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死ぬかと思った…1

父が亡くなって、
ひと月後に、娘を出産した。

新しい命を育て、守る為、
必死の目まぐるしい日々。
赤ちゃんという生き物は、
生命力に溢れている。

今思えば、娘が、
私を助けてくれていたと思う。

悲しみに、ドップリと浸かる時間も
無かった。
皆が寝静まる空間で、ふと思い出し、
複雑な思いに駆られるだけ…。

(でも、あの時、悲しみをしっかりと感じる必要が
あったのだ。私は見落とした。いや、見てなかった)

幼少期に母の死も経験しているし、
父を見送る覚悟もしていたから、
私は、“乗り越えた!”
そう思い込んでいた。


娘が幼稚園に入園し、その前年に生まれた息子が1歳になる頃、私の中で、不調音が響き出した。
最初は鈍く、そして重く、嫌な感じで…

まず食欲を失った。当然、体重も落ちていった。
寝不足に更に、眠れないというトラップに陥っていた。
(それでも耐えた)


ある日の美容室。

耳が遠くて、良く聞こえない。

シャンプー台に横になる。

顔にクロスを掛けられる。

その瞬間、

心臓が張ちきれそうに、

鼓動の音が、速くなる。
(視界を遮ぎられたのがスイッチに)

呼吸が乱れる。

もう耐えられない。無理だ。
飛び起きた私に、美容師が驚いている。

『す、すみません…ちょっと…気分が悪くて』

本当に死ぬかと思った。


この恐怖は一体なんなのか?

要因は、父の亡くなった時の記憶だった。

実は、心の奥に、行き場のない思いを、

ずっと抱えて来た。

目を閉じると…



父の死顔を思い出してしまう…

(父は棺に入るまで、ドライアイスでは無く、
大きなガラス窓の付いた冷蔵庫に入れられていた。
これも怖かった)

そして、棺を閉じる時に、触れた父の頬の冷たさ。

私は、妊婦のせいもあったのか、
悲しみより、
途轍もない恐怖を感じた。

まるで、自分が、その冷蔵庫に入れられたような…
閉塞感。息苦しさ。

怖い。嫌だ。死にたくない。
心が叫び続ける。

死の恐怖。

死神が微笑んでいるよう。


心療内科に受診し、
自分が「パニック障害」だと分かり、
治療を受けることになった。

子供の頃から、俯瞰視野を持って、
自分と外部を客観的に観て来た。
強靭な忍耐で、強く生きて来た。

仕事でも、いつからか、あだ名は、
鋼のメンタルを持つレディ」と言われ、
精神的に参ってしまうなんて、頭をよぎったことも
無かった。

シャンプー台なんかで、死ぬわけもないのに…

私はかなり困惑した。

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#人生


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