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こんにちは、アルモ形成クリニック 植毛医の内田直宏です。

今回は、FUE法における使用機器の中でも、毛包を採取するためのパンチブレードについてお話ししようと思います。

パンチがないとグラフト採取ができないため、自毛植毛手術を行う医師にとっては無くてはならないものとなります。

植毛機器は沢山のメーカーがしのぎを削って機械を開発しているのですが、実際にみなさんの体に触れるのはこのパンチブレードです。
皮膚に接するパンチについて考えることが植毛の成否を決めるといっても過言ではありません。

パンチには大きく分けてblunt punch(ブラントパンチ)とsharp punch(シャープパンチ)があります。

ブラントパンチ


ブラントパンチは別名ダルパンチとも呼びます。ダルパンチとは、先端が「鈍的」である尖っていないパンチのことです。
特に最近の流行りは、トランペット型ダルパンチです。先端が広がっていてトランペットのようになっています。2002年、国際的植毛医のJim Harrisが、シャープパンチ使用のFUEの技術獲得に苦労する医師達のために導入をしたのがきっかけと言われております。
この独特な形状によりグラフトの切断率を低く保つことに成功しております。

一方で、シャープパンチとは先端が文字通りシャープに鋭くなっているパンチのことです。

シャープパンチ

シャープパンチは、組織に刺入した際の抵抗がほぼなく、切れ味がよいため、慣れればこちらの方が簡単に採取でき、グラフトの断面も綺麗な傾向にあります。
これに吸引システムを併用することで、容易に浮き上がるようにグラフトを採取でき、バルジを超えた必要最小限の深さに刺入を留めることができます。
一方で、その切れ味が故に適切な角度で刺入しないと切断率が高まるデメリットがあります。

私自身、一時は、深く考えずとも容易に採取できる、ブラントパンチの方が優っていると思っていました。
しかし、最近では両方十分に試した上で、やはり王道のシャープパンチに絶対的な一票を入れたいのです。

「シャープパンチに慣れていない術者はブラントパンチの利用が良いが、慣れている術者はシャープパンチの方が良い」というのが現在の結論です。

そもそも、よいパンチの定義は
「よいグラフトを採取できるパンチ」「ドナー部の傷跡が最小限であるパンチ」「価格が安価で利用しやすい、環境面でやさしいパンチ」「初心者でもうまく採取できる」など、さまざまな意味があると思います。
患者様視点でみると、この中で特に重要なのは、「よいグラフト(生着率の高いグラフト)を採取できるパンチを使用すること」「ドナー部の傷の治癒が良好」の2点につきます。

よいグラフトとは、以前にブログでも書きましたが、follicular unitが立毛筋付着部(バルジ周囲)までしっかりと毛根鞘がまとわりつくように存在するグラフトのことです。

さて、ここでパンチブレードの力学について考えてみましょう。
Aをパンチ先の皮膚に接触する表面積、ブラントパンチにおけるパンチ外径をR、内径をrとおくと

です。また、Fは表皮を貫通する力、Pを単位面積あたりの皮膚を貫通するのに必要な圧力とおくと、

となります。パンチと皮膚の接触面積が大きいのはブラントパンチなので、皮膚に垂直方向にかかる力が大きい場合、作用反作用の法則により、術者への手の抵抗値が圧倒的に大きくなるというデメリットがあります。

そこで、このブラントパンチは力を皮膚表面に対して垂直方向でなく、水平方向に分散することで、抵抗値を減らし、比較的容易に採取することに成功したのです。

つまり、パンチの回転力(ないしは剪断力)を上げることで抵抗を下げることが可能となったのです。
また、もう一つの特徴があります。それは、先ほども述べましたが、このトランペットのような鈍的な先端で、毛包を管腔の中にうまくガイドとして誘導することで、多少毛包に対する軸がずれていても、切断率を低くすることができた点です。

このように書くと、ブラントパンチはいいところ尽くめのように感じますが、デメリットがきちんと存在します。それは、

①高速回転化によるデメリット
先端が鈍的であるために、水平方向への力の分散を必要とするため、代償的に回転数を上げる必要がある点です。
これにより、一見きれいに採取できているように見えても、グラフトが見えない熱損傷を受けており生着不良になる可能性が生じます。また、皮膚との接触面積が大いため、表示されているパンチのサイズが小さいとしても相対的にドナー部の傷跡が目立ってしまう可能性がある点です。
私個人の意見では、ブラントパンチは、確かに採取自体は経験なくても容易な印象なのですが、採取したグラフトが均一に毛根鞘が付着せず、chubby graft(太った良いグラフト)になりにくい傾向があると思います。トランペットなどの独特な形状により、パンチの直径も比較的大いため、表皮や真皮上層の成分が多く残ってしまう印象があります。

②埋没株の危険性
英語では、「buried graft」と呼びますが、適切に採取できかなかった場合、力がかかることで、鈍的な先端も相まって、グラフトを皮膚の奥に押し込んでしまうのです。
押し込んだグラフトは、いわゆるinclusion cystとよぶ粉瘤、表皮嚢腫を形成してしまい、ドナー部がぼこぼこ見えてしまうといった現象が生じ得ます。それだけでなく、術後、腫瘍が増大する危険もあります。ブラントパンチを使用した場合には、植毛手術後に後頭部にできものができやすい傾向にあります。

他院ブラントパンチ術後のドナー部のぼこつき(埋没株)

③パンチの滑り、パンチの内腔へのグラフト流入
先端が鈍的なので当然滑りやすく、また、パンチ内腔へグラフトが入りやすいため、時間を要する場合があるという点ですね。

それぞれメリット、デメリットは存在するものの、ブラントパンチは、ドナー部の傷跡の治癒が悪化したり、埋没株が生じる可能性があるため、上記のデメリットは見過ごすことはできません。

私自身は、両方を十分に検討した上で、シャープパンチと吸引を併用するシステムに一定の価値がある思っております。

シャープパンチのデメリットは慣れていないと切断率が高くなりがちなことです。しかし、吸引を併用することで、浅く刃を入れても切れるし、グラフト自体も綺麗です。刃を入れるとすっと切れて、グラフトに付着する組織も綺麗です。

この感覚は形容しがたいのですが、例えて言うなら、シャープパンチは切れる包丁で肉や魚を切った時の感覚に非常に似ていて、ブラントパンチは切れない包丁で肉や魚を切る感覚と似ています。切れる包丁で肉を切った場合は、肉の断面がきれいであるが、きれない包丁で切った場合は断面がズタズタになることがあるというのも類似しています。

この章では、一般的なダルパンチとシャープパンチについて触れました。
パンチは非常に奥が深く形も色々な形があります。また、今後、パンチブレードの形についても詳しく掘り下げてお伝えできればと思います。

実のところ、私自身、パンチ製造のメーカーと共同でさらに質のよいパンチについて研究を重ねており、試験段階は終了し、近々最高のパンチをリリースする予定です。

興味ある方は是非カウンセリングなどで聞いてみてください。

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