見出し画像

セリエA 第29節 ラツィオ vs ユベントス 〜4-4-2システムの是非

ラツィオとのアウェーゲームは1-2で敗戦。他のチームもコケていただけに勝ち点差を詰めるチャンスだったのですが、残念ながらユベントス自らそのチャンスを逃す形となりました。最も影響していたのはアッレグリ不在。体調不良によって、と報道されていましたが、勝負所なので出来ればベンチにいて欲しかったところです。ここは他もコケていたので離されなくてよかったとプラスに解釈するしかないでしょう。痛恨の敗戦となった原因はコスティッチを上げた4-4-2ブロック守備にあります。この試合では、コスティッチが上がった裏を使われて失点しています。しかし、その他の部分でプラスがあり、トータルで期待値がプラスなら悪手とは言えません。今回は、コスティッチを一列上げた4-4-2を採用したことの是非について考えてみましょう。

ラツィオとの関係

これまで5-3-2をベースに戦ってきたユベントスが、ラツィオ戦にはコスティッチを一列上げた4-4-2の形になっている時間帯が多かった。明らかに立ち位置がこれまでとは違う。となると、ラツィオ対策という意味合いが強いと推測できる。コスティッチを上げる選択をした理由がラツィオにあるなら、まずはラツィオについて考えてみる必要があるだろう。

ビルドアップ対策

ラツィオは4-3-3をベースに戦う。ビルドアップも4バックで行うが、左右でメカニズムは異なっていた。右サイドはサイドバックが低い位置で後方でのボール保持に関与する。サイド高い位置にはフェリペ・アンデルソンやミリンコビッチサビッチが構えており、ポジションチェンジはほとんどなかった。一方の左サイドは、ルイス・アルベルトがCBとSBの間に降りてきてSBを押し上げるプレーを多用していた。ルイス・アルベルトは元々いい選手だったが、さらにギアを上げている印象だった。低い位置からビルドアップに関与したかと思えば、味方がボールを保持している間にスルスルとポジションを上げてフィニッシュワークにまで関与。ラツィオで最も危険なプレイヤーだった。

このラツィオのビルドアップに対して、ユベントスはルイス・アルベルトにファジョーリをつけて、上がってくる左SBはクアドラードがケアするように守備を設計した。ルイス・アルベルトを抑え込むためにも、機動力とスタミナを兼備したファジョーリをマークにつけるのは悪くない。しかし、それでは低い位置に残る2CBと右SBに対して2トップが数的不利に陥り、簡単に前進を許してしまう。そこでコスティッチを1列上げて右SBに当てることでラツィオの前進を阻害しようとしたのではないかと推測する。つまり、ハイプレスもしくはミドルプレスをベースとした守備のプランを持って試合に臨んだということなのだろう。

ユベントスの問題

しかし、前半はラツィオに押し込まれ、ハイプレスやミドルプレスは上手くハマらなかった。コスティッチのマークが遅れることが多かったことがその一因にあるように思う。1つはコスティッチのコンディションが上がりきっていないこと。インターナショナルマッチウィークに負傷していた中、インテル戦から出場している。コンディションが万全であろうはずがない。もう1つは、これまでのタスクとは異なること。いくら世界のトップレベルの選手でも、突然タスクが変更されると対応するのが難しいだろう。これまでは5バックを維持して下がっていたところを前に出ていかなければならないのだから。

ただ、用意してきたプランがうまく行かないことはある。問題なのは、4-4-2ハイプレスもしくはミドルプレスがうまく機能していないにも関わらず、4-4-2を維持したままローブロックを敷いたことだ。ラツィオはゾーン3では3トップに加えてルイス・アルベルトとミリンコビッチサビッチが飛び込んでくる。少なくとも5人の選手がフィニッシュワークに絡んでくるのだから、押し込まれてローブロックを敷くのなら5バックにすれば良かった。WBを上げ下げして5バックと4バックを使い分ける守備はユベントスも採用していたはずだ。

押し込まれた時になぜ、コスティッチを下げさせなかったのか。

ラツィオの2点目は、中盤でボールを奪い合った中でラツィオに溢れたボールを繋がれたもので、ラツィオの素早いカウンターを褒めた方がいいだろう。ロカテッリがパスカットできる位置にいて欲しいところではあるが…。

問題は1点目だ。サンドロの転倒がダイブと取られたのだろうし、サンドロのプレーは責められるべきだと思う。しかし、得点はラツィオのボール保持からの流れで入れられたクロスによるもので、コスティッチをディフェンスラインに下げる時間は十分にあった。コスティッチを下げていれば、ミリンコビッチサビッチに明確にコスティッチがマークにつけただろうと思う。それでもシュートを決められていたかもしれないが、少なくともあれだけフリーにすることはなかったはずだ。

4-4-2の是非

コスティッチを押し出した意図は理解できる。うまくハイプレスがハマってショートカウンターを撃つチャンスもあったかもしれない。しかし、予想した展開にはならなかった。その時にプランを修正する柔軟性が不足していたことが問題で、その隙を得点に結びつけられてしまったというのがこの試合の本質だろう。

インフルエンザでローマに行けなかったアッレグリ。ランドゥッチが指揮をとっていたが、戦術の運用で後手を踏んでしまった印象を受ける。アッレグリがベンチにいれば、押し込まれた段階でコスティッチを下げさせていただろうか。

とにかく、押し込まれた状況でも4-4-2を継続したことについては、明らかに「非」だ。失った勝ち点は非常に大きい。アタランタ、ミランとは直接対決を残しているとは言え、CL出場権は厳しくなってしまった。他クラブの躓きを待ちながら、勝ち点を積み重ねていくしかないが、4月のスケジュールは殺人的だ。ELを最優先にするか、あくまでもセリエAで4位を狙うか、疲労の色見える選手が目立ってきている中、アッレグリの決断が注目される。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?