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仕事はつらいよ編_m

・めずらしくバタバタしている。
先週末、ある仕事で急な要請があり、1日の間に7か所ぐらいに謝り通し、段取りをつける。大きな目で見れば、わたしが事態の可能性を読み切れず、ノンビリしていたのが原因なのだ。ふだんノンビリしている分、ここが頑張り時なのである。そしてジタバタした結果として、ある部署のメンツをつぶすことになり、面と向かって「死ね」×5回、「死んでしまえ」×2回、「いいから出ていけ」×1回、間接的にであるが「辞表を出す」とまで言われる。

おかげさまでメンタルが好調で、あまり気にしていない。とはいえ、全体として、お金のことで揉めるのは、なかなかつらいものがある。また、こんなふうに大きなお金が動くと(お金をもらえるのはとてもありがたいことなのだけれども)、ふだん数万円の原価削減のために嫌な思いをしているのが、全くあほらしいような気がしてくる。お金ってなんなんだ。まじめにとらえながら、まじめにとらえないことが肝心だ。

会社というのはふしぎなもので、役に立たない人間があるとき必要になったり、有能な人間が有害だったり、思わぬところでお金を失い、思わぬところでお金を得たりする。評価されるべき人間が評価されず、評価されるべきでない人間が評価されたりもする。そうして全体としてどうにか生存している。

先日、ある人がある企画の設計に悩んでいるようだったので、あーそれは、これこれ、こういうのがあって、あ、これは? こんなふうになってて、こうするとこうなって、こうなるんだよ、こんなのいいんじゃない? みたいなアイデアを出したら、「すごいですね」と感心された。

もちろん、そんなのは放言であって、適当なことをいうだけなら誰でもできるのだが――

それで思いだした、私は以前は、「お前にはなんのアイデアもないのか? なんでもいいからなんか言えよ」(大意)と言われたこともあったのだった。自分でも、その場の感覚がつかめず、役立たずだった。なんでだろうな、と考えてみると、それはおそらく、その人がアイデアマンであると自負しており、私はそういう人の前では、自動的に、ノーアイデアマンとして振る舞ってしまうからなんだろうと思う。

助けるという行為は、助けられることとセットで成立する。だれかを有能にするのは無能な人だ。もしも、自分のまわりが「バカばっかりだ」と感じられるとしたら、それは、その人がまわりをバカに仕立てあげているのである。たとえ個人として有能な人だとしても、まわりを愚かにしてしまう人は、相殺するとトントンになってしまう。もったいないことだね。

・『フーコーコレクション5 性・真理』「倫理の系譜学について」
参加中の読書会のために読んだ。古代ギリシアから初期キリスト教にかけて、自己の規律がいかに変遷したか、というフーコーのプロジェクトの概要が示されている。内容とあまり関係のない感想として、私たちがどのように何に基づいて自己を規律しているかというと、まずもって、労働市場で取引される「商品として」だろうな。

・映画『セールスマン』(メイズルス兄弟)@シアター・イメージフォーラム
貧しい家庭を訪問しては、高級な聖書を売り歩くセールスマンたち。いやあ、仕事はつらいよ。
引き時と押し時。同じモーテルに泊って、その日の成果を話す、仲間たちの「気の持ちよう」。どこかで素を見せるような、人間の顔をした語り方と、それが同時に商売であること。

山内マリコさんによる『グレイ・ガーデンズ』評が面白くて、こっちも見たくなった。

*そのほかのこと*
・ドラマ「鎌倉殿の13人」 今回の小池栄子は目玉がくりくり動いて美しくてしびれた。悪人ではない北条政子を描きたい、という監督の言、この回に集約される。いよいよ次回が最終回。えっ! 終われるの、これ!!!?

・アニメ「チェンソーマン」(第7~9回) いや~~~~、第8回やばかった。「この調子で、異なるタイプの女とのお色気シーンと戦闘シーンが交互にしばらく続くんだね、少年マンガ的に、そうなるだろうね」と思ったところに。震えがきました。怖くて泣きました。芸術だったね、と書いている人がいて、さもあらん、相変わらず作画演出が神。終わりの歌が毎回変わるのもやる気がみなぎっててすごい。マキマさんの魅力がやばいんだが、ぜったい手を出してはいけないタイプ、と思っていたら案の定だ。

手編みのベストが完成
先々週の週末に試し編みして、それからずっと頑張って編んでいた、グレーのゴッドランド羊の手つむぎ糸を使ったベストが土曜日に完成した。Midori HiroseさんデザインのCassisという名のベスト。ドロップショルダー的な、と言ったらいいのか、肩をまわりこんで覆うようなデザインが特徴だ。

途中で糸が足りなくなって紡いだりしていたので、時間がかかってしまった。手つむぎ糸で着るものを作ったのははじめて。水通しするとだいぶ風合いが変わること、見てきれいな糸と編んできれいな糸も違うこと、糸仕上げをしないとマジで斜行すること(斜行も狙ってやればナナメに降る雨のようでステキかもな)などを学習した。それにしても、ゴッドランドのグレーにはほれぼれする。3種のグレーを混ぜてつくった糸だ。それなのに、できあがったものを見るとありきたりのグレーに見えてしまって、自分が感じている素晴らしさとの間にギャップを感じる。

日曜日はスピノザの『知性改善論』を途中まで読んだほかは、ずっと糸つむぎをしていた。はやく次のものを編みに取り掛かりたいな。
(m)

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