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DTM日和 2024年2月配信号 ミニマル・ミュージック

DTMを楽しんでいるとどこかで必ず聞くのが“ミニマル”という言葉です。メロディーの端切れのような小さなフレーズを反復し徐々に変化させ、また違うフレーズを重ねたり外したりして、独特の世界観を構築してゆきます。元々はクラシックの世界で生まれたものらしいですが、ご存知のとおり反復やオートマティックな変化はDTMが得意とする領域です。ミニマルを楽しんでみましょう。

機械でミニマル

以前少しお話ししましたが子供の頃の私の近所は工場ばかりでした。生まれた頃からガシャコンガシャコンと言う音を聞いているわけですから、音の反復に対して並々ならぬ思い入れがあります。車のワイパーの機械音と擦れる音、当時はけたたましい音を出していた洗濯機や掃除機に入ったゴミがカンカン言う音に至るまで音楽的に聞こえずにはいられませんでした。音程が付けられたものではないのですがこれらもまた、広い意味でのミニマルミュージックかなと思います。

クラシック?

さて、その後も含めもともと機械によるミニマルから入っていたので、打ち込みでやるものかと思っていたのですが、高校生の頃にスティーヴ・ライヒというミニマルミュージック界の巨匠のCDで聞いたところ、なんと生楽器。しかもバイオリンやコントラバスから木琴までクラシカルな楽器で弾いているではないですか。ミニマルをちゃんと聞いていた方なら当たり前だろ、という話かもしれませんがかなりの衝撃を受けました。なるほどミニマルは1960年代から続く音楽ジャンルで何も打ち込みで演奏することに限ったことではなかったのです。しかし、ミニマルを生楽器で再現するには肉体的にも精神的にもかなりの努力と根性が必要なのでしょうね。

自然な音も実はミニマル

もともと人力だったとはいえ自動演奏が可能なDTMはミニマルミュージックを行うにはもってこいです。実際にやってみると意外と楽しいものです。例えばドレミファ(CDEF)と16分音符で打ち込んでみると、可愛らしいいつものドレミファが奏でられますよね。では、これを続けて4音×4つとやってみると印象が変わってくる事がわかります。この4つの繰り返しの後に同じようにFEDCとやるとまた違うイメージになりますよね。
わずかな音階の変化を交えながら少しずつ反復の周期や音色が変わってゆくと言うものは工場でなくとも実は色々なところに存在します。自然の世界でも雨垂れや波紋、虫の音の様にちょっとしたフレーズの繰り返しがあります。雨の日に雨音を聞きながら窓の外を眺めていて、サーという音に軒や木々からポタポタと落ちる音が色々なところから鳴っている、などというがあるかと思います。これらの音に癒される時も有りますよね。やがて変化を生じながらまた反復を繰り返すとい事に人間が惹かれるのも無理がないのかもしれませんね。