見出し画像

フラム分析 その1

今季から5バックを導入してアグレッシブなサッカーを見せているフラム。勝ち点が伸ばせず降格圏に沈んではいますが、攻守にわたってフィジカルベースでイングランドらしい戦い方をしつつ、現代サッカーのトレンドも踏まえた試合をしていて、観ていて面白いチームです。ここまで試合観戦の優先順位トップに据えて観てきたので、フラムについて4局面に分けて書いておきたいと思います。

フラムの攻撃

フラムは昨シーズンはもともとボール保持を目指したチームだった。CBからショートパスを繋いでゾーン1までボールを運ぶノウハウは持っている。5バックを導入してCBを3枚にしたことによって低い位置で数的優位「確保しやすくなった。さらにアンデルセン、オラ・アイナ、アダラビオヨの3人は足元の技術も高い。ショートパス、ロングパスともに精度は高く、パススピードも申し分ない。さらにハーフウェイラインを越えてドリブルでボールを運ぶこともある。3枚のCBで数的優位を作り、相手のファーストプレスの人数に対して余った選手がドリブルやパスでボールをゾーン2まで運んでいく。3枚のCBだけでボールを運ぶことが難しければ、中盤からアンギッサやハリソン・リードが後方まで下りてきて数的優位の確保に手を貸す。なお、GKのアレオラがビルドアップに参加することはほぼない。GKまでボールを下げても、近くのCBにボールをつけるか、ロングボールを蹴ることがほとんどである。

中盤から先では、主にハリソン・リードが3CBのまえにアンカー的にポジションをとってボールを引き取ることが多い。そして、そのハリソン・リードがボールを散らしていく。アンギッサはフリーに中盤を移動しながらフィジカルを活かしたキープやドリブルでボールを運ぶ。レミナは守備の場面でポジショニングでチームを助けることができる選手だが、ビルドアップ能力ではハリソン・リードに劣る。強豪相手で守備的に振る舞う必要がある時は重宝されるだろう。

そして、左右のWBが高い位置に出ていって幅を取り、相手の守備陣形を広げる役割を担っている。右のデコードバ・リードは豊富な運動量とスピードに加え、シャドーストライカー、CHにも対応可能な戦術理解力も魅力の選手だ。加えて、チャンスと見るやダイアゴナルランでペナルティエリアに走り込んでフィニッシュにも絡んでいく。左のロビンソンも運動量とスピードは水準以上で、特にドリブルでボールを運ぶ能力が高い。そして、主に左サイドから鋭いクロスを供給する役割を担っている。デコードバ・リードとロビンソンはフラムの攻撃には欠かせない選手である。

FWには、ロフタスチーク、ルックマン、カバレロが起用されることが多い。ロフタスチークはフィジカルを活かしたボールキープやロングボールのターゲットになることが求められている。ロフタスチークがボールを収めてキープしている時間にその他の選手が駆け上がり、攻撃に厚みがもたらされる。ルックマンはスピードを活かしたドリブルの仕掛けに特徴がある選手だ。主に左サイドからドリブルを仕掛けてカットインシュートや縦突破からのクロスでチャンスを作り出す。カバレロは万能タイプのストライカーだ。足元で受けることもあれば、エリア内でワンタッチシュートを狙うこともある。シュートを撃つ機会が多く、チャンスに絡めてはいるが、これまでのところはフィニッシュの精度を欠き、決定機を逃している印象が強い。この3人が左右のハーフスペースと中央レーンにそれぞれポジションをとり、デコードバ・リード、ロビンソンと合わせて5レーンを埋めて前線で数的優位と位置的優位を取って攻撃を展開する。

このように、現代サッカーの理論に則って攻撃を展開しているため、チャンス自体は多く創出できている。直近のWBA戦も前半だけで8本のシュートを撃っており、明確な決定機も最低2つは作っていた。ただし、決定機にシュートを決めきれていないことと、前線に足下でボールを受けたがる選手が多いことが問題である。裏抜けからシュートに行く場面が少なく、相手のディフェンスラインを下げることが出来ずにペナルティエリア付近まではボールを運べていても打開できないという状況が頻発している。このことで得点が伸びずに勝ち点を落としている試合も少なくない。

直近のWBA戦ではミトロビッチを先発で起用し、前線のターゲットマンを増やしてポストプレーからの攻撃も選択肢に入れていた。ミトロビッチはボールの収まりが良く、周りの選手を使う眼と技術を持っていた。デコードバ・リードへのアシストは見事だった。しかし、ミトロビッチがボールを収めても周りの選手が裏に抜ける場面は少なく、やはり攻撃は停滞していた。ロフタスチークやルックマンが裏抜けを狙っていくか、ミトロビッチと裏抜けができるカバレロの同時起用を試してみるなどのテコ入れが必要だろう。相手ディフェンスラインと裏抜けを絡めた駆け引きをすることができるようになると、より多くの決定機にを生み出すことができるはずだ。

いい形でチャンスを作れている場面もあり、改善も見込める。これから、得点力が爆発することを期待したい。


次は、フラムの守備について書いておきたいと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?