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セリエA 第10節 ユベントス vs ヴェローナ 〜夢を叶えた少年

ヴェローナとのホームゲームは、30本のシュートを放つもなかなか得点につながらず、キーンのゴールも2度VARで取り消され、引き分けかと思われた終了間際にカンビアソが劇的なゴールを決めて1-0で勝利。ユベントスの選手と一緒に入場したカンビアソの少年時代の写真がSNSにアップされており、夢の舞台に辿り着いただけでなく、愛するチームを暫定ながら首位に押し上げるゴールを決めたことに少なからず感動しました。

試合を支配したユベントス

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、ウェア、ガッティ、ブレーメル、ルガーニ、コスティッチ、マッケニー、ロカテッリ、ラビオ、キーン、ブラホビッチ。いつもの5-3-2でかつコスティッチを起用してきたものの、狙いはボールを保持して試合をコントロールすることでした。5-3-2をベースフォーメーションとするヴェローナに対し、3バックが互いに距離をとることでハイプレスを牽制。加えてヴェローナの2トップがロカテッリを消すことを優先して3バックへのプレスにそこまで出てこなかったこともあり、ユベントスがボールを握る展開になりました。

ただし、ラビオとマッケニーはフォワードを追い越して飛び出す意識はなかったため、単純に5バックに対して2トップと両WBで数的不利な状況下で攻撃を仕掛けていたユベントス。キーンとブラホビッチは相手ディフェンスラインに対して裏を狙う素振りもなく、守備者の前で受けて個人技で打開するしかない攻撃を繰り返していました。5-3-2のミラーマッチになる以上、引いて守ることになることは想定していたであろうヴェローナの守備は堅く、得点をとることは難しい状況でした。特にゴール前の密度は高く、ペナルティエリア内でユベントスが使えるスペースはほとんどありませんでした。キーンが個人で打開してねじ込んだゴールも恐ろしく厳密なオフサイドを取られてVARにより取り消しに。

その後はコスティッチとラビオが連携して、WBを翻弄して左サイドを崩してチャンスを作っていましたが、キーンやブラホビッチのシュートは枠外へ。ヴェローナの中盤がとにかく中を固めることを優先してサイドまで出てこないところをラビオのオーバーラップを使って数的優位を作り出す狙いは良かったと思います。ただ、フィニッシュの精度は相変わらずの課題でしょう。

「何回クロスを合わせれば決めてくれるんだ?」

コスティッチの叫びが聞こえてくるようでした。それでも、後半のキーンの幻のゴールの時に誰よりも派手にガッツポーズをしていたコスティッチ。やっぱりナイスガイですね!

そして、前半は意図的にCBとロカテッリを後方に固定していたように思います。狙いはヴェローナのカウンター対策。前線が多少数的不利になろうが、被カウンターに備えて4人を残しておくことでリスクを最小限に止めていました。カウンターの際に基点となるヴェローナの2トップに対して必ず1人が競り合いに行き、ボールが溢れても残った3人で対応してスピードを吸収して遅らせる。危険なカウンターを発動させることはなく、ヴェローナの活路を断ち切っていました。その対価として攻撃の人数低下を受け入れ、尚且つ選手の質で打開できる(かもしれない)という計算をアッレグリはしていたように思います。少なくとも、前半はこのバランスで十分だという判断はしていたのではないでしょうか。

リスクを取りに行った後半

さて、得点以外はユベントスの思惑通りに進んだであろう前半から、得点をとりに行かなければならなくなった後半です。ウェア→ミレッティは、おそらくウェアのコンディションの問題ではないかと思います。前半終了間際にはウェアはやや動きの量が落ちていました。アクシデントがあったかもしれません。マッケニーがウイングバックに出て、ミレッティがインサイドハーフに入りました。ミレッティはロカテッリと並んで今季のユベントスにおいて創造性を担う選手の1人です。ミレッティとマッケニーはほとんどポジションチェンジを行わない上、ミレッティはサイドの選手と連携してサイドを崩すというよりはライン間に常駐して中を攻略することを狙います。そのことにより、前半に比べて後方から中へのパスも通るようになり、ヴェローナの守備の意識が中央によるため外も開いてくるようになりました。ヴェローナの守備もユベントスの攻撃が中を経由してくるのか、外からクロスを狙うのか絞りきれなくなったように見えました。この変化に加えて、ガッティの攻め上がりを解禁。攻撃の人数を増やしてゴールに迫る意志を見せます。右サイドにマッケニー、後ろからガッティが上がってきてミレッティがフリーロール。ロカテッリもペナルティエリア前まで上がるようになり、この動きで右サイドからチャンスを作り始めます。

こうなると当然、カウンターをケアする人数はマイナス1となるため、被カウンターのリスクは高まります。それでもヴェローナを押し込み、守備ブロックを下げさせてカウンター要員を2トップに限定させればルガーニとブレーメルなら抑え込めるしロカテッリのカバーも間に合うという計算はあったのではないでしょうか。それなら前半からガッティの攻め上がりを繰り出していけばいいのですが、厳格なリスク管理こそアッレグリのアッレグリたる所以のような気がします。さらに守備陣にケガ人を抱えている現状に加え、キエーザ、カンビアソ、ミリクらベンチに置いている選手の質を考えても、選手交代でリスクを取りに行く方が選手起用の面からも、選手のモチベーションの面からも良いと思います。守備固めのカードよりも得点を狙いに行くカードをはるかに多く手元に残しているのですから。ヴェローナ戦では、キエーザ、カンビアソ、ミリク、ユルディズを次々と投入して「点を取るぞ」というメッセージを発信し続けました。カンビアソとキエーザ投入以降は左からキエーザが仕掛ける形も多用しつつさらに的を絞らせない攻撃を展開し、ヴェローナゴールに迫りました。キエーザ、ユルディズには決定機が来ましたし、ミレッティから攻め上がったガッティにパスが通ってガッティのクロスからミリクのシュート→カンビアソが押し込むといったように、交代策や戦術変更が当たってアディショナルタイムに勝ち越しに成功しました。小さい頃からユベンティーノだったカンビアソの劇的なゴールだったので、より感情的な試合になりました。冷静に試合を見ればユベントスがボール保持によって押し込み数多くのチャンスを作り、尚且つ冷静なリスク管理でカウンターをケアして攻守に渡って試合を支配しました。ほぼパーフェクトなゲームと言っても過言ではないでしょう。

次戦はトップスピードでハイプレスをかけてくるフィオレンティーナが相手です。時間とスペースを奪いにくるハイプレスを主軸とするのはユベントスが苦手とするタイプのチーム。ボール保持に意欲を見せる今季の取り組みの進捗状況を測るには絶好の相手と言えます。敢えて相手に持たせるのも手ですが、せっかくならボールを保持してぶつかってみてほしいところです。

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