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話すことが苦手だ。流れない水のような会話に流されているその瞬間はどうということはない。よく笑い、よく喋る。一人になって、自分の顔に笑顔が張り付いていることに気づく。ひとり机に向かって本を読む。

こういう夜はありがたいことに眠れないから、深夜の、あの寂寞とした孤独を嗅いでたのしむのだ。窓の外を見て、プランクトンの死骸が舞い降りて来ていないかなどと目を凝らすが、生憎私の住んでいる地域ではそのようなことは滅多に起こらない。

今日は「し」で終わる文章を見つけたら床に就くとしよう。

話すことは、すなわち類語反復に落ちいることである。

                  J.L.ボルヘス著『バベルの図書館』
               鼓直訳『伝奇集』所収、岩波文庫刊、p114


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