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「ハイプレスハイライン」をなぜ行なうのか?

 2018年のJリーグはモダンサッカーへと近づいたチームがいくつかあった。その一つとしてあげられるの戦術が「ハイプレスハイライン」である。だが、「ハイプレスハイライン」のメリットをイマイチ理解出来ていない人も多いのではないだろうか。
 ファン・エスナイデル氏が指揮を執るジェフユナイテッド千葉や、今シーズン横浜FMのスタイルを一新したアンジェ・ポステコグルー氏もこの采配を用いたものの結果は伴わなかった。その理由としては失点の多さだ。ハイラインの急所は高いラインの裏。これを取られれば、自陣に向かって走りながら守備をするため、当然後手を踏む形になってしまう。
 しかし、本来なら「ハイプレスハイライン」で戦うチームは失点数が少なくなるという傾向がある。それをデメリットにしているのならば、このシステムを使う意味が無い。では、なぜ「ハイプレスハイライン」で失点が減るのか。そのメリットを説明したい。

「ハイラインハイプレス」より「ハイプレスハイライン」。

 これは筆者個人の意見なのだが「ハイラインハイプレス」の言い方よりも「ハイプレスハイライン」の言い方が正しいと感じる。それは、「ハイラインを保つ」ために「ハイプレスをかける」のでは無く、「ハイプレスをかける」ことで「ハイラインを保たなければならない」からだ。
 すごいややこしい言い方をしているのは分かる。もっと端的に言うのであれば「ハイプレス」をかけることによって、選手間の距離をコンパクトにしなければならない。そうしないと、選手間の距離が間延びしてしまい中盤にスペースが空くからだ。そう考えるならば、「ハイプレス」が先行して「ハイライン」が後に付いてくるという考えになる。言い方的にも「『ハイプレス』の方が先に来るのでは」という考え方になるのだ。

「ハイプレスハイライン」のメリット。

 本来は失点が少ないはずの「ハイプレスハイライン」。マンチェスターシティがこの戦いで用いて、世界の最先端を行っている。また、リヴァプールも「ハイプレス」を使用。いわば「ハイプレス」は現代サッカーのトレンドにもなりつつあると感じる。
 先ほども挙げたように、ジェフとマリノスもこの戦い方をしている。ただ彼らは「ハイプレスハイラインがはやっているらしい」という風に、流行に直ぐ手を出す女子高生や女子大生の気分で行なっているわけではない。シティもジェフもマリノスも、それぞれ明確な狙いがあり「ハイプレスハイライン」を使うのだ。それはチームの特色を見れば理解できる。
 今挙げた3チームは「攻撃的なサッカー」を目指している。「ハイプレスハイライン」は「守るため」に行なうわけではなく、「自分たちの攻撃の時間を長くするため」に行なっているのだ。これが「ハイプレスハイライン」のメリットである。
 例えば、シティの守備の鉄則でもある「5秒ルール」は、攻→守の切り替え(ネガティヴ・トランジション)になった際、相手が息つく暇も無い間に、シティの選手が猛プレスをかける。そしてボールを奪いきって再び自分たちがボールを保持しながらゲームを進めていくのだ。このとき「ハイプレス」をかけるため、選手間の距離が「ハイライン」でコンパクトになっている。だから、相手のボールホルダーに次々と選手がアタックできるのだ。常に相手陣地へと向かって走り、自分たちのゴールには常に背を向けて守る形へとなる。このように「ハイプレスハイライン」は相手ボールホルダーに次々と襲いかかりながら、速く奪いきって自分たちの攻撃の時間を長くする。このような狙いがある。そして、攻撃的なチームの攻撃時間が長くなる。これがメリットなのである。現にシティは、今シーズン18試合戦って「50得点13失点」となっている。本来「ハイプレスハイライン」を行なうチームは得点多、失点少にならなければいけない。

「ハイプレスハイライン」に求められる個人能力。

 「ハイプレスハイライン」に必要な能力はアジリティ(敏しょう性)とインテンシティ(強度)の高さだ。アジリティは「身体の位置変更や方向転換を素早く行なう能力」を指す。ここで必要となる場面は、ネガティヴ・トランジションになったときだ。ボールを失った際、直ぐに切り替える。この場面でアジリティは必要となる。
 次にインテンシティだ。これは、強度を表わしており、「インテンシティが高い」という言葉は「強度の高いプレー」の意味になる。インテンシティは、相手ボールホルダーに対しての守備。つまり「プレス」の際に必要となる。これが高ければ高いほど相手は苦しくなる。猛スピードでプレスをかけられたら流石のプロも慌てるに違いない。そういう部分で「インテンシティ」は必要となるのだ。この二つがチーム内で共有できれば自ずと失点が減ってくるのではないだろうか。

「ハイプレスハイライン」のデメリット。

 これは説明するまでもないだろうが、「ハイプレスハイライン」のデメリットは高いラインの裏である。ロングボール1本蹴られることで、局面が大きく変わってしまうのだ。
 そういった意味で「ハイプレス」をかけるのは、「簡単に裏へと蹴らせたく無いから」というのも理由になる。そのため前線がサボってしまえばそのまま失点へと直結してしまう。また、「集団でのプレッシング」が前提となっているため、後ろが続かなければ元も子もない。「選手個々人のクオリティが高く」尚且つ「集団で行なう」のが「ハイプレスハイライン」の基本でもあるのだ。これらを怠れば、ただただ相手に裏へのスペースを共有しているのと同じだ。


 今回は「ハイプレスハイライン」について言及してきた。筆者も最初に「ハイプレスハイライン」を見たときに「リスク承知の頭の悪い戦術」だと思っていたが、「個々の理解度」と「技術力」があれば実はそうで無いことに気がついた。「現実味を帯びてない」や「頭の悪い戦術」だと邪険にされがちだが、「狙い」が分かれば少しはポジティブに捉えられるのではなだろうか。

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