お酒とのつき合い
どうしてもお酒を飲み過ぎてしまうので、きっぱりとお酒をやめようと決心することもある。いや、もういい年なんだから、いまさら無理にやめることはない。飲む量を適度に減らして、お酒とうまく付き合って行くようにすればいい。と考え直すこともある。
コロナの頃は、外で飲まなくなったのをきっかけに半年くらいお酒を全く飲まなかったこともあったが、いつのまにか飲み始めて、気がつけば毎日飲むようになっていた。毎日飲んで体調を崩して蕁麻疹が再発したり、気持ちが沈んでどうしようもなくなり、今年は平日はできるだけ飲まないようにしている。
お酒との付き合いは、中学生くらいの頃から始まる。父が毎日晩酌していて、「少しだけビール飲んでみるか。」と誘われて口をつけたのが始まりだ。苦くてうまいとも思わなかったけれど、お酒を飲めるようになることが大人に近づいた証のような気がして、無理して飲んでいるうちに飲めるようになった。
親戚のお通夜に親族が集まって食事をしているときに、おじさんに誘われて、ひとつ年上の従兄弟もいっしょにビールを酌み交わしてへべれけになったこともある。「うちの息子に飲ませてこんなに酔っ払わせて、何考えとるんや。」とおじさんと、父が心配して喧嘩しそうになるくらいへべれきになって酔い潰れてしまった。
まかない付きの下宿でひとり暮らしをしていたこともあって、高校3年生の頃には、日常的に缶ビールを飲むようになった。銭湯の帰りに自動販売機で缶ビールを買って下宿の部屋で飲むようになった。今はアルコール類の自動販売機はなくなったが、今から40年前には町中いたるところにビールの自動販売機があって誰でも買えた。
下宿で密かにビールを飲むようになって、困ったのは空き缶の処分だった。部屋のゴミ箱に残しておくと下宿のおばさんに見つかる。バレないように押し入れの天井裏にポンポンと放りあげておいた。
ただ、天井裏に大量の空き缶を残したまま卒業するのは、人間としてダメなような気がして、卒業式の前の晩に天井裏から全て回収して、ゴミ袋3袋分の空き缶を街中の自動販売機の横に置かれているゴミ箱に分散して捨ててまわったのは、恥ずかしい思いでだ。
日常的にビールを飲んでいたこともあって、大学の飲み会の席では滅多なことで酔わなかった。新歓コンパで酔い潰れた先輩を介抱した。大学時代はほぼ毎日、ビールか日本酒を飲んでいた。
就職してからも遅くまで仕事して、夜中の12時過ぎからでも職場の仲間と晩ご飯を食べに行って、ほぼ毎日飲んでいた。12時から飲み始めて3時くらいまで飲んで、それから寝て、翌日は9時には仕事していた。体力あるというかバカだ。お酒がたくさん飲めて、たくさん飲んでも酔わないということが、何か偉いことでもあるかのように思い込んでいた。
今思っても、相当体に無理をさせていたのだが、つらいと思ったことはなかった。若くて体力があったんだろう。お酒飲むことがなんとなくしんどくなってきたのは、50歳を過ぎてからだと思う。
まず、夜遅くまで起きてられなくなった。お酒を飲んだ翌日の気分の沈みようが、どんどん激しくなってきた。飲み会で酔っ払って、楽しく騒げば騒ぐほど翌朝の落ち込みがひどくなる。「なんであんなこと言ったのだろう。バカなことしてしまった。」とウジウジと考え始めるとどんどん落ち込んでいく。
落ち込んで仕事にも行きたくなくなるけど、なんとか仕事に行く。夕方にはくさくさした気分を変えたくて、また酒を飲む。飲み過ぎて翌朝落ち込む。この繰り返し。そうこうしているうちに体調も悪くなる。肝臓に負担をかけるからなのか、深酒が続くと蕁麻疹がでるようになった。飲むと食べるので体重も右肩上がりになる。
だから、コロナで半年間お酒を飲まなかったときは体調がよかった。頭がクリアになって目に入る景色がやたらに鮮やかだった。そのまま止めれればよかったのだが、たまにはいいだろうと飲み始めたら、一日が二日、二日が三日と続いて、気がつけば毎日飲んでいた。
去年は、めまいがするようになるは、頸椎がヘルニアになるわ、気分が落ち込んで常に不機嫌になってしまったりと、日常生活にも支障をきたすようになって、ようやくお酒を控えるようにした。できるだけ平日は飲まないようにしている。金曜日、土曜日、日曜日だけお酒を飲むようにしている。気分が沈むのをなんとかしたくて、15分くらいゆっくりと走ることもある。
ビールなら350ml缶、日本酒なら1合、飲んでも2合まで。ワインは瓶の半分。このくらいが、翌日に負担を残さない適度な量だとわかっているが、調子に乗ると4合くらい飲んでしまう。
同年代の知り合いにも、お酒との付き合い方に苦労して、依存症気味になっている人が何人かいる。わたしなんかよりも、ずっと社交的で愛想が良くて、明るい人から、いっとき、朝からでもお酒を飲まずにいられなくなったことがあると聞かされたこともある。
アルコールは、少しでも飲み続けている限りは、だんだん飲む量が増えてしまう。飲んでいるときは愉快だけれど、翌朝は死にたくなるくらい気持ちが落ち込む。内臓にも負担をかける危険な薬物だということは、身をもって体験している。
それでも、新鮮なお刺身があれば日本酒は飲みたい。いい肉を食べる時は赤ワインを飲みたい。悩ましい。