規格されたパックを定められた日程で提供されているのに対し、XaaSはよりリアルタイム、オンデマンド、パーソナライズ化されたサービスを提供できるようにします。
例えば、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)は、移動に必要、または便利なモノ、サービス、情報(車両、パーキング、位置情報、渋滞情報、音楽など)を、オンデマンドかつパーソナライズ化された形でサービスとして提供しようとするものです。
現在においては、Xには様々なものを当てはめたコンセプトが提唱されるようになってきました。
例えば、地下鉄、駐車場、道路や公園といった公共インフラを運営する組織に対して、センサーネットワークにつながったLED電球を通じて、電球の交換、自動オンオフ、光度の調整、電球の予防保守などを行うLaaS(ライティング・アズ・ア・サービス)。
エネルギー供給に必要な設備を販売するのではなく、保守サービスなどを含め、電気やガスといったエネルギーをサブスクリプション形式で提供しようとするEaaS(エネルギー・アズ・ア・サービス)。
オフライン店舗またはオンライン店舗における小売りビジネスに必要なもの(カートシステム、決済システム、顧客および購買データの分析や管理など)を提供するRaaS(リテール・アズ・ア・サービス)。
余談ですが、サービス残業を揶揄したZaaSという言葉まで生まれるようになってきました。
xOS(xに対するオペレーションシステム)
一方で、XaaSのオペレーションを支えるテクノロジーとしての基本的な運用システムをxOSと私は呼んでいます。
xOSは、XaaSを提供するために必要なデータを蓄積、変換、分析、制御し、それらのデータを連携させるための仕組みです。
xOSのxにも、様々な言葉が適用されています。
家の中にある家電をつなげる住宅OS、自動車の運転を制御したり、娯楽を楽しむためのデバイスや装置を制御したりする車載OS、工場内の機械設備をつなげることによって、ムダな動きや異常をリアルタイムで検知し、工場全体の効率化と信頼性の向上を実現することを目的とする工場OSなどです。
都市OSとは、内閣府が推進しているスマートシティ実現の中で、都市に存在する膨大なデータを蓄積、分析するとともに、政府内だけでなく、様々な自治体や企業、研究機関などと連携することを目的とするものです。
もちろん、様々なモノ、サービス、データを単純につなげればよいというわけではなく、それらをつなげることによって顧客にとって価値あるサービスを提供していかなければなりません。
ここで役に立つのが、顧客の成し遂げようとしていることに焦点を当てるジョブ理論(またはJobs To Be Done)というアプローチです。
顧客のジョブ(顧客が成し遂げようとしていること)
現在、欧米で大きなブームを呼んでいるのが、キッチンOSというコンセプトです。
食事の支度をするためには、食材の購買、レシピの調査、実際の調理という3つの大きなアクティビティが存在します。
当然のことながら、各々のアクティビティに役立つプロダクトやサービスは数多く存在します。
例えば、食材の購買に対しては食材スーパー、レシピの調査に対してはクックパッド、実際の調理に対してはキッチン家電などです。
これらの個別に存在するプロダクトやサービス同士を、シームレスに結びつけることに狙いを付けたのがキッチンOSというコンセプトです。
ジョブ理論を活用することによって、食材の購買、レシピの調査、実際の調理を含む、食事の支度に必要なステップを明確にし、各々のステップにおける様々なニーズや課題を統一のフォーマットで収集することによって、顧客にとって価値のあるソリューション(例.クッキング・アズ・ア・サービス)を提供することに役立つでしょう。
今回はここまで。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回は、DX戦略の2つの焦点、デジタルテクノロジーを活用した顧客経験の生成について、その要点を簡単にご紹介していきます。
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