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セリエA 第3節 エンポリ vs ユベントス 〜インテル・トリノ

エンポリとのアウェーゲームは0-2で勝利しました。試合内容は危なげないもので、エンポリの枠内シュートを0に抑えてゲームを締め括りました。ユベントスは2節までとは異なる戦い方をしており、試合をうまくコントロールできたのではないかと思います。エンポリの調子が上がらないということもあるとは思いますが、第3節の変化を振り返っておきます。

コスティッチとカンビアソ

ユベントスのスタメンは、ペリン、マッケニー、ガッティ、ブレーメル、ダニーロ、コスティッチ、ミレッティ、ロカテッリ、ラビオ、キエーザ、ブラホビッチ。定番となっている5-3-2でスタートしました。マッケニーは中盤だけではなくウイングバックのバックアップとしても計算されているのでしょう。変化としては、コスティッチとガッティの起用です。サンドロに替えてガッティを起用してダニーロを左CBへ。カンビアソに替えてコスティッチを左WBで起用してきました。この2つの変化は戦術的に大きな変化をもたらしました。

それは、ポジションチェンジをしないことです。キエーザは左サイドに開いてボールを足元で受けてドリブルを仕掛けるプレーを好みます。必然的にボール保持時には左サイドに張り出すポジションをとります。カンビアソはその動きに合わせて中にポジションを移して間受けを狙っていました。しかし、コスティッチは中への移動をしませんでした。昨季からコスティッチとキエーザが同時起用された時は、コスティッチは低い位置に留まり、キエーザとポジションが重ならないようにしていました。これによってボール保持時にコスティッチが高い位置に出られなくなりましたが、低い位置でボールの逃げ道となっていました。また、キエーザがドリブルを開始してアウトサイドにスペースができたら、コスティッチが駆け上がりサポートに入っていました。キエーザとコスティッチのバランスの取り方は、タイミングを見て追い越すという縦の動きでコスティッチがキエーザをサポートするというものでした。ボール保持時の左サイドの動きが2節までの試合と全く異なっていました。

では、本来は中盤の選手であるマッケニーがいる右サイドはどうだったのか。結論から言えば、マッケニーも上下動をメインとした縦の動きが多くなっていました。それは、同サイドにミレッティとガッティがいたからでしょう。ミレッティは相手中盤の選手の背後にポジションをとってボールを受けて攻撃を仕掛けるプレーに特徴があります。この試合でもエンポリの中盤ラインの背後にポジションをとって間受けを狙っていました。そして、右CBに入ったガッティはサンドロと違い、サイドにポジションをとってゲームメイクしたり、ドリブルで駆け上がるようなタイプではありません。いわゆる右ハーフスペースにポジションをとってパスや迫力のあるドリブルでボールを前進させるプレーをメインとします。となると、右サイドの幅をとるタスクはマッケニーが担うことになります。右サイドもポジションチェンジではなく、守備時の定位置から駆け上がるプレーが多くなりました。

定位置攻撃について

さて、5-3-2を基本システムとして、その定位置から前に出ていく攻撃を仕掛けるスタイルは、コンテ以降のインテルを彷彿とさせます。このスタイルは、攻撃における意外性は選手個々のスキルに依存する代わりに守備時の混乱が起きないという特徴があります。攻撃に出ても、守備時にはそのまま真っ直ぐ下がってくれば守備の定位置に戻れますから。逆に、攻撃時にポジションを入れ替えることがないので、ポジショニングで相手の守備を混乱させることはできません。しっかりと守られれば崩し切ることは困難になります。だからこそ選手の質で上回るか、トランジションの素早さで先手を取る必要が出てきます。コンテのインテルは前線にルカクとラウタロを置き、アシュリー・ヤング、ビダル、バレッラ、ハキミと言った走れる選手を並べていました。さらにCBも攻め上がらせて攻撃に迫力をプラス。そのチームを引き継いだシモーネ・インザーギ監督もウイングバックにドンフリースとディマルコを揃えて継続路線を進んでいます。

そして、3節のユベントスです。前線にはブラホビッチとキエーザ。セリエAを見渡しても魅力的な2トップです。フィジカルと左足の破壊力を持ったブラホビッチにスピードで勝負するキエーザのコンビは、今季こそ大爆発を期待したいところです。ウイングバックにコスティッチとマッケニー、CHにラビオとミレッティを並べて走れる選手を揃えてきました。特にコスティッチは昨季からポジティブトランジションの速さとスプリントのかけ方は頭ひとつ抜け出ている印象です。カウンターを発動したら、必ずと言っていいほどコスティッチはペナルティエリア付近まで走ってきています。昨季の12アシストはこのスプリント力と絶対にサボらないメンタルに支えられていると思っています。ガッティとダニーロも積極的に敵陣深くまで攻め込む姿はまさにインテル。セットプレーで先制し、CBの攻め上がりを使ってPK獲得。ブラホビッチがPKを外してしまいましたが、乱れが見えない堅い5-3-2ブロックで中央への侵入を許さず、クロスは悉く跳ね返して危なげない試合運びをしている中、ロングカウンターをキエーザが沈めて2-0。完璧な試合運びだったと思います。

このスタイルのチョイスが、コスティッチやマッケニーを起用するところから来ているのか、アッレグリの戦術的な選択なのかはわかりません。しかし、このメンバーで行くなら、前節までのポジションチェンジを多用したポゼッションよりハマるだろうと思います。ボローニャ戦を見ても、特にカンビアソを使ったポジションチェンジの隙をつかれたカウンターでサンドロがサイドに吊り出された時はなかなか危険な場面を作られていました。守備から試合に入るのであれば、エンポリ戦のようなスタイルもしくはメンバーを組むのはアリでしょう。何より、複数のスタイルを保持していることはアドバンテージと言えるでしょう。あとは、コスティッチを使ってもポジションチェンジを駆使したポゼッションができるのか。もしくはカンビアソを使いながら3節みたいな戦い方を見せられるのか。メンバーを変えずにスタイルを変化させられるなら、様々な相手や状況にも対応できるようになります。

さて、次節は王者ナポリを下したラツィオとぶつかります。同じ5-3-2でもどのようなスタイルで試合に入るのか。まずはその部分を楽しみに、試合を待ちたいと思います。

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