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「水曜日のダウンタウン」から感じた美容医療のポジショニング

東京都内で美容外科医をしてます、酒井形成外科の酒井倫明(さかいみちあき)です。

先日、水曜日のダウンタウンというバラエティ番組にて「久しく見ていない女タレントが死ぬほど整形していても指摘しづらい説」という企画を視聴しました。
美容医療に携わっている医師としては実に興味深い内容でしたので、私の見解を述べさせていただきます。

今回は俗した内容を真面目に考察した寄稿です。気軽に閲覧していただけると幸甚です。

番組の内容

番組の内容は「久しぶりにTV出演する女性タレントがあからさまに整形をしていても共演する芸人はそのことを指摘できないだろう」というものでした。よくこのような絶妙な企画を思いつきますよね。TV局の方々には脱帽です。

新山千春さんや安西ひろこさんという美しい女性タレントの方が過剰な美容整形をして芸人のダイアンさん、かまいたちさんが戸惑いながらも、なんとか嘘番組を成立させるという仕上がりになり、それは見事なバラエティに仕上がっていました。

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あまりに不自然に隆起した涙袋と唇です。ここまでやっていて指摘できないのものかとも思ってしまいますが、それこそが美容整形のポジションなのでしょう。

ちなみに唇にいれるヒアルロン酸はかなり高いテクニックが要されます。
加えて適正な硬度をもつヒアルロン酸を選択することも重要です。もし、プルンとした唇になりたくて唇にヒアルロン酸注入を検討されている方がいらっしゃいましたら、その点を医療機関にしっかりと確認することをお勧めします。

話を戻して、こちらの企画には大変な反響があったようです。やや過激な内容でしたので、放送後は批判も出たが、総じて「面白かった」という評価で落ち着いているようです。確かにとても面白い内容でしたね。


美容形成外科医として感心した点

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私がこの番組で感心したのは2点です。

一つ目は、美容整形の企画をお茶の間のネタにできるようになったこと。
「水ダウ」のような人気バラエティ番組で美容医療をネタとして使えるようになったということは、「美容医療が大きな市民権を得た」ということです。
昔ビューティコロシアムという番組がありましたが、あちらは大手美容外科の先生方が出演し、コンプレックスに悩んでいる患者様を変身させポジティブに新たな人生を歩んでいただくという内容のものです。明確に「美容整形」の立ち位置が設定されており、視聴者もそれなりにシリアスにみていたはずでしょう。バラエティ番組とはターゲットが大きく違うため、今回の水ダウはより一般的な層に美容医療をネタにしたと言えます。

そして二つ目は、美容整形のネタはTVバラエティに使えるが、実際は安易に整形を指摘できるものではない、ということ。
例えば、タモリさんの「髪切った?」というセリフは誰もが知るところです。昨今はハラスメント観点で色々な意見があるでしょうが、外観の変化に対して指摘をすることは日常的にもごくごく自然な流れです。「メイク変えた?」という問いかけも同様です。
しかし、「ヒアルロン酸いれた?」や「唇に何かした?」などは指摘できないということです。
(*あまりに不自然・不相応な変化を演出して偏りがあったという要素は今回の考察からは除外します)女性の変化に気づいてあげるのが男のマナーといわれるにも関わらず、そこは指摘しない方が無難だという判断になるわけですね。

すなわち、美容整形は「水曜日夜10時のバラエティ枠で取り扱っていい存在になったが、それでも安易に指摘できない微妙なラインである。」これが2021年における一般的なコンセンサスなのでしょう。

これは実に絶妙なポジションではないでしょうか。
美容外科医として、本来ならば笑い転げて楽しむはずの水曜日のダウンタウンを険しい顔で両腕を組みながらふむふむ、と真剣に見てしていました。


美に対する文化のこれから

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以前にも美容医療は随分と身近な存在になったことを記述させていただきました。↓↓

しかし、今回の番組をみて、更に一歩進んだ世の中になったんだなと、痛感させられます。

30年前、私が美容医療を手がけだした時期には考えられないような企画が人気番組で報道されているわけですから、美容医療の一般許容度は確実に増加していますね。

これからは「ボトックスした?」「鼻いじった?」と臆することなくいえるような時代が来るのかもしれません。

少なくとも美肌治療に関してはその変化を指摘できる時代はすぐでしょう
「肌艶いいけど、何かした?」→「シミとった?」→「シワとった?」
という会話は美容アンテナの高い女性同士ではよくされている話だと聞きます。本来持っている自分の美しさを取り戻した(若返った)という意味で切り出しやすい内容だからとのことです。

私が得意とするフェイスリフトや人中短縮などがそのようなポジションになるにはまだまだ時間がかかりそうですが、文化人類学や社会学にも通じるテーマとして注目していきたいと思います。

医療技術以上に時代のトレンドは大きく移り変わっていってます。私も最前線で活躍するプレイヤーとしてその変化を捉えていけるよう尽力します。


「身も心も美しい人生で」

引き続きよろしくお願いいたします。


酒井倫明(さかいみちあき)




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