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DTM日和 2023年2月配信号 高橋幸宏さん特集

 1月11日にミュージシャンの高橋幸宏さんが亡くなりました。ソロアルバムも多数出されているだけでなく、サディスティック・ミカ・バンドやYellow Magic Orchestraのメンバーであり最近ではMETAFIVEというテクノのスーパーバンドをされていたりもしました。ファンとしてはショックは大きくいまだに音楽関係の活動をする気にもなれません。どの曲が一番好きというのはつけられるものではないのですが、その時々でインパクトを持って聞いていた高橋幸宏さんの曲を紹介したいと思います。
 (公式動画のあるものはリンクを付けました)

サラヴァ!/作詞:高橋ユキヒロ、作曲:高橋ユキヒロ

 1978年発売の高橋幸宏さん最初のあるバムの表題曲です。ジャケットからも分かるとおり、海外の風景にすんなりと溶け込む出立ちそのままの曲となっています。この曲はボサノヴァといえばボサノヴァなのかもしれませんが、フランス色も垣間見られる曲かと思います。ストリングスも臭くならずスタイリッシュで細野晴臣によるベース、キーボードの坂本龍一もダンディズムを支えています。YMO黎明期でありながらテクノ感はなく、この頃の御三方のプレイヤーとしての技を堪能できる一曲です。高橋幸宏さんの全てのダンディズムはここから始まっているのかもしれませんね。この曲を知ったのは高校生以降ですが、メロディーの美しくもダンディな香りに痺れました。

ライディーン/作曲:高橋幸宏

 シングルカットは1980年の言わずと知れたYMOの代表曲です。一番初めに高橋幸宏さんの音楽に触れたのは、幼稚園頃のこの曲でした。とにかくYMOの曲は子供心を揺さぶるものがあり、バンドやタイトル名はおろか誰が何の楽器をどのように演奏しているかすら知らなくても、街やTV、ラジオでかかっていたあのシンセサイザーの音に魅了されたものです。とりわけライディーンはとにかく格好良く、それでいて日本風で有りなにか最新の近未来の感覚がありました。
 この有名すぎる楽曲はいろんな解説が行われており、大人になってからその鋼のようなコンセプトと精密な音作りを知るわけですが、本格派こそ何も知らない子供の心を掴むものです。ライディーンの煌びやかで激しい、そして力強い主旋律は永遠に語り継がれる事でしょう。

https://youtu.be/nB5g2cUM2FQ


バレエ/作詞:高橋幸宏、ピーター・バラカン 作曲:高橋幸宏

 YMOの曲でもう一曲。BGMというアルバムに収録された「バレエ」という作品があります。あの舞踊のバレエの事です。幼少期にリアルタイムで抱いていたYMOのイメージはこの辺りのイメージで、どちらかというとモノトーンの服に身を包んだ不思議なお兄さんたち、という印象が強く残っています。その中でもこのバレエという曲は、今でも心を掴まれている曲です。歌詞も美しく、「dancing with sadness just for herself」などというフレーズなどどんな感性を持っていれば書けるものだろうかと思ったものです。比較的ゴリゴリとしたベースとドラムスでありながらスモークのかかったかのような旋律がそれをも静かに抑制してゆきます。美しい、の一言の曲です。

STAY CLOSE/作詞:スティーヴ・ジャンセン 作曲:高橋幸宏、スティーヴ・ジャンセン

 1986年、元JAPANのドラマーにして高橋幸宏さんの盟友、スティーヴ・ジャンセンとの共作です。70年代後半から80年代、JAPANのファンだった女性(男性も)多かったのではないでしょうか。STAY CLOSEでは淡々としたリズムとシーケンスにこちらも淡々としたお二人のボーカルが乗ってきます。ですが、歌詞は情熱的で内に秘めた想いを際立たせています。ボーカルの部分が終わった後比較的長めのシーケンスを効かせるのですが、それがまた良く、いつまでも聞いていたい気分にさせます。たまにクスッとさせるMVも秀逸ですね。

https://youtu.be/50eWwSwYxkg

Turn Turn/作詞:高橋幸宏・細野晴臣 作曲:高橋幸宏・細野晴臣

 2002年、細野晴臣さんとのユニット、スケッチ・ショウからの曲です。このアルバム以前の高橋幸宏さんは電子的な音色というよりはアコースティックなテイストが前面に出ることが多かったのですが、エレクトロニカの潮流と共に突如、電子音が復活します。
 流行りのというよりは、しっかり根のはったお二人の視点ならではのエレクトロニカの曲です。跳ねるようなリズム体、哲学的な歌詞、イカしたMV。眠りについていた何かが目覚めたかのような、期待感を覚えています。
 何がすごいというのは打ち込みでなければ表現ができない、もしくは打ち込みであることが一番適しているであろう曲であること。曲や歌詞はもちろん、音作りに人知の及ばぬこだわりがあればこそだと思います。いわゆるレジェンドだとか神々と言われる根源というのは、このこだわりから産まれているのでしょうね。

https://youtu.be/NQ3uHydQm5g


 一ファンとしてどんなお悔やみができるのかな、と考えるとやはり曲を聴くことかなと思い、あらためて個人的に大好きな高橋幸宏さんの曲を聞いてこのnoteを書きました。曲を聞き直すと元気になるし希望も見えてきます。それが音楽というものなのでしょうね。