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コッパイタリアR16 ユベントス vs モンツァ 〜渋滞する左サイド

今季のセリエA第7節でモンツァに0-1の敗戦を喰らい、猛批判を浴びたユベントス。ロベッラをレンタルで貸し出していたり、来週もセリエAで試合が組まれたり、アッレグリがベンチ外という状況も共通していたりして、ある意味因縁の対決となったこの試合。ユース出身の選手をズラッと並べたユベントスのプレーを振り返ります。

ヤング・ユベントス

ユベントスのスタメンは、ペリン、ガッティ、ルガーニ、ダニーロ、マッケニー、ファジオーリ、パレデス、ミレッティ、アイリング、スーレ、キーン。イタリア人が6人。ユース出身者が6人。20代前半の若い選手たちが7人。若手、ユース出身者中心のなかなか楽しみなメンバーを送り出してきた。ナポリ戦の敗戦を受けて、次節のアタランタ戦は本当に大切な試合になる。そのためのターンオーバーを敷いてきたわけだが、なかなか面白いメンバーになった。

その中でも新しく右ウイングバックとしてハードワークを求められるマッケニー。すっかり便利屋としてのキャラクターが定着しつつある。ただ、クアドラードがケガで使えない現状なら、攻守のバランスを考えればマッケニーが最適解だろう。この使われ方をするマッケニーの心境やいかに…?

圧倒的なスピードで左サイドで脅威になり続けたアイリング。

ファジオーリとのパス交換で先制点を演出したスーレ。

すでにイタリアダービーに先発するなどして実績を積み上げつつあるミレッティとファジオーリは攻守に落ち着いたプレーを見せていた。

期待の若手が躍動し、モンツァのハイプレスに対してスーレとファジオーリのパス交換からスーレがフリーで前を向く。モンツァの守備ラインは下がらざるを得ず、CBは後ろ向きに走りながらの対応を強いられた。ボールはスーレからマッケニーへ。マッケニーもダイレクトでクロスを上げたため、CBの視線はおそらくボールに集中していただろう。キーンをマークするのは難しかったはずだ。要は、ファジオーリとスーレでモンツァのプレスをいなしてスーレが前を向いたところで勝負あり。その前にもアイリングがヨーイドンで左サイドを突破してあげたクロスからファジオーリに決定機が来ていた。モンツァも積極的にハイプレスに出ていたが、後方にできるスペースをうまく活用して決定機を創出していた。

しかし、先制点以降、チームの重心が下がり、アイリングとマッケニーも常時5バックで構えて守ることに。先制したのだから構えて守るのは別に悪くない。しかし、カウンターの出足も悪く、スーレやキーン、ミレッティが孤立してチームの押し上げが効かないのはよくない。得点の気配がなくなり、モンツァに押し込まれる展開になった。さらに、スローインにできるであろうボールをダニーロがコーナーキックにしてしまったところから、見事にマークを外して失点。若手を出した試合のセットプレーの守備は整備できていない様子だった。その後はライン間に構えるミレッティを中心にボールを動かしてモンツァの守備を撹乱して何度かチャンスを作ったが、得点には至らず。

渋滞する左サイド

後半に入っても、ミレッティがライン間でボールを受けてモンツァの守備を引きつけ、周りのスペースの味方を動かすプレーでチャンスを演出。後半早々にミレッティとダニーロとのパス交換から逆サイドのキーンが決定機を迎えるが決めきれず。守備でモンツァを封じつつ攻撃でもチャンスは作っていた。

それでも得点を奪えないユベントスは、ミレッティとスーレに替えてロカテッリとキエーザを投入。同じポジションの交替だったはずだが、キエーザは左に開いてきて、アイリングと使いたいスペースが丸かぶり。サイドを駆け上がろうにもそこにはキエーザがいるし、1対1を仕掛けようとしてもやはりキエーザがいて無理だった。結局、先輩に左サイドを譲ったアイリングはボールを持ってもドリブルを仕掛けることはなくなり、良さが消えてしまった。実は同じ現象がナポリ戦でも起きていた。前半途中からウイングバックから解放されたキエーザとコスティッチが左サイドでバッティング。ポジションが高いキエーザが先に左サイドに陣取るため、コスティッチが上がるスペースが消えてしまった。ナポリ戦の後半はシーズン前半戦の活躍がウソのようにほぼ空気となってしまった。

左サイドにコスティッチとキエーザが集まったことにより、敵のマークも集まってしまってスペースがなくなってしまった。コスティッチやキエーザクラスでも、複数の守備者を相手にスペースを消されてしまってはボールを下げるしかない。クロスを上げようにも、ドリブルで打開するにも、スペースがなく近くに守備者がいるためボールが引っかかってしまう。そうなるくらいなら、左サイドではむしろ1対1の状況で時間とスペースがあったほうがいい。コスティッチならタイミングを外してクロスに持ち込めるだろうし、キエーザならドリブルを仕掛けてチャンスメイクできるだろう。

結局、アイリングに替えて、今季CBとして高い位置まで上がらず後方からのボールの前進に関与するプレースタイルを身につけたサンドロを投入。左サイドはキエーザに任せることにしてポジションを整理した。これが奏功。ボール保持の局面でサンドロから左サイドに開いたキエーザにパス。アイソレーション状態だったキエーザはそのままドリブルで仕掛けて左サイドをファウルを跳ね除けて突破。カットインから鋭く巻いたシュートをファーサイドに叩き込んだ。キエーザのスーパープレーはもちろんのこと、左サイドの渋滞を整理したベンチワークがもぎ取ったゴールだ。なお、きっちりとキエーザの背後を走り抜けてディフェンスを分断しているロカテッリは、ナポリ戦のディマリアとのパス交換同様、ポジションを上げたら上げたでハイクオリティだった。

アッレグリの宿題

さて、次節はナポリ戦の敗北を払拭するためにも是が非でも勝ちたいアタランタ戦。昨季まではフィジカルなフットボールを仕掛けてくるアタランタには苦労してきた。ここで連敗するようでは完全にスクデット争いから脱落してしまう。カウンターメンタリティを見せ、苦手なアタランタにも勝ち切る必要がある。キエーザを先発で使うなら、コスティッチと左サイドで渋滞を起こす可能性はある。タスクの割り振りやポジション調整で、左サイドを整理しなければ、せっかくのクオリティの高さが消えてしまう。アッレグリが真っ先に取り組むべき課題は、キエーザとコスティッチの共存は可能なのか、という問題だ。是非とも共存させたいが、どんな解答があるのだろうか。

5-3-2を継続するなら、コスティッチは左WBが適正だ。あとはキエーザの起用法だが、右WBならポジションは被らないが、キエーザの守備が穴になるし、何よりキエーザの攻撃性能を最大限に発揮できない。おそらく、キエーザは右利きのロッベンだ。ボール保持では、やはり左サイドに張ったところからスタートした方がいいだろう。一方のコスティッチはウイングバックの位置からキエーザの位置に合わせて外からキエーザを追い越すか、中を走り抜けるかをチョイスする戦術眼はあるように思う。Selfishなキエーザに大人なコスティッチが合わせるのが現状ではいいかもしれない。そして、カウンター時はキエーザも中央を走るだろう。その時は、これまで通りコスティッチが左サイドを駆け上がっていけばいい。キエーザの復帰でカウンターの破壊力は爆上がりするだろう。

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