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春のお彼岸 東北の場合 #和煦 #旅する日本語 #実話

東北の春はおそい。
日差しは暖かいが、お彼岸だと言うのに、雪は残ったままだ。
祖父のお墓参りに、少し雪の残った墓地を歩く。

祖父はとても私を可愛がってくれてた。
将棋を教えてくれたり、白鳥を見に連れて行ってくれたり。

「今度は、秋に来ようかな」

お参りを終え、私は母に話しかける。
山の斜面にある墓地だから、紅葉が美しいだろう。冬もいいけれど、墓地が雪に埋まると聞いている。
冬なら近くの湖に来る白鳥が見れるのに…。

「やめたほうがいいわよ」

母が止めた。

「どうして?」

「熊が出るからね」

「熊?!」

「おじいちゃんの親戚の○○さん、熊に肩を引っかかれて崖から落ちたっ
て」

「崖?!」

「崖って言っても山の斜面のきついところのことかな?と思うけど。」

私は「クマ 目撃情報 - ☆☆県ホームページ」で検索した。
「本当だ!」

「だから、春にしておきなさい」

東北の短い春。
日差しはとても暖かいが、私は背筋が凍る思いをした。


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