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セリエA 第30節 ユベントス vs サレルニターナ 〜ディバラ放出の是非


今更ながら、サレルニターナ戦を簡単に振り返りつつディバラの去就問題について考えてみます。

ダニーロのボランチ起用

サレルニターナとの戦力差、力量の差からしてユベントスの勝利は当然。後2点くらいはとれていてもよかった。ロカテッリが新型コロナの陽性反応を示したことでベンチ外に。ザカリア、マッケニー、ベルナルデスキの負傷によって火の車の中盤にはもう、ラビオとアルトゥールしか残っていない。アッレグリはダニーロを中盤で起用してきた。アルトゥール、ダニーロ、ラビオで中盤を組んできたことで、ロカテッリがいなかったことで、慢性的に前線の中央で人数不足に陥った。ディバラの先制点の場面は、クアドラード、ブラホビッチ、ディバラが右サイドに集結して局地的に人数をかけて攻撃することができたが、おそらくたまたまだろう。ブラホビッチはサイドに流れる。ディバラはボールを触りに下がりたがる。意図的に集結するシーンはその後はなかった。ロカテッリがいれば主に右ハーフスペースに上がってきてライン間でボールを受けようとしてくれる。ライン間を使って攻撃を仕掛けることもできるし、ロカテッリが敵を引きつけたところで空いたスペースを使うこともできる。しかし、アルトゥール、ダニーロはハーフスペースまで上がることがなかった。結局、後ろに下がるディバラとサイドに流れるブラホビッチにアウトサイドで輝くクアドラードの取り合わせは悪く、時間が経つにつれて攻撃には手詰まり感が出てきてしまった。

ダニーロのボランチ起用は機能したとは言えないだろう。

ディバラの放出報道について

サレルニターナ戦の後、ディバラとユベントスの契約延長交渉決裂の報道が出た。さらにユベントス幹部がブラホビッチの獲得によってディバラはプロジェクトの中心ではなくなったというコメントを出したようだ。ディバラは今夏フリーで移籍するのが既定路線として報道されている。ディバラは意外とインテルが合うのではないかと思っているが、今回はユベントス目線からディバラ放出の是非について考えてみたい。

サレルニターナ戦の得点で見たように、ディバラのクイックネスはユベントスではトップだ。トラップからシュートまでの速さはユベントスの他の選手にはない。それどころか世界を見渡してもディバラより上はメッシくらいしかいないのではないだろうか。ディバラでなかったら、ニアサイドを抜いてゴールにはならなかったはずだ。他の選手だったらディフェンダーのブロックが間に合っていただろう。

さて、世界でも随一のクイックネスを誇るディバラをフリーで手放すのは得策なのか?

もちろん、移籍金は欲しいところだろうが、ディバラの年俸を削減できるということだけでも財政的にはプラスになる。代役が用意できるのであれば放出もアリとなるのだろう。例えば、アディダスのスパイク・コパの広告塔を務めていたり、モデルとしても活躍するディバラの知名度なども考慮したらディバラがいることでユベントスに入る金額は変わってくるのかも知れない。その辺りの計算はよくわからないところなので、ユベントスの戦力としての価値に特化して考えてみる。

問題は、ユベントスの攻撃陣にディバラが必要不可欠かどうかだ。現状、ユベントスが抱えるFWの選手たちは、ブラホビッチ、モラタ、ケーン、カイオ・ジョルジ、ベルナルデスキ、クアドラード、アケ、キエーザ。ブラホビッチとクアドラード、アケの放出はないだろう。ベルナルデスキには移籍の報道が出ている。加えてディバラ、モラタまで移籍するとしたら前線の選択肢が狭くなってしまう。ディバラ放出を既定路線だとすると、ベルナルデスキかモラタは残すのかもしれない。ブラホビッチに90億円以上つぎ込んだこともあって、新たな移籍金が必要な選手は獲りにくい可能性がある。アッレグリが来季も続投なら、試合中に4バックと5バックを使い分ける守備が継続されるだろう。右WGはクアドラードが第一選択になる可能性が高い。CFは当然ブラホビッチが軸になるだろう。今季はモラタがブラホビッチも組むことが多くなっているが、キエーザも負傷から戻ってきたらブラホビッチとのコンビを試されるはずだ。ケーンはブラホビッチのバックアップとなるかもしれない。より攻撃的に行くなら、クアドラードではなくキエーザを右で使ってブラホビッチとモラタと3トップを組ませることもできる。ベルナルデスキが移籍するなら左アウトサイドに張れる選手がいなくなってしまうが、ペッレグリーニかデシーリオを左SBに使って高いポジションを取らせればいいと考えることもできる。今季は左アウトサイドはSBが使い、右アウトサイドはクアドラードが使うというバランス型の配置をメインとしている。

中盤の補強が優先

つまり、ユベントスはディバラが移籍してもおそらく困らない。むしろ、ディバラの放出によって浮くディバラの年俸を、これまたフリー移籍の噂が絶えないポグバの年俸に充てられるなら戦力的な収支は大幅なプラスになるだろう。ここまで、ユベントスは中盤のクオリティを上げられずに苦戦している。ロカテッリはアンカーに入っても、CHに入っても及第点以上の活躍を計算できる。シーズン後半はアルトゥールをアンカーで起用してロカテッリをCHで起用する試合が増えている。そのことによってライン間にロカテッリが上がって相手の守備陣を牽制してくれるおかげで効果的な攻撃を行う基盤はできている。しかし、アルトゥールはボールコントロールとパスを散らすことによってボール保持には貢献しているが縦パスを狙う機会が少なく、ロカテッリやモラタ、ブラホビッチにボールが入らない。守備のことを考えても、前線への配球のことを考えても、現メンバーではロカテッリをアンカーで使いたい。その意味で、ジョルジーニョの獲得の噂があるのは理解できる。ジョルジーニョが獲得できるなら、ロカテッリをCHに上げたとしても後方からの効果的なパスの供給を計算できる。

もしくは、ポグバが来るなら、ロカテッリをアンカーに固定して、ポグバとマッケニーをCHで使うことができる。2人ともライン間に位置してボールを引き出すことができる。ロカテッリ、デリフト、ルガーニ、ボヌッチはライン間や前線へ鋭い縦パスを付けることができる。ロカテッリからブラホビッチに縦パスが通って、落としのボールをポグバがミドルシュート。といったような魅力的かつ効果的な攻撃を展開できるだろう。ポグバは戦術理解度が高く、守備でも貢献できる選手だ。かつてユベントスに所属していた時には、バイエルンとの試合では5-4-1と4-4-2を試合中に可変させる守備に対応してみせた。4-4-2の時は2の一枚として、5-4-1の時は4の左としてポジショニングを入れ替えてプレーし、バイエルンを追い詰めることに貢献した。ポグバをスカッドに加えることができれば、中盤のクオリティが上がることは間違いない。

いずれにせよ、キエーザの復帰の時期にもよるが、ディバラを放出することによるデメリットはそこまで大きくはなさそうだ。思い返せばディバラを中心に据えたチーム作りをスタートさせたけれども、度重なる怪我によってチームの方向性を何度も変更してきたことが今季の苦戦に繋がっている。ブラホビッチやロカテッリ、デリフトら稼働率の高い若手を中心としたプロジェクトへの転換は合理的だろう。むしろディバラ放出によって浮く年俸分でポグバを招き入れることができればチームとしてはワンランク上を目指せるのではないか。もはやディバラ放出は既定路線となりつつある。今後の注目は、ユベントスが誰を補強するかだろう。


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