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セリエA 第28節 ユベントス vs アタランタ 〜若返るアッレグリスタイル

アタランタとのホームゲームは2-2の引き分け。またまた勝ち切れなかったことで各方面忙しいようですが、シュート数、ボール支配率、ゴール期待値はアタランタを上回っています。勝っていた時期のユベントスを「つまらない」と言っていた人たちは最近の試合をどう見ているのでしょうか?結果は出ていないけれども面白い試合をしていると思いますが…?

そして、勝ち切れなかったことには原因があります。その点を修正できれば、面白いし勝てるサッカーをユベントスがやってくれるかもしれません。今は結果は出ていないにしても、期待できる内容だと思っています。

高い位置から守備に出る

ナポリ戦から顕著になっている変化として、守備開始位置があります。守備を開始するときの2トップの位置に注目すると、敵陣の半ばにポジションをとっています。相手CBにプレスをかけに行き、ボールを早く離すように仕向けています。そして、ボールホルダー周辺の選手にもマンマークでついて、ボールが出た先でボール回収を狙います。うまく繋がれたら引いて構える守備に移行しますが、相手のボール保持を短くしてボールを奪回することを狙って守備をしています。この守備によって相手のボール保持の時間を減らすことに成功したことが高い保持率につながっています。

ただ、ユベントスの場合は保持率を高めることを狙っているのではなく、ボールを奪回して素早く縦にボールを送ることを狙っているように見えます。ボールを奪って相手守備陣系が整う前に、相手陣内にスペースがあるうちにキエーザやブラホビッチにボールを預け、彼らのクオリティを発揮させて決定機を作り出すことが最大の狙いでしょう。このカウンターが止められた時にボールを保持して攻撃するというプランでしょう。ボール保持を攻撃の第一選択とするなら、ユルディズを使ってくるはずです。しかし、ここ数試合はキエーザをスタメンで使っています。キエーザはボール保持の際は左サイドに張り出してボールを待ちます。ボール保持で詰まった時に下がってボールを引き取るプレーはあまり見せません。中盤まで降りてきてボールを引き取って運ぶプレーを得意とするのはユルディズの方です。キエーザをスタメンで使っているということは、彼の爆発的なスピードとドリブルを活かしてカウンターを狙っているはずです。実際にカウンターからキエーザがドリブルで左サイドを駆け上がってチャンスを作った場面が何度もありました。

ボールホルダーにトップスピードで突撃するわけではなく、ドリブルで剥がされないようにスピードと距離を調整しながら寄せるように微調整されており、オーソドックスなハイプレスのかけ方です。ただ、リードされている展開だったことが大きく絡んでいるのでしょうが、このハイプレスを守備の第一選択かつスタンダードと設定したまま試合を終えたことは大きな収穫だと思います。

引いて構える守備に課題

ハイプレスを軸にいい試合運びをしていたと思います。サインプレーで決められた先制点はパシャリッチの判断力を誉めるべきでしょう。昨季もFKでゴラッソを叩き込まれているので、パシャリッチのシュートに集中していたところを見事に裏をかかれました。その後、複数人が絡んだ素晴らしい攻撃で逆転したにも関わらず勝ちきれなかったのは、引いて構える守備に課題を抱えているからです。

1つは守備の設計上の問題です。おそらく、ブレーメルはスカマッカをマークするタスクを与えられていました。スカマッカは高さに加えて機動力も兼ね備えているためゴール前で待つよりは動き回ってチャンスを伺うプレーをしています。ブレーメルはスカマッカの動きについていって仕事をさせませんでしたが、ブレーメルが動いたことによって守備ラインの他の選手が動けなくなってしまいました。5バックから2人が動いてしまえば、守備ラインがスカスカになってしまうからです。マッケニーがジムシティにプレスに出ていく設計になっている以上、ガッティは前に出てアタランタの中盤(ほとんどの場合はコープマイナース)を捕まえに出て行かなければいけなかったはずです。そうしないとマッケニーの裏のライン間を使われてしまうからです。しかし、ブレーメルがスカマッカについて行っているためにガッティが前に出ることを躊躇していました。試合を通じて何度もコープマイナースがライン間でボールを受けてチャンスメイクするシーンが見られました。前線に機動力のあるタイプを並べて守備を撹乱させるガスペリーニの狙いが当たったとも言えますが、試合途中でもマークを指定せずゾーンディフェンスで守るよう変更するなど対策は打てたと思います。

2つ目はキエーザの守備タスクの整理です。2失点目は、狭いところを通してきたパシャリッチの技術とCBながらライン間に入り込んで絶妙のスルーパスを出したジムシティのプレーが素晴らしかったと思います。戸田さんがよく言っていましたが、ボールは小さいのでいくらゲートを閉めてもボールは抜けて行きます。そのパスを出したパシャリッチのクオリティは認めないわけにはいかないでしょう。ただ、前述と通りブレーメルが左に引っ張られたことで守備ラインがボールサイドに寄っていなかったところにユベントスのミスがあります。さらにユベントスの中盤もロカテッリの左側は大きなスペースがあり、ロカテッリの背後をカバーする選手がいませんでした。この時、ロカテッリの隣にはキエーザが下がってきており、本来ならロカテッリのカバーに回るはずのミレッティは左サイドにいました。このタイミングで最も攻撃的な選手が中盤に下がって守備をして、なおかつボールホルダーに出て行った選手のカバーに回らなければいけない状態は好ましくありません。そもそも中盤の守備のタスクをキエーザに任せるべきではないでしょう。せめて5-4-1の4の左に降りてくる程度の比較的難しくない守備のタスクを割り振らないといけないと思います。カウンターの際に相手ゴールから遠ざかってしまいますし、キエーザ自身の守備戦術への理解度も考えれば守備のタスクはできるだけ減らす方がいいでしょう。仮にミレッティがロカテッリの隣にいたとしても失点したと思いますが、打つべき手は全て打っておく必要があると思います。

アッレグリは守備の構築については欧州屈指の監督だと思います。引いて構える守備を修正して、このハイプレス路線を継続してくれれば残り10試合でラストスパートをかけて行けるのではないかと感じています。ハイプレスをかけてボールを奪回して何度も敵陣に迫るプレーはとても魅力的でした。アタランタ戦ではライン間をガンガン使われてしまいましたが、そのおかげでアタランタにもチャンスがあって、ある意味で今季最もスペクタクルな試合だったかもしれません。前節は負けはしましたが試合内容はナポリを圧倒しており、ハイプレス路線を継続してほしいと思います。



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