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「サリーダ・ラボルピアーナ」という戦術用語を知っているか?

 「サリーダ・ラボルピアーナ」という戦術用語を皆さんはご存じだろうか?実はこの戦術、既にJリーグではよく使われているのだ。本日、筆者が観戦した第97回高校サッカー選手権でも、ベスト8に残った青森山田と帝京長岡が用いていたため、年代を問わず全世界で共通認識される戦術となっているに違いない。
 この「サリーダ・ラボルピアーナ」は、「後方からビルドアップの際、センターバックの間にMFが落ちてくる」現象を戦術用語にしたものだ。
 「ボランチ落ち」とも言われる「サリーダ・ラボルピアーナ」はメキシコ発の戦術メカニズムであり、グアルディオラを経由して欧州に広がっているとされている。主にポゼッションサッカーを主体とするチームはこの形でプレーしているだろう。
 さて、この「サリーダ・ラボルピアーナ」を行なうということは何かメリットが有るはずだ。別に気分でボランチをセンターバックの間でプレーさせているのではなく、しっかりとした意図がある。今回は「サリーダ・ラボルピアーナ」のメリットについて説明していきたいと思う。

2枚より3枚。数的優位と高い位置を保てるSB

 「サリーダ・ラボルピアーナ」には「5レーン」が関わってくるため、「5レーン」を知りたい方はこれを読んで頂きたい。

 「サリーダ・ラボルピアーナ」を採用しているチームは4-3-3や3-3-2-2などのアンカーシステムを使っている場合が多い。

 センターバックが横に開きハーフスペースに位置を取る。センターラインにいるアンカーの選手がセンターバックの間に落ちてくることで後ろを3枚でビルドアップが可能になるのだ。これが「サリーダ・ラボルピアーナ」である。仮に相手が2トップだとすれば、ここで3vs2の数的優位の形が作れる。4バックのままパス回しをしても良いが、そうなると攻撃に人数を割くことができない。(札幌を指揮するミハイロ・ペトロヴィッチは3バックにボランチ1枚を吸収させ後ろを4枚にして展開している。この際WBは高い位置を保てるため、これは例外)。ましてや、後ろ2枚だと相手チームのFWと数的同数になってしまうため、危険性が伴う。そこで後ろを3枚にすることで、安定したビルドアップが可能というメリットがあるのだ。
 そして、もう一つ注目すべきなのは、サイドバックの位置である。後ろが三枚で回せることで普段よりも高い位置でプレーをすることが可能なのだ。現代サッカーの中でサイドバックは、1番ボールを触る回数が多いとされている。中央よりもプレッシャーが緩いため、余裕を持ってプレーが可能だからだ。
 このままサイドバックへとボールを経由し、相手DFを釣りだしてフリーの選手を作るというプレーもできれば、逆に相手のマークを引きつけておいて、ハーフスペースで味方がフリーでボールを受けるというシーンもある。

 中盤の枚数を増やすという意味でもサイドバックが高い位置を保つのは現代サッカーにとって重要になってくるのだ。

 この「サリーダ・ラボルピアーナ」を使って見事に相手DFを崩した攻撃が昨年のJリーグであった。

 2018年のJ1リーグ第23節。天王山となったサンフレッチェ広島と川崎フロンターレの試合だ。このときのフロンターレの同点ゴールはこの形から生まれた得点である。

フロンターレのビルドアップ形態

 試合の流れによってポジションが流動的に入れ替わるため、これといった形は無いが、ボランチである大島僚太か守田英正のどちらかがセンターバックの間に落ちてきて「サリーダ・ラボルピアーナ」になる。このとき両サイドバックは高い位置を保ち、センターバックの間に入っていないボランチ+中村憲剛が後ろ3枚のフォローに行く。サイドハーフを務める、家長昭博と阿部浩之はハーフスペースに絞ってきたり、サイドに開いたままだったりと状況によって変わるが、今回は絞っていることにしておく。今回の得点もこれと「似たような」形でゴールが生まれている。

相手SBを釣った連動とエウシーニョの位置

 まず、「サリーダ・ラボルピアーナ」の形で大島からボールを受けた谷口が前へと付けるシーンから始まる。広島の左サイドハーフに位置する柏は、エウシーニョのことを見ていたため、この瞬間、阿部浩之はフリーになっていた。そして、谷口が阿部へとクサビを入れたとき、左サイドバックの佐々木が対応に行くことになる。

 このとき、佐々木の裏のスペースが大きく空いた。これを見逃さなかったエウシーニョはそのスペースへと走り込む。ボールを受けた阿部は守田へと繋ぐと、ボールを受けた守田はエウシーニョが走り込んだスペースへとダイレクトでパスを入れたのだ。

 このように、「サリーダ・ラボルピアーナ」の形を取ることで、高い位置を取っていたサイドバックがゴールへと直結する動きができる。また、このポジション取りで相手のサイドハーフを引きつけ阿部をフリーにさせることもできたのだ。

「サリーダ・ラボルピアーナ」の言いにくさ

 今回筆者がこの記事を書こうと思ったきっかけは、単に筆者が「インプット」したことを「アウトプット」したかったからだ。学んだことを言葉として吐き出すことで、人は学習し記憶していくのである。
 メキシコ発祥ということで、恐らくスペイン語が由来となっている「サリーダ・ラボルピアーナ」は、日本人とってとても言いにくいため、なかなか覚えられない。そこで「『サリーダ・ラボルピアーナ』を何回か書くことで覚えられるのではないか?」と思いこのような記事を書くことに至ったわけだ。
 そこであることに気付いた。「結局『ボランチ落ち』の方が言いやすいんじゃないか?」ということにだ。だが、折角書いたのだから、この記事を読んだ人は「サリーダ・ラボルピアーナ」を三回ほど唱えてから睡眠に付くことを勧める。この際、家族に心配されないことを節に祈る。

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