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コッパ・イタリア 準決勝 2ndレグ ユベントス vs フィオレンティーナ 〜ダイレクトなユベントス

フィオレンティーナとのコッパイタリア準決勝第2戦は2-0でユベントスが勝利。トータルスコア3-0でインテルが待つ決勝へと駒を進めました。ユベントスの公式ツイッターによる直前のスカッドを見て、思わず笑ってしまいました。なぜかというと、ディフェンダー登録の選手が9人に対して、ミッドフィルダーとフォワード登録の選手も9人。明らかにバランスを欠いた編成で臨んだフィオレンティーナとの一線を振り返っておきます。

ダイレクトなユベントス

ユベントスのスタメンは、ペリン、デシーリオ、ボヌッチ、デリフト、サンドロ、ベルナルデスキ、ザカリア、ダニーロ、ラビオ、モラタ、ブラホビッチ。4-4-2をベースに、守備時にはベルナルデスキが右サイド深い位置まで下がって守備に当たっていた。いつものクアドラードが守備の際に任されているタスクだったと思う。高い位置まで守備に出ても、ボールを高い位置で奪おうというアクションはなく、パスコースを限定して中盤から後ろで奪おうといういつものユベントスの守備だった。サンドロを起用し、ダニーロとザカリアのダブルボランチ、守備力もあるラビオとベルナルデスキの両翼という布陣で自陣に引き込む守備でフィオレンティーナの攻撃を受け止める。2ラインと的確なスライドでスペースを消し、フィオレンティーナにチャンスを与えなかった。

そして、ロカテッリとアルトゥールを怪我で欠いていること、相手がフィオレンティーナということもあって、ボールを保持してポジショナルな攻撃を仕掛けることは放棄していた。ボールを持ったら第一選択は縦。さらに他の選手がボールを追い越していく。縦に速いダイレクトな攻撃を志向していた。中盤にゲームを作る選手がいなければ、中盤には質ではなく量を求める。攻守に渡ってとにかくボールを追いかけて走る。中盤でボールを保持してゲームを支配するのではなく、ボール保持でもパスの出し手はデリフトやボヌッチだった。そのパスのターゲットもブラホビッチやモラタが最優先。とにかく縦を意識した、かなり割り切ったプランを持ってきたなと感じた。

このプランなら、サンドロが高い位置まで上がらなくてもOKだし、中盤を経由してボールを運ぶ必要もない。今季、もしくは現状のユベントスが抱える問題を隠すことができる。その上でブラホビッチ、モラタに加え、質・量ともに他を圧倒している守備陣というユベントスの強みを押し出したゲームが出来る。さらに、今季のフィオレンティーナはポジショナルな攻撃とハイプレスを組み合わせたアグレッシブなスタイルを構築して上位進出を果たしているチームだ。裏を返せば、攻守においてユベントスがダイレクトな攻撃で狙うスペースを後方に残してくれているチームだと言える。アッレグリが選択したプランは、今の状態でフィオレンティーナと対するならこれ以上ないゲームプランだったと思う。

縦にボールを送る、裏を狙う

ユベントスが繰り出す攻撃はダイレクトで縦に速かった。低い位置でボールを奪って素早くブラホビッチやモラタにボールを渡して前にボールを送る。ボール保持でフィオレンティーナを自陣に引き込んでボヌッチやデリフトがディフェンスラインの裏へボールを送り込む。前線でボールをキープしているモラタやブラホビッチをラビオやザカリアが追い越していく。これまでのユベントスではあまり見られなかった裏を狙ったり、ブラホビッチら前線の選手を中盤の選手が追い越していく動きが次々と繰り出されていった。パスのレンジも長く、ブラホビッチやモラタが孤立してもおかしくないところだと思ったが、チームとして狙いが統一されていたためか、後方からのサポートが早く効果的な攻撃となっていた。

例えば、ベルナルデスキの得点シーンではペナルティエリア付近でラビオがボールを奪ってダニーロがブラホビッチに縦パスを通したところからだった。左サイドに展開して最後はモラタのクロスのクリアボールをベルナルデスキが胸トラップからボレーで決めた。その時、ペナルティエリアにはデリフトが走り込んでいた。ボールを前に送り、後ろから人が走り込んでくる。悪い言い方をすれば中盤省略の攻撃ということになろうが、現在のユベントスの中盤はクオリティというよりダイナミズムをウリにした選手たちが揃っている。一方でボヌッチ、デリフトと後方から精度の高いロングパスを蹴ることができる選手がいる。フォワードを起点に中盤の選手が絡んでいく魅力的かつ効果的な攻撃ができてきたと思う。

ラビオとザカリア、新たな攻撃のルート

ラビオとザカリアは抜群の働きだった。共に長い足を活かしてのボール奪取。長いストライドからくるスピードを使ったダイナミックな攻撃参加や戻りの速さ。足が長い分加速は遅いが、一度スピードに乗ったら簡単には追いつけない。持ち前のガッツで広範囲を動き回ったダニーロと合わせてピッチを縦横無尽に動いて攻守に渡ってチームに貢献した。ザカリアは攻撃参加にも積極的で、ブラホビッチを追い越してポスト直撃のシュートを放ったり、ミドルシュートを放つシーンもあった。ラビオはドリブルによるボール運びやフォワードへのサポートでボールの前進によく関わっていた。オフサイドになったが、ベルナルデスキのクロスをトラップしてシュートを決めたシーンは今後の可能性を感じさせてくれた。ラビオやザカリアの高い身長やフィジカルを考えれば、クロスに対してペナルティエリアまで飛び込んで来れば相手の脅威になることは間違いない。オフサイドになったとはいえ、実際にラビオはゴールネットを揺らしている。ついにラビオが来た、と期待が膨らむシーンだった。

また、ダニーロの得点シーンも、これまでユベントスができていなかった攻撃のルートだった。サイドの深い位置までボールを運んで、ディフェンスラインを下げさせた上でマイナスのクロスでディフェンスラインの手前を使う。ゴールライン付近までボールを運ぶことによって、マイナスのクロスに合わせる位置がディフェンスラインの手前でも走り込んできた選手がゴールに近いところでダイレクトでシュートを打つことができる。マンチェスター・シティが得意とする得点パターンだ。今回はクアドラード個人の突破がきっかけだったが、スルーパスやワンツーでサイドの深い位置を取りに行く攻撃も見てみたい。

カジェホン

フィオレンティーナがアグレッシブなスタイルを構築していることもあり、フィオレンティーナとの試合はとてもエキサイティングだ。さらに、フィオレンティーナ戦の楽しみは、カジェホンを見られることだ。個人的に大好きな選手で、インテリジェンスがとても高く、さまざまな種類のキックを高い精度で使い分けるプレーヤーだ。かつては右サイドから斜めにペナルティエリアに走り込んでゴールを陥れる狡猾なアタッカーだった。アンチェロッティのナポリでは右サイドを中心にウイングバック、サイドハーフ、ウイング、センターハーフと多岐にわたるポジションを任されて、パス回し、ドリブル突破、高精度のクロス、的確なポジショニングによる守備でチームに貢献。高いテクニックとインテリジェンスに裏打ちされた無駄がなく効果的なプレーで魅了してくれた。18-19シーズンのCLでナポリがリバプールを撃破した時の活躍は今でも忘れられない。リバプールのハイプレスに対抗するため、センターハーフからの横パスを受ける形で右サイドで起点となっていた。そこからドリブルやパスでボールを前進させてナポリのペースに引き摺り込むキーマンとなっていた。最後にはドリブル突破でペナルティキックを獲得して勝利を決定づけた。PKを獲得して座り込んだままガッツポーズを決めるシーンは今でも脳裏に浮かぶ。

今回の試合では、後半途中から右サイドバックとして交代出場した。不慣れなサイドバックの守備に苦戦してラビオに裏を取られたりと悪戦苦闘していたが、攻撃ではトラップの精度、パススピードは衰えを知らず、積極的な攻め上がりで右サイドの攻撃の活性化に貢献していた。どのスペースが空いてくるかの予測が的確で、ユベントスゴールを向いてプレーする時間が長く、抜け目のない選手だった。ベテランの域に差し掛かり、全盛期のスピードやダイナミズムは失われていたように思ったが、少しでもフリーにしたら高精度のクロスを打ち込んできたし、コーナーキックからも精度の高いボールでチャンスを演出していた。逆サイドからのクロスに走り込んでボレーを撃つシーンもあり、往年のダイアゴナルランも見せてくれた。何より、ただ好きな選手のプレーを見るだけでワクワクするというスポーツ観戦の最も根本的な楽しみを思い出させてくれた。試合終了後、ケーンやボヌッチと健闘を称え合うシーンで思わずジーンと来てしまった。セリエAでの対戦が楽しみだ。

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