セリエA 第25節 ヴェローナ vs ユベントス 〜傑物ユルディズ
ヴェローナとのアウェイゲームは2-2の引き分け。勝ち切るチャンスもあっただけに悔しい結果となってしまいました。前節の敗戦でスクデットはほぼインテルの手中に収まったため、気になるのは5位との差ということになってきました。
試合内容については、シーズン当初から明らかだった弱点を突かれた上にパスミスを繰り返してヴェローナに主導権を渡してしまうという自滅に近い展開。審判の不安定な笛にも苦しみ、ヴェローナにチャンスを何度も与えてしまいました。
ユベントスの弱点
ユベントスのスタメンはシュチェスニー、カンビアーゾ、ガッティ、ルガーニ、ダニーロ、コスティッチ、マッケニー、ロカテッリ、ラビオ、ユルディズ、ブラホビッチ。いつもの5-3-2でスタートしました。ハイプレスに積極的に出ることはなく、ミドルプレスをメインに据えてじっくりと構えるプランだったように思います。ヴェローナはフィジカルが強力なチームです。ハイプレスに出て展開を速くして走り合いになるのを避けたかったのかもしれません。
当然、ヴェローナは自分たちのストロングポイントを活かしたいところ。4-4-1-1をベースにして、ロカテッリにマンマークをつけながらユベントスの3バックにハイプレスをかけに出ました。おそらく、ユベントスの3バックから時間を奪えばボールは取れる、少なくともロングボールに逃げさせられるいう計算をしていたのでしょう。ガッティは決定的なパスミスをしてしまい、ダニーロはプレスをかけられたらノータイムでロングボールを蹴ってしまっていました。1月は絶好調だったブラホビッチもさらに警戒されて密着マークに苦しみロングボールを収めきれません。ヴェローナにボールを回収され、ボール保持が安定しません。さらにビルドアップやカウンター発動の段階でパスミスが目立ち、守備の陣形が整う前に攻め込まれるケースも増加。さらには主審のファウルの基準が曖昧で、プッシングやキッキングでもファウルを取ってもらえずカウンターに持ち込まれるケースも多数。避けたかったはずの走り合いの展開に持ち込まれてしまいました。
1失点目はセットプレーの流れからゴラッソを叩き込まれました。これについては相手を褒めるべきでしょう。2失点目はコスティッチのポジショニングミスが失点に直結してしまいました。左サイドに流れたノスリンがいたにも関わらずポジションを上げたのは完全なるミス。失点直後にボールを叩いて怒りを露わにしていました。自身のミスによる失点であることを理解していたのでしょう。ユベントスもロングスローからのPKと相手からのプレゼントパスによって同点に追い付きましたが、その後は決定機逸を繰り返してドロー決着。後半、5つの決定機があったにも関わらず1ゴールしかマークできていないことは大いに反省すべきです。ただ、CBのビルドアップ能力の低さという弱点を見事に突かれて試合の主導権を握れなかったことが勝ちきれなかった要因の一つでしょう。ブレーメルはドリブルによる運び、縦パス、サイドチェンジとシーズン当初に比較してビルドアップ能力を向上させています。しかし、ガッティは未だ不安定なところはありますし、ダニーロに至っては怪我の影響からか簡単にロングボールを蹴るようになってしまっています。ボール保持を強化するのであれば、今夏CBを補強することは必須です。何なら、冬にハイセンをローマにレンタルしたことが今後大きく響いてくるかもしれません。
コスティッチのポジショニング
ただし、前節はロカテッリを消され、CBにボールを持たされたにも関わらず、左サイドを起点にペナルティエリアへ攻め込み、チャンスを創出していました。今節はなぜそれができなかったのか。1つはブレーメルの欠場が響いているはずです。先述の通り、ブレーメルのビルドアップ能力は向上しており、ヴェローナのハイプレスに対してもドリブルでいなしたり、GKを使って時間を作ったりすることができたかもしれません。
今節のユベントスはスタメンが入れ替わっていました。ウェアに替えてコスティッチ、キエーザに替えてユルディズが先発していました。前節は左に張るキエーザを起点にカンビアーゾとラビオががポケットを取りに行く動きを連発していました。しかし、今節はキエーザがおらず、コスティッチはWBをベースに動くため、ボール保持時にはCBへのフォローの意識が高く、左サイド高い位置を取ることができませんでした。その上、右サイドのカンビアーゾがWBのポジションを離れて動き回るため、なおさらコスティッチが後方のフォローに回らなければいけませんでした。つまり、左サイド高い位置に起点を作ることができず、ラビオやその他の選手がポケットに走り込むだけの時間を作ることができなかったのです。ここでもCBのビルドアップ能力の低さが響いています。コスティッチがCBのフォローに回らずともボールを保持できていれば、コスティッチが左サイドの高い位置までポジションを移して起点になれた可能性が高いでしょう。
結局、ロカテッリを消してしまえばユベントスのビルドアップは機能不全に陥るという問題が再浮上することになってしまいました。前節見せたプランは、キエーザとカンビアーゾを左サイドに置くことで発動できる、人的要素が強いものだったと言えるでしょう。
傑物ユルディズ
さて、ロカテッリが消され、コスティッチが高い位置を取れず、不安定なCBによるビルドアップに頼らざるを得ない状況になったユベントス。それでもヴェローナ陣内に攻め込み、チャンスを作り出せたのは、ユルディズの存在が大きいでしょう。ビルドアップが滞っていると見るや、中盤までポジションを下げて、時にはロカテッリの横まで下がってボールを引き取りに来ていました。本来はブラホビッチと2トップを組むはずの選手が中盤まで下がっていくと、相手のCBがマークに出るのは難しくなります。危険な真ん中のスペースを開けることになるからです。中盤の選手もラビオとマッケニーを警戒しているところにフラッとユルディズが現れたらすぐにマークにつくことは困難です。中盤でフリーになったユルディズがCBからボールを引き出すと、すぐさま半身の姿勢でトラップして、ツータッチ目には前を向いてドリブルを開始。単独でボールを運んでしまいます。しかも、細かいボールタッチと相手の重心の逆を取るドリブルでボールを取られることはなく、むしろ相手の守備を引きつけてパスを出すことで味方をフリーにしていました。手詰まり感があったビルドアップを1人で解決してしまうあたり、並の18歳ではありません。実際にピッチで表現していることは、昨季あのディマリアが担っていたタスクを、味方により多くの時間とスペースを与えられるように自分に負荷をかけて行っていると言えます。それだけでなく自らペナルティエリアに走り込んであわや先制点というシーンも作り出し、ロカテッリが消された中でユルディズが司令塔としてゲームメイクからシュートまで演出していました。ディバラ、ディマリアというワールドクラスの選手が担ってきたタスクを高次元でこなし、チームを機能不全から救ってみせたユルディズ。改めて彼のクオリティの高さには驚かされました。
新風アルカラス
そのユルディズと交替で入ってきたアルカラスも面白い選手です。ボールを受けると縦にボールを動かしてゴールへ向かうプレーを次々と見せてくれました。特に目立っていたのは、パスを出してから前に走り込むスピードです。パスを出した右足が第一歩になっていて、一歩相手のディフェンスに先んじて動けていました。身体操作も素早く、細かいステップワークも難なくこなしており、アジリティと積極的な攻め上がりに特徴がある選手なのでしょう。1月加入の選手ですが、パスミスもほとんどなく、味方との呼吸も合っていたように思います。アディショナルタイムには見事なワンツーでキエーザの決定機を演出。ライン間でボールを受けながら、ペナルティエリア付近でチャンスメイクに関わってくるプレーを期待したくなります。ヴェローナを押し込んでプレーできている時間帯に投入されたため、守備については未知数ですが、結果が出ないこの時期を打ち破る起爆剤になるかもしれません。
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