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こんにちは酒井倫明(さかいみちあき)です。
東京都内で美容クリニックを経営しております。

本日のテーマは「隆鼻術について」です。少しボリュームのある内容になるので複数回に分けて記述したいと思います。

専門的な内容を含むお話になりますが、隆鼻術を検討されている方は是非ご参考にしてください。

隆鼻術とは

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日本人が抱えるコンプレックスといえば目の大きさが思い浮かびますが、それと同じくらい鼻の高さで悩まれている方がいると実臨床を通じて私は体感しております。

隆鼻術は鼻根部から鼻背部、鼻尖部にいたる鼻筋を整えながら鼻の高さを出すという古来から存続する美容外科手術です。わかりやすくいうと鼻の穴の中を切開し、人口軟骨等を入れることで鼻を高くする施術です。
そして近年はその隆鼻術に関して、移植材料の多様性が出てきました。

選択肢が増えるということは患者様にとっても医師にとっても大変喜ばしいことですが、同時に「選択」という悩みも出てきます。
安全性や術後の感触など、どの材料、あるいはどの様な手術法が最も推奨できるのでしょうか。


隆鼻術に使用する材料の基礎選択

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 隆鼻を行う場合、鼻根部(鼻の目と目の間)はもとより、鼻背部も高く修正し、鼻尖部(鼻の頭)ではやや鼻先を尖らせる事が多いと思います。最近では隆鼻のために移植される物質も多様性がでてきました。シリコーンプロテーゼ、肋軟骨、ゴアテックス等が多く利用されています。
この中でも私はシリコーンプロテーゼがもっとも安全性に長けていると考えています。しかも現在のシリコーンプロテーゼはかなり柔らかく組織になじみ易くなっていて、移植後の問題点は激減しています。プロテーゼとともに鼻尖部に自家組織である耳介軟骨や筋膜あるいは真皮を使用すれば鼻尖部の形態を整えた上で安全性も確保できます。プロテーゼがもっとも優れているところは、もし、これを除去する場合、きわめて簡単に切除できることです。
これら、移植材料に関しては研究がなされ新しいものが開発され続けています。いずれは、ゴアテックスやシリコーン、肋軟骨にかわる新しい医療材料が開発されるはずです。その時、新しい素材に変更する場合でも、シリコーンプロテーゼであれば、たやすく交換ができるでしょう。
ゴアテックスや肋軟骨は除去が困難な上に、肋軟骨では、移植後の変形も問題視されています。さらに、これらの素材は鼻尖部や鼻柱の異常な硬さも問題です。


シリコーンプロテーゼの種類とそれぞれの利点

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鼻のシリコーンプロテーゼといえばL型仕様I型仕様があります。近年I型を選択する医師が多いと思いますが、実はそれぞれ欠点と利点があります。

L型は、鼻根部を骨膜下に固定したうえで鼻中隔部にも固定できるため、プロテーゼが曲がることなく安定して固定されます。しかし、鼻尖部の皮膚に負荷がかかり易く、場合によっては皮膚の破裂やプロテーゼの脱出の合併症を招きます。

I型は、鼻根部だけで固定されるためプロテーゼが曲がり易く(プロテーゼの変位)、また、短いプロテーゼであれば、鼻尖部は軟骨の移植等で賄わねばなりません。もし、長いI型プロテーゼを使用すれば、鼻尖部はL型と全く同じになり、鼻尖部皮膚へ影響を与えてしまいます。したがって、I型プロテーゼによる隆鼻術では、短いプロテーゼを選択し、鼻根部ではプロテーゼで隆鼻を行うものの、鼻尖部は耳介軟骨の移植等で形成を余儀なくされます。この場合、プロテーゼを除去する場合は一度鼻尖部を大きく広げる必要があり、修正は面倒になります。


私が提言するハイブリッドスタイル

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このようにそれぞれの利点があると同様に欠点があります、そこで私は、とても柔らかいL型シリコーンと耳介軟骨や真皮を利用したハイブリッド手術を提言しています。

これは、鼻根部は適度な高さのシリコーンプロテーゼ、鼻尖部は極めて薄くしたシリコーンプロテーゼに耳介軟骨と真皮をのせた状態、鼻中隔部や鼻柱部は極めて細くしたシリコーンプロテーゼに軟骨や真皮を巻きつけてシリコーンが鼻尖部皮膚を障害することを防ぎます。

このハイブリッド手術では、鼻腔内の鼻柱部を少量切開するだけで簡単にプロテーゼを除去できるのが最大の特徴になります。また、鼻尖部はほぼ、耳介軟骨と真皮で形成されるため、軟骨単独移植よりとても柔らかく自然な感じが表現できるのも長所ということができるでしょう。
そして、簡単にプロテーゼが除去できることは、将来の新しい隆鼻術への変更の容易さにもつながります。


実際の症例

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↑隆鼻症例になります。
隆鼻と鼻尖形成を希望された患者様です。シリコーンプロテーゼと耳介軟骨、真皮移植を伴うコンポジットグラフトで形成しました。

合併症、リスク:
感染、皮膚の血行障害、皮膚潰瘍、プロテーゼの位置異常、血腫、色素沈着、等


いかがでしょうか、患者様が注意すべきなのは「見栄えだけではなく、安全性やその後のメンテナンスなどを考えなければいけない」という点です。


その②に続きます。



酒井倫明(さかいみちあき)


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