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「センスはいいが突き抜けられない」人たちのための論壇③

前回までのおさらい:

  • 何事も80点まではすぐ行けるがその先で詰まる事の多い人は、言語化力がボトルネックになっているのではないか

  • 仮にそうだとした場合、言語化力を高めることで残りの20点を獲得でき、「器用貧乏」の限界を越えられるのではないか

  • この場合の「言語化力」とは、「物事の細部を正確に言葉で表す能力」である

  • 「細部を正確に言葉で表す」能力を引き上げるためには、そもそも細部に関心のピントを合わせられるようになることが重要

このシリーズの締めくくりとして、今回は「細部へのピントを妨げる障壁と、その乗り越え方は何か」を考えたい。

細部にピントを向けることを妨げる障壁は、「不必要」である

要領のいい人は、物事の重要な部分だけをしっかり押さえ、その他の瑣末な部分については手を抜くことで早いスピードで80点の地点まで到達する。
そしてこの特質は生活に関わる重大な局面(受験、仕事等)では評価され更に強化されることで、より堅固な特質となり定着する。
そうしているうちに、「細かい部分は拘らない」ことがすっかり板についてしまう。
このようなプロセスを経て器用貧乏タイプの人間は、無意識下で細部を無視する「癖」がついてしまっているのではないだろうか。

「細部を無視」した瞬間に自覚的になり、意識的に「細部に関心を寄せた」瞬間を積み重ねていくことが有効

つまり細部に目を向けられない(向けない)のは能力の不足ではなく、むしろ要点を抑える力があることの裏返しであると考えられる。
ここからとりうる方向性は2通りである。
①「これは強みの裏返しに過ぎないんだ、やっっぱり自分は強みを伸ばす方に取り組もう」と開き直る
②それでもやっぱり改善する
①を選ぶ手もあるが、何かしらの理由があり②を選ばなくてはならないといけない人は、どのようにすべきだろうか。
これは要するに「長年の習慣で付いてしまった悪癖を如何に取り払うか」という問いに言い換えうるものであり、癖を直すことが大きなテーマの一つであるスポーツに倣えるはずである。

そこで、スポーツにおける癖の直し方として言われているらしい「新旧対象法」をご紹介する

ステップ1: 誤った動きに対する身体的・心理的な気づきを高める段階
ステップ2: 正しい動きに対する気づきを高める段階
ステップ3: 新旧2つのスキルを識別する段階
ステップ4: 新しいスキルを実践する段階

(蓑内豊. スポーツにおける動作修正のための4ステップ,2014)

各ステップの詳細は出典先の論文を見ていただきたいが、
要するに、現在持っている癖(細部への意識を飛ばす)と新しく身につけたい習慣(細部を言語化して意識の対象にしている)それぞれに対して自覚的になることが有効ということである。

仕事やスキーで、
「あ、いま面倒くさいと思って市場の魅力度だけで参入余地を完結させようとしてたな」
「そういえば今日の練習でなんとなく上手く滑れない感覚があったけど、ほったらかしにしてたな」
と悪癖を発動させている自分に気付き、
「ここは確かに市場が成長していて魅力的だけど、参入しようとしている競合が他に存在しない事実を見出すか、存在していても自社にしか参入できない理由を見出す必要があるな」
「左足でターンする時に上体ごと倒すのではなく股関節から下の脚だけで圧力を加える必要があるな」
と、正しい行いをしっかり言語化することで、いい癖が身についていくのではないだろうか


今回でこのシリーズは完結となります。
初めての投稿だったので、ご意見、ご感想なんでも頂けるととても嬉しいです。

  • 私と同様「センスがいいと言われるが、いまいち突き抜けられない方」からの共感/反論のコメント、ご感想

  • 「センスがよく、かつ突き抜けた人」からの、ここが原因だよ、こうすると良いよ、などのご意見

  • その他

なんでも大歓迎です。
議論を通じて、社会や個人が少しでも良くなるような思想の断片を生み出したいと考えています。
どうぞよろしくお願いします。

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