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セリエA 第26節 ユベントス vs サンプドリア 〜進化を続けるユベントス

サンプドリアとの試合はミッドウィークにELのフライブルグ戦を控えているため、主力を休ませたいところでした。しかし、ポグバ、キエーザがケガ。キーンはピッチで格闘技(クリンチの離れ際にローキックをかます!?)をやらかして40秒で退場したため出場停止と台所事情が苦しいユベントス。しかし、今のユベントスにはNEXT GENがいる。ということで、バレネチェア、ファジョーリ、ミレッティを先発させ、スーレがセリエA初得点を記録して4-2で勝利。2失点はバレネチェアがうまくプレーしていれば防げたもので、今後のための必要経費と言うべきでしょうか。また、ディマリアが出場しなかったことによって、ユベントスのビルドアップのメカニズムがさらに進化したようにも思いました。失点の場面と、ユベントスのビルドアップに絞って思ったことを書いておきたいと思います。

進化するユベントス

ユベントスは5-3-2。ペリン、デシーリオ、ダニーロ、ボヌッチ、ブレーメル、コスティッチ、ファジョーリ、バレネチェア、ラビオ、ミレッティ、ブラホビッチがスタメンだった。後半からはロカテッリ、クアドラードを投入して攻勢を強めた。スコアでも、支配率、シュート数、枠内シュート数、パス本数などのスタッツの上でもサンプドリアを圧倒した試合だったように思う。

今季のユベントスの目玉は、5-3-2ブロックによる堅い守備と前線からディマリアが下りてビルドアップに参加するディマリア・ロール、そして左サイドから高精度のクロスを連発するコスティッチの存在だと思っている。サンプドリア戦でも、堅い守備とコスティッチのクオリティは相変わらず。スーレの得点もコスティッチの柔らかいクロスをブラホビッチが合わせたこぼれ球なので、この試合でもコスティッチは実質2アシスト。攻撃の中心選手となっている。

そして、ディマリア・ロールだ。前線にいるはずのディマリアを「下げる」ことによって中盤でディマリアをフリーにしてボールを運ぶ。今季のユベントスが得意としているビルドアップのメカニズムでボール保持の局面も強化してきた。そして、サンプドリア戦ではさらに進化したビルドアップを見ることができた。サンプドリア戦にディマリアは出場しなかった。しかもアンカーにはセリエA2戦目のバレネチェアが先発していた。ミレッティがディマリアと同じように前線から下がってボールを受けていた。加えて、ラビオが、ファジョーリが、ブラホビッチが下がってくる。理屈としては、コスティッチ、ラビオ、ブラホビッチ、ミレッティ、ファジョーリ、デシーリオのうち5人がが5レーンを埋めてサンプドリアのディフェンスラインの選手を引き付けているため、誰か1人はフリーで動き回れるということになる。中盤の選手は、目の前でユベントスの3バックがボールを回している上、ロカテッリがいるため後方から現れるディマリアを視認してマークにつくのは至難の業だ。逆にディマリアを気にしているようなら、その隙に前線までパスを通されてしまうだろう。

これまではフリーで動いてボールを受ける役割をディマリアに任せていた。しかし、サンプドリア戦では幅をとる役割のコスティッチとデシーリオを除く4人が中盤まで下がってくる役割を分担していたように思う。状況を見て、ディフェンスの選手を引きつける選手と下がってフリーになる選手が入れ替わる。ユベントスの選手の動きの流動性が増し、守備はさらに対応しづらくなっている。ディマリアが下がることがわかっていれば、明確にディマリアにマンマークをつけてしまうことが対策の一つとして考えられる。しかし、誰が下がるかわからないのであれば、対応しづらい。それこそ、オールコートでマンツーマンでつくしかないが、なかなかリスキーな選択となる。ユベントスにはブラホビッチというフィジカルモンスターがいるからだ。特に今季は後方からのボールを収めて、後ろからの当たりをものともせずにキープして味方の上がりを待って展開するプレーが精度を増している。ブラホビッチに対してカバーする選手をつけないとなると、ユベントスはブラホビッチをターゲットに次から次へとパスを放り込んでくるだろう。よほどのCBでない限り、フィジカルで押されてボールを奪えないかもしれない。しかも、ブラホビッチ自身も調子を上げてきているところだ。サンプドリア戦でも、裏抜け、ヘディング、振り向きざま、フリーキックと様々な形からシュートを撃ちまくっていた。いい意味でのガムシャラさが戻ってきている。元々破壊力のある左足を持っているだけに、ストライカーとして怖い存在になりつつある。だからといってブラホビッチのために守備に人数を割けば、下がっていく選手を捕まえきれずにユベントスにボールを握られてしまう。しかも下がる選手がディマリアに限らないとすれば、あらゆる場面で相手守備の意表を突いたビルドアップを仕掛けることができる。

バレネチェアの課題

セリエAデビュー2戦目を迎えたバレネチェア。サイズも大きく、ボールの扱いも落ち着いている。ロカテッリの代役は十分務まる選手だが、サンプドリア戦では2失点に関与してしまった。バレネチェアがうまくプレーしていれば、おそらく防げたと思われる。そのシーンを振り返ってみよう。

1失点目について。スタートは、サンプドリアのボール保持をユベントスが許容してハイプレスには出ていない場面だった。ブラホビッチも、ミレッティもサンプドリアのCBにはプレスに行っていなかった。それにも関わらず、バレネチェアは相手のボランチの選手をマークしようと前に出てしまっていた。これで守備のバランスが崩れてしまった。ファジョーリの背後に入り込んだ選手にパスが入り、ブレメールが前に出たがタイミングが遅れてターンで入れ替わられてしまった。しかし、バレネチェアが本来いるべきポジション(ファジョーリの斜め後ろ、いわゆるディアゴナーレを組める位置)にいれば、ブレーメルと入れ替わった選手を潰せていたはずだ。前線の選手の意図を理解して、ハイプレスに行くのか、ステイして守備ブロックを維持するのか、判断の精度を高める必要がある。

2失点目について。これは、ユベントスがサンプドリアのハイプレスを剥がして攻撃に出たところを逆にカウンターの発動を許してしまった。ラビオとミレッティのパス交換のところでうまくコスティッチまでボールを運んで欲しかったところではある。ただ、攻撃がうまくいかないこともあるのは当然だ。問題はその後の対応だった。サンプドリアがクリアしたボールを収めようとする選手の近くにダニーロがいたにも関わらず、フリーでトラップを許してしまう。そして、斜め後ろに構えていた選手へパスが出て、バレネチェアはその選手のマークに出る。このバレネチェアのプレーによってユベントスは後方の人数が足りなくなってしまった。バレネチェアはマークについた選手を潰しきれずに右サイドを駆け上がる選手へパスが出て、そのまま持ち上がって後方から走り込んだデュリチッチがショートクロスを叩き込んだ。ダニーロがやらかした感もあるが、バレネチェアが無理に前に出ずに下がりながら守備の人数を確保して対応していれば、少なくともディフェンスラインの前を開けることはなかった。

おそらく、ロカテッリならば的確なポジショニングと判断で失点を防ぐことはできていたのではないだろうか。前に出るばかりがいい守備ではない。守備は組織で行うものだ。チームとしての狙いとは外れた判断やポジショニングをしてしまうと、そこから守備は決壊する。味方の位置やボールの状況から判断して、ステイすべきところはステイする。難しい判断が求められるが、バレネチェアがロカテッリからポジションを奪うなら、必須となる課題となる。

フライブルグ戦に向けて

ここにきて怪我人が続出しているユベントス。キエーザ、ポグバ、ミリクが離脱しており、ディマリアがも使えないようだ。ブラホビッチとミレッティを使った5-3-2で臨むことが予想される。さらにはサンドロ、ポグバ、ボヌッチもアウト。中盤はロカテッリ、ラビオ、ファジョーリのセットしかないだろう。ウイングバックも左はコスティッチの起用が確実で、右はクアドラードかデシーリオの選択となる。CBもブレーメルとダニーロはサンプドリア戦を見る限り、動きは重く連戦の疲労が見えたように思う。しかし、2人には先発で出てもらわなければいけない。ガッティはまだ経験が浅く判断に迷いがある。消去法でルガーニが先発となるだろう。万が一リードされてリスク覚悟で点を取りに行かなければならなくなったとしても、使える交替カードが限られる上に、クオリティも先発の選手よりも落ちる。追いかける展開は避けたいところだ。サンプドリア戦で見せた流動的なディマリア・ロールの本格稼働によってボール保持は安定するだろう。ラビオを筆頭にディフェンスラインの裏を狙うプレーも増えてきており、ボール保持をチャンスに結びつけることもできると予想する。あとはチャンスをゴールへと繋げるかどうか。ブラホビッチに期待がかかる。また、カウンターへの対応は細心の注意を払わなければならない。1stレグの後のアッレグリは、フライブルグはユベントスにスペースを与えるリスクを冒してでも攻撃に出る必要があるだろうとコメントしていた。堅く守ってカウンターで仕留めるプランもあり得る。それでも、ユベントスはボールを保持するだけのクオリティとメカニズムは持っているだけに、敢えてフライブルグにボールを持たせるのか。まずはその点に注目しつつ、当日を楽しみに待ちたい。

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