見出し画像

DTM日和 2023年5月配信号 譜面が読めない!

 私は音楽好きではありますがただのサラリーマンです。そして曲を作ったりYouTubeで動画を配信していますが子供の頃から楽器に触れていたわけではありません。その代わり、子供の頃からコンピュータで音楽を作りたいとは思っていました。バンド演奏など他のミュージシャンとのコミュニケーションを取るには譜面を読める方がよいのですが、最初からDTMをやってしまった私は・・・今回はそんなお話をします。

譜面が読める?読めない?

 私は譜面が読めません。ただし譜面に何が書いてあるか100%わからない、という事ではないのです。私だけでなくこういう方は多いのではないかと思います。
 多方、私の周りの方でもプロ・アマ問わず人前で演奏しているような方は、ほとんどの方が譜面をすらすら読め(少なくとも私から見たらそう見えます)、リハーサルなどでも共通言語としてコミュニケーションをとっています。そのレベルで言えば私は譜面が読めません。幼少の頃ピアノが習いたくて教室に通ったのですがピアノを行う年齢になる前にやらされたお遊戯が嫌で挫折した事を今でも後悔しているくらいです。
 ただ、義務教育で触れた音楽の授業というのもあながち捨てたものではありません。譜面が読めなくとも音楽が好きな訳ですから必然的に音楽の授業は好きになります。正確に言えば授業は好きじゃなかったかもしれませんが、歌集だとか教科書は大好きでした。音楽の授業では基本的な音符の読み方は教えてくれます。とてつもなく長い時間をかければ譜面を読み、楽器を練習することだって不可能ではなかったのです。ましてや一音一音正しくプログラムを入力していけば正確な演奏をしてくれるコンピューターはまるで宝の箱のような存在になってゆきました。

必要に迫られて

 大学に入るとロックのコピーバンドにキーボーディストとしてバンドに誘われました。そしてリーダーから言い渡されたのが「打ち込み禁止令」。私からしたらペンギンに空を飛べと言われているようなものです。そりゃキーボードは持っているかもしれないがそういう風には育っていません。断れば良かったのですが、まぁやってみようかなと思ったのが運の尽きでした。終わってみれば10曲近く覚える事になりました。
 上記のように、「そのレベル」では私は譜読みができません。そこでまずだいたいのフレーズに分け、フレーズごとに一つ一つドレミを振って、あとは左でコード、右でメロディーと言うように強引に覚えてゆきました。ピアノは習っていませんから運指はめちゃくちゃでしたが、繊細な演奏を必要とされていたわけではないので鳴るべき音を出すのは何とかなってきました。この時点で当初メモしたドレミについては忘れており、すべて指で覚えている事になります。ABABAAのようなメロディーの繰り返しも暗記します。これはなぜか頭に入りやすかったのです。という事で「何となくバンドはやっているけど譜読みができるわけではない音楽人間」ができあがった訳です。

コード

 その後も引き続き打込みは大好きでした。ただ格好いい音楽を作ろうと思うとコードというものが中々理解できず苦労しました。バンドでコードは弾いています。でも自分では格好いいコードがつけられません。
 レベルはともかく今はそれなりに自分で考えてコードをつけようとしてつけていますし、打込みの曲としてはそれなりに間違ってはいないと思っています。
 コード理論について素人が学ぶのはすごく難しい事だと思います。他の分野では沢山のテキストを読み理論的に学んだ経験も有るのですが、ことコードに関してはテキストごとに表現が違うように思えてしまい、なかなか理解が進みませんでした。「こうすれば簡単だよ」という方もおっしゃってくれる方もいますが、そのやり方も千差万別。楽器によってもキャリアによっても違う気がします。おそらく色んなアプローチの教え方、覚え方があるのだろうなと思っています。

表現の固まりか、悪趣味か

 打込み、特にテクノポップは比較的自由な音楽です。まず一番自由なのが楽器そのもの。ドラムっぽい音が鳴っていてもそれはドラムではありませんし、ブラスっぽい音がなっていてもそれはブラスではありません。偽物と言われればそうなのかもしれませんが、一から音を自由に作る事ができるのがシンセサイザーの醍醐味です。生の楽器の偽物というよりはオリジナルの電子楽器を一つずつ作ってゆくようなものです。
 楽器でさえ決まっていないのですから、実際に奏でるメロディーやコードも自由なものです。そしてDTMではそれを生み出しやすい環境でもあります。実際にプロの演奏でも考えられないコード進行を使うこともあれば平均律でないことも。不協和音を上手に使う曲もたくさんあります。
 しかし悩ましいのですが、奇妙な音でランダムに鳴らせばそれで面白いかというとそう言うわけではありません。上手下手、上級初級に関わらずそこには狙いであったり一定の聞き易さであったりが存在します。ジョン・ケージの「4分33秒」のように最初から最後まで無音である事もある種の音楽表現かと思います。ただしこれは綿密に裏打ちされた表現に対する思想があるからこその音楽です。
 時には聞いている側が過ごしやすい(聞きやすい)ルールに従い、時には混乱と混沌を表現するような、あるいは、それが同時に表現されているような、緩急入り混じった曲作りをしたいなぁ、と思っています。

 さて、今回は「譜面が読めない」「音楽は自由だ」という自己主張の回になった感があります。そして今でも「そのレベルで譜面が読めない」事に対するコンプレックスもありますし、読めたらそれに越した事ないなぁとも思っています。
 譜面が読めないから打込みをしている、というのも嘘ではありません。が、最初から打込みで音楽をやってきた、という言い方もできると思います。ピアノロール(ピアノの鍵盤が画面の左右どちらかのはじに垂直に立ちその横ひ広がる空間にブロックを置いて行くことで音の長さ音程などを入力するアプリケーション)で音楽を作るのも中々楽しいものです。また私のような生い立ちや方法作曲をしている人も増えてきていると思います。DTM自体が共通言語になる機会がもっと増えると楽しいですね。