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映画「さざなみ」“45years”

2015年 ベルリン国際映画祭
コンペティション部門 銀熊賞 ダブル受賞
監督 アンドリュー・ヘイ


女優 シャーロット・ランプリングを知ったのは、
フランス映画の、フランソワ・オゾン監督の
「まぼろし」だった。しかし、この女優さんは、
いい年の重ね方をしているなと感じた。
(こちらも夫婦の物語)

平穏な日々だった。
子供は居ない。
愛犬が一匹。

結婚45周年を迎える、長年連れ添った夫婦の、
ある6日間のお話。

その記念日のパーティーの準備中に、
夫 ジェフ(トム・コートネイ)の元に、
一通の手紙が届く。
妻 ケイト(シャーロット・ランプリング)は、
動揺する…。

男女の恋愛観では、
『男は名前を付けて保存』
『女は上書き保存』

と言われているが、
この映画では、そんな男女の恋愛や、結婚の、
価値観の相違が、良く浮き彫りになっている。

その手紙には、元恋人の女性の(遭難事故で亡くなった)遺体が、50年振りに雪山から、発見された…という報せが…

夫は記憶を辿り、満たされて行くかのように、
自身の殻を守り、
反対に、妻は、不安と知らぬ女性の影と、嫉妬に苛まれる。
(愛している故に…?)

自分達が出会う前の出来事であるし、
しかも、相手はこの世に居ない死者である。
度々、妻は、夫を質問責めにし、夫を咎める。

45年経つのに、此処までの嫉妬心を、隠す事無く
静かに、強く、夫にぶつけるシャーロット・ランプリングの深い演じ方に、感銘した。

何度も冷静になろう…としている場面も、あったが、
反面、その反対の行動をしてしまう女の性か…?

そういえば、私は夫に対して、本気の嫉妬という感情は抱いたことが無い。
何故ならば、寧ろ、人間として、男女交際を真面目にしてきたならば、心に秘めている思いを責められないし、お互い様だよね…と思っている。

でも、一番は、
『色々な経験、歴史があって、今の貴方が優しい人なんだろうと感じてるから、感謝しかないよね(元カノ達に)』
と夫に言ったことを思い出した。

(本人は、『ふ、深いねぇ…』と苦笑い)


劇も終盤…記念日のパーティーが、友人達に囲まれて、穏やかに進行されているが、妻は疑心暗鬼に捕らわれてしまっていた。
夫は妻に感謝の言葉を、心を込めて伝えている。

『あっ…いい雰囲気かも』思ったのも束の間。

青白いライトに照らされながら、楽しげな夫とは
対象的に、チークダンスをする妻の表情は曇っている…

(彼女が死んでなかったら、私じゃなく、
今も隣に居たのは…)
勝敗のつくことが無い葛藤に、その上でも、
どうすることも出来ない現状に刹那さ…
を感じる姿が印象的だった。

この世に居ない死者は、永遠に美化されたまま
より鮮やかに、鮮明に。

そんな理不尽さも、この映画の醍醐味なのかもしれない…



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