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新卒入社から1年半でマネージャーに。 「ネガティブ思考」を生かしたアプローチとは。 〜High Standard Interview #10〜

昨年から社内の新しい取り組みとして始まった「マイ・ハイスタンダード」。これは困難な状況下でも、高いクオリティやマインドセットを保ちながらリーダーシップを発揮したメンバーや事例を全社に紹介する取り組みです。
四半期ごとに各事業部のマネージャーからの推薦を集め、CEOを交えた会議を通じて数名が選出されています。第3回目(2022年1月-3月選出)は、3名のメンバーが表彰されました。

彼、彼女らがどのようなマインドで日々業務に取り組んでいるのか。High Standard Interviewシリーズとして「ハイスタンダード=高い基準」の源流にあるものを深掘りしていきます。
まずは、ビットキーのほぼ全ての製品開発に携わるハードウェア エンジニア 五十嵐さんのインタビュー記事をお届けします。

五十嵐さんといえば「bitreader+」。同じチームのメンバーによると、彼を代表する製品のひとつだという。

五十嵐 賢哉 (ハードウェア エンジニア)

大学・大学院在学中に機械工学について学び、小型人工衛星の研究開発に携わる。卒業後は初の新卒社員としてビットキーに入社。入社直後に電気設計者へ転向し、bitreader+を含むbitlockシリーズを中心に複数のハードウェアプロダクトの電気設計と開発プロジェクトにおいてマネジメントを担当。現在は電気設計チームでプロダクトマネージャーとしても活動している。「ロッカー向けスマートロック(以下、「今回の製品」)」の試作品開発の取り組みがマイ・ハイスタンダードとして選出・表彰された。

── 五十嵐さんは入社されて以来、ビットキーのハードウェア製品の開発に広く携わられてきたと伺っています。現在、担当する主な業務・今回の製品での関わりについて教えてください。

現在の主な業務は、今回の製品におけるプロダクトマネージャーとプロジェクトに関わらず全ハードウェア製品の電気設計の2つを担っています。プロダクトマネージャーの仕事はハードウェアプロダクトの企画や仕様検討、自社での試作開発や協業している企業様との量産開発のマネジメントをしています。電気設計の仕事では、ハードウェア製品の電子回路の設計や開発、そして検証を行っています。
今回の試作品開発においても、製品の持つ機能を実現するために、搭載する電子部品を選定して、どのように繋げて動作させるかを考えるといったところから実行しました。

ひと括りに「ものづくり」といっても、様々な種類や手法が存在します。ただ単に「作る」のであれば、3Dプリンターなどを用いて1ヵ月程の期間で作ることが可能ですが、量産するとなれば材料や品質はもちろん、量産に適した製造方法に対応する設計や価格などの配慮が要ります。
当たり前かもしれませんが、製品を1万台作るとなれば製品の元となる部品を1万台分購入する必要があります。その1万台分の部品のなかにも、性能が比較的良いものと比較的悪いものが出ることがあり、それらが混在しているために、組み立てた後で性能の良い製品と性能の悪い製品が出てきてしまう可能性があるんです。
大事なのは性能の良し悪しではなく、どんな組み合わせで作られた製品でも目的とする機能が達成できて、かつ、お客様が満足できるかどうか。そこをきちんと検証しなくてはなりません。ひとつの製品をひとつだけ作るところから、ひとつの製品をたくさん作ったとしてもある一定の水準に達するように成立させる。簡単に言ってしまえば、これが「量産開発」です。

今回、この製品の試作品開発の取り組みについて表彰いただきましたが、まさにこの量産に向けた検証作業を目下実施している最中です。

── 今回の製品の試作品開発で、最も重視していた「価値ポイント」はなんですか。

今回の製品は、大手企業様の展示イベントで発表することが先に決まっていました。ごく限られた期間での開発で、その発表に間に合わせるのはもちろんのこと、試作品開発といえど「量産品に遜色ないクオリティを出すこと」は特に意識していました。
というのも、発表をするということは特許権や意匠権として権利化できるような技術やデザインが公知となってしまいます。一度公知になってしまったものは会社の権利として主張できなくなってしまうため、製品の外観や大まかな機能面については量産品と遜色ないものを作り、同時進行でその権利を取得しておく必要がありました。

過去にビットキーで行ってきた開発の工程から考えても、数ヶ月という短期間で成果物を世に出すことは特異な例だと思います。通常であれば、量産品相当のものができるまで開発と同時並行で権利関係なども考えながら進めていき、最後に発表するという流れですが、今回は発表が先で、そこに開発も権利関係も全て間に合わせなくてはならない。
そのため、製品の外観などの外枠だけではあるものの、量産品と遜色ないものづくりについては最も重きを置いてこだわりました。

─ 上記の開発が実現できたのはどんな理由であると感じていますか。

開発に欠かせないそれぞれの局面において、必要な知識や豊富な経験を持った技術者が揃っていた点。そして、そのメンバーたちとともに掲げている目標に向けて泥臭い作業も厭わずに取り組むことができた点が大きいですね。

製品の外観でもある「筐体きょうたい」を3Dプリンターを使って作るには、まずはパソコン上で3Dモデルを作ります。そのデータが完成してはじめて3Dプリンターを稼働できるのですが、3Dプリンターの特性や使う材料、作る形状に応じて基になる3D データやプリンターの設定を細かく調整する必要があります。3Dプリンターのような、知識と経験が必要な設備を使ってのものづくりを、構想段階から一貫して行えるメンバーがチームにいたため、スピーディーに開発が進められました。
電気設計に関しても、ただ設計するだけでなく、すぐに入手しやすい部品を選定したり、適切なQCD(*1)で基板を製造できるメーカーを探したりと、幅広いノウハウを持ったメンバーが開発プロジェクトにいたことは強みでした。

そういったメンバーたちと、粘り強く泥臭い作業を何回もトライアンドエラーを繰り返しながら、理想の形に徐々に近づけていくように調整していったから、間に合わせられたのだと思います。

*1 Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の総称。ものづくりにおいて、欠かすことのできない重要な要素である。

── 迫りくる納期や度重なる失敗のなか「​​常に冷静で、状況が悪化しても思考停止しなかった」と表彰時に評価されていますが、ご自身はどんな風に捉えていましたか。冷静でいるために意識していたことを教えてください。

たしかに厳しい場面は幾度とありましたが、これまでにも厳しい状況はたくさんあって、それを乗り越えてきたからこそ「こういうこともあるのか」と、客観的に捉えることができたという感じでしょうか。過去に比べれば、まだマシかなって考えることができたので結構冷静でいられた部分はあるかもしれません(笑)。

個人的には、冷静というより常にネガティブなんです。ただ、ネガティブ思考ってそんなに悪いことばかりじゃなくて「一見うまく進んでいるように見えるんだけども、仮にこういうイレギュラーなことが起きたらどうなるだろうか」というように先読みして考えられたりするので、結果として先手を打つことができます。
日々のなかでは担当者全員のスケジュールを引き、それぞれがちゃんと進んでるかどうかをデイリーで確認できていたと思います。先読みができたからこそ、予算や納期などといった不確定要素をできるだけ早い段階で減らそうというような動きにもつながりました。

── 五十嵐さんはビットキー初の新卒入社ですが、中途で入社したメンバーたちのなかに飛び込んで働くことに抵抗はありませんでしたか。

新卒入社して働くことに抵抗はありませんでしたが、やはり実際に入社してみると大変なことはありましたね。というのも新卒のため、社会人経験が全くない状態なので、ビジネスマナーはおろか、技術者としての振る舞い方も全くわかりませんでした。当時は今と比べて、入社時のオンボーディングが充実していたわけでもないので、常に失敗から学ぶような姿勢でいろんなことを習得していきました。

電気設計に関しては未経験分野ではありましたが、大学や大学院在学中に携わっていた小型人工衛星の開発を通して「一気通貫」で、ものづくりを経験していたことが役に立った実感があります。
そもそも、大学や大学院で一気通貫でのものづくりを経験できる人はそう多くありません。多くの学生は、学問として要素要素の技術について習得していくとは思いますが、僕の場合は「人工衛星を作る」という目的を持って実際に手を動かすことができました。
そのため、ものづくりそのものがどういった要素で成り立っているのか、詳しくはないけども幅広い知識は持ってるつもりでしたし、「全体感」を持てていたので、新しく電気設計について勉強することはさほど苦ではありませんでしたね。
機械工学や人工衛星の開発での考え方を電気設計に適用するとどうなるかを考えながら勉強していました。そうして入社して1年半程経った頃、未経験ながらプロダクトマネージャーを任されることになり、今に至ります。

── 新卒採用で社会人経験もマネジメント経験もない、未経験の状態から約1年半でプロダクトマネージャーに抜擢された五十嵐さん。入社して特に気をつけていたことはありますか?

思ったことは素直に言うようにしていましたね。
分からないことばかりではありましたが、分からないなりに報告も兼ねて、言語化を心掛けていました。

また、一種の試みとして、人がすることに対して「ここってこうしたほうがいいと思うんですけど、どういう考えでこの形に至ったんですか」というような問いを投げるようなこともしていました。そういった試みを意識して行うことで「こういうふうに考えたら、これが適切なやり方だよね」というような、経験則や前提条件にとらわれない論理的思考能力が鍛えられた気がします。
今考えると、人がすることに対して意見を出す能力は、マネージャーとして結構重要な役割のひとつなのではないかと思います。そういった積み重ねがあったから「マネージャーやってみたら?」と言ってもらえたのかもしれません。

── ハードウェア開発という仕事のどんなところに面白さを感じますか?

ビットキーは「お客様のこういう体験を実現するんだ」といった会社が目指すビジョンがあって、それらを実現させるためにデジタルキーのプラットフォームやworkhub、homehubなどのサービス、プロダクトが存在しています。なので、単なるものづくりというよりは、ものづくりを通じてその世界観を表現する手助けをしている意識があるんです。
会社のビジョンに深く共感しているからこそ、それを実現可能にするためのものづくりに関われることがビットキーならではの面白みだと思います。

私は大企業で働いたことがないので、これはあくまで想像ですが、事業としてハードウェアを主力製品にしている、いわゆる日本の電機メーカーのような会社だと、それだけで完結してしまうような気がしていて。
製品の一部分だけを突き詰めるような作業しかできずにいると、どうしても今やっていることと社会とのつながりというようなものを感じにくいのではないかと思うんです。ものづくりに関わる以上、自分たちのものづくりがお客様にとってどう役に立っているかや、どう喜んでもらえているのか。どんなフィードバックが市場から返ってくるのかなど、反応が知りたいはず。だから、仮にそれが感じられないとすると結構しんどいだろうな、と思います。

ビットキーのハードウェアエンジニアたちは、みんながプロダクトのオーナーとして動くことができるし、ダイレクトに市場からの評価やフィードバックを受け取ることができます。自分ごととして携わった製品の評価が直結して、そのまま自分への評価につながる。そういった実感があることは大きいですね。

── 個人としての課題や今後の展望について教えてください。

まずは、今回の製品における量産開発を成功させることですね。そして、ビットキーのプラットフォームがより広く活用されるようにしたいです。

これまで、面白そうなことがあったら思い切ってそこに飛び込むというやり方をしてきました。ビットキーは事業が面白いので、今携わっていること自体は純粋に楽しみながら、また次のステージで実現させたいことが見つかったときには、さらに力を発揮できるようにしたいと思っています。
開発の中で力を入れられるポイントはいっぱいあるので、たとえばプロジェクトマネジメントに比重を置いて頑張るのもそうですし、設計面をもっと突き詰めて深めておくことも今後役に立つかもしれません。いろんなことをさらに学んでいくつもりです。

◆編集部より

インタビューの様子からは常に冷静に見えていた五十嵐さんですが、ここに至るまでにはきっと予想だにしないエラーなど、多くの困難と対峙してきたはずです。目標に到達するにはどうすればいいのか、ネガティブ思考を逆手にとって逆算していく。プロダクトマネージャーと登用されてもなお、真摯にものづくりと向き合い続ける姿に勇気づけられたインタビューでした。

次のHigh Standard Interviewは、ビットキーのものづくりや技術を知財・法務から支える北代さんのご登場です。どうぞお楽しみに。

※このページの情報は掲載日時点のものです。

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