押しかけスキヤキ
金沢には天狗中田というお肉屋さんのチェーン店がある。地元民は、「天狗の肉」と言えばみんな知っている。その天狗中田が11月1日に117周年と迎えるとのことで、その記念セールを知らせる折込チラシが木曜日の新聞に入っていた。セールの目玉は、すき焼き・しゃぶしゃぶ用の国産和牛100グラム600円。
久しぶりに、すき焼きでもしますかと妻を誘ってみたら、「せっかくの3連休だからお肉とすき焼きの材料と道具を一式もって、母の家に行って3人で食べたらどうだろう。」と言ってくれた。
いつもは、母の様子を確認しに私一人で行って、母にご飯をつくってもらって食べているんだが、たまには、3人とはいえワイワイ話ながら食べるのもよかろうと思い、3連休の初日にやってみることにした。
まずは、近江町市場の天狗中田のお肉屋さんに行く。チラシの効果なのか、たくさんのお客さんが店先に群がっていた。お肉は500グラム購入した。もう、みんな若くないので1人前150グラムもあれば十分だろう。
次に、ネギと春菊を買いに八百屋さんへ行く。店先の一番目立つ場所に、ものすごく高いのから、そこそこ高いものまで松茸が並んでいた。能登産の松茸は一本8千円以上。アメリカやヒマラヤ産のはそれほどでもない。すき焼きに松茸入れるのもいいんじゃないかと、妻と盛り上がり勢いでヒマラヤ産の松茸が5、6本入った箱を買った。1800円。
糸コンと焼き豆腐と卵と締めのうどんは、近江町市場内にある食品スーパー、「世界の食品ダイヤモンド」まとめて買った。
すき焼き用の鍋とカセットコンロ、白菜はあらかじめ車に積んできたので、買い物が済んだらそのまま高速道路にのって、実家に向かった。
季節外れの台風の影響で、高速道路を走っている間、ずっと雨。ワイパーを最速で動かして、ようやく前が見えるくらいのひどい降りだった。
実家についたが、母は買い物にでも出かけたのか不在。すき焼きの準備をしておこうと野菜を切り始める。
すき焼きは各家庭でやり方が様々だ。具材に何を入れるのか、割下をつかうのか、醤油と砂糖と酒を個別に調整しながら入れるのか、妻はすき焼きには白菜は必ず入れると言い張るのだが、私は白菜なんかいれたら水っぽくなって美味しくないんじゃないかと納得いかない。
ネギの切り方は私は3センチくらいの筒切りにしたほうがいいと言うのだが、筒切りにすると、ネギを噛んだときに、煮込んでとろっとした芯の部分がぴゅっと喉の奥の方に飛び出して火傷するので斜め切りにすべきだと言って聞かない。
私としては、斜め切りにするとネギが他の具材と混ざってしまって、ネギをじっくり味わうことができなくなるので、筒切りにしたいのだが許してくれない。今回は私が譲って、白菜入り、ネギは斜め切りのすき焼きとすることになった。
準備ができた頃に母が帰宅。やはり買い物にいってたらしく、我々のためにチョコレートとあられの袋菓子を買ってきてくれた。そこはいくつになっても子供扱いのようだ。
お腹もすいたので、すき焼きに取り掛かる。牛脂を火にかけて鍋全体に馴染ませる。その後に鍋の周縁部にネギを並べる。次に鍋の中央でお肉を焼く。両面焼いて火が通りそうになったら、肉に砂糖、醤油、酒をまぶして味付け。ちょうどいい具合に火が通ったところを、とき卵をくぐらせて食べる。一枚100グラム弱くらいの大きなお肉だったので、3人とも1枚食べただけでかなり満足。
2ラウンド目はお肉も豆腐も糸コンも野菜も全部入れて煮込んでみた。白菜がクタッとなったところに春菊を鍋いっぱいを覆うように入れて、火が通ったところを食べる。
肉の味が白菜にも、焼き豆腐にもしみてうまい。肉は、2枚で十分だった。最後に残った汁にうどんを絡ませて食べた。
妻は夜に友達に会う予定があったので、3時ごろに金沢にもどった。私は
11月の報恩講の準備として、仏具のお磨きと窓ガラスの掃除を済ますために一泊した。
翌朝になっても、前の日のすき焼きの匂いが部屋に残った。そう言えば、私も弟も家にいたころ、家族4人で茶の間で焼肉やすき焼きをすると、3日は匂いが残ったことを思い出した。
母は久しぶりに鍋をかこんですき焼きをしたことがよほど楽しかったようで、妻にLINEでメッセージを送ったようだ。