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朝ごはんを片付けたあと、鼻にしみついた食材と油、塩分の香りを覆うように、ファンデーションの甘い香りに沿う。乾燥した唇に、いつもより鮮やかな赤を描く。 鏡に映ったわたしは、老いと若さのあいだで揺れている。少しだけ弾力を失った耳たぶに、十年前の誕生日にもらった小ぶりなパールのピアスをつけたら、目じりが熱くなった。 「できたか」 リビングのソファに座ったあなたは、じれったそうに足を組み替えて訊いてくる。もうスマートフォン上の薄い情報のチェックも終わり、特に何もやることがないよ