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島田くん。

あの日、秋の雨。
服飾系専門学校に通ってた頃。
玄関先に勢いよく走り込んで来た男子、
パーカー姿の島田くんだった。

『おーーギリセーフ!!』息を切らしながらの笑顔。

READY STEADY GO!のパーカー。
色はグレー。
なんで覚えているかと言えば、
その時、
私も同じパーカーの色違い、
ネイビーだったから… 


島田くんは、東京育ちで、実家は恵比寿。
おじいちゃんが、元八百屋さんだったのも
あり、野菜や果物に詳しかった。

付き合って2年の彼女がいて、飲み会や、
クラブの後も、そそくさと帰宅する、
彼女思いの男のはずだった。


ある日のランチルームで遭遇。
甘い缶コーヒーを飲みながら、
私のお弁当箱の中のプチトマトを指差して、

『トマトってさ、ああ観えて、競争激しくてさ、
我先、我先って、必死に赤く綺麗になろうと
頑張って、はやく成長しようってするんだよ』

『へぇー…』と言いながら、プチトマトを頬張る
私を横目に、

『僕、育ててたトマトの葉の裏に、
びっしりとアブラムシを見た瞬間に、
すごい気持ち悪くなって、
ゴミ箱に、丸ごと捨てたんだよね』

悪気もなさそうに、笑う島田くんを見て、
Aちゃんを思い出した。 


彼の彼女は、Aちゃんという
(当時のジュディマリのyukiちゃんみたいな)
小柄な可愛い子だった。

そろそろ一緒に暮らそうとしていた。
一度、家具の下見に一緒に付き添いした時があり、
それは、IDEEのソファ売り場だった。
若さゆえか…?
まあ、2人の意見は合わなかった。 


人間は、似ているよりも、似ていないことに、
惹かれる時がある…という不思議


六本木のクラブでも、島田くんはモテた。
色んな知識と、持ち合わせたルックス、
優しく、人懐っこい性格が、(女好きも…)
とてつもない化学反応を起こして、
フロアで溢れんばかりの女性に囲まれて…
彼は凄かった。
輝いていた。

『よく、やるよなぁ…』
BARから、離れてその光景を眺めていた、萩原くんと私が、目を合わせて、苦笑いしたくらいだ。

無印のボタンを全て付け替えた、カーキ色のシャツが
似合ってた。
(当時、デザイナーズ以外の、市販の服はそのまま着用せずに、自分でカスタマイズするのが当然のブームでした)

『なんか、自分に100%向けられる気持ちが重い』
島田くんの口癖だ。
(男の性かな)


当然、Aちゃんは、どんどん束縛が強くなって、
笑顔が少なくなった。

結局、2人は別れた。

感情の行き違い。

受け止め切れない未熟さ。

思い思われることの重さ。


でもさ、人間の気持ちって、

軽いより、重いものだからね、

島田くん。


今日も雨降り…

今日の夕飯は、ハッシュドポーク。
トマトたっぷりのやつ。

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