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セリエA 第20節 ユベントス vs サッスオロ 〜配置で殴るユベントス

サッスオロとのホームゲームはブラホビッチのゴラッソ2発でユベントスが快勝しました。そして、試合運びもほぼパーフェクト。カウンターからベラルディに独走を許す場面もありましたが、シュチェスニーがスーパーセーブで救ってくれました。サッスオロは怪我人も多く難しい状態だったようです。この試合では、ユベントスが攻守に渡ってサッスオロの上を行っていたように思います。

左右非対称のハイプレス

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、カンビアーゾ、ルガーニ、ブレーメル、ダニーロ、コスティッチ、ミレッティ、ロカテッリ、ラビオ、ユルディズ、ブラホビッチ。お馴染みの5-3-2をベースに、ウイングバックとロカテッリを前に押し出す形でハイプレスを仕掛け、選択肢を削ってパスが出た先でボール奪取を狙っていきました。4-3-3をベースとするサッスオロに対して、2CBには2トップをぶつけ、右SBにはコスティッチを上げてマークにつきます。アンカーの選手にはロカテッリを上げ、おもにユベントスの左サイドに流れてきていたトルストベットにはラビオがマークについていました。一方の右サイドでは、サッスオロの左SBにはミレッティが出ていき、ロリエンテはカンビアーゾがマークについていました。そして浮いてくるもう一枚のCHにはルガーニが前に出て対応。なんとルガーニが敵陣ペナルティエリアまで上がってプレッシャーをかける場面もありました。ユベントスは明確にマークにつく相手を決めてハイプレスを行っていました。

ブレーメルはやはり超強力で、ピナモンティに全く仕事をさせません。苦し紛れのロングボールには悉く競り勝ち、ピナモンティにまともにボールを触らせませんでした。そのため、ハイプレスに出てロングボールを蹴らせればサッスオロが狙っている形にはさせずに済むことになります。上記の通り、GK以外は人を決めてマンツーマンでつく形を設計しているので、サッスオロからするとパスの出しどころがありません。ロングボールを蹴る機会が増え、ブレーメルが跳ね返すというシーンが何度も見られました。

その上で、ボールを運ばれたら、5-3-2ブロックを敷いてローブロックでゴール前と中のスペースを固めて守る。二段構えの守備でゲームを支配しにかかります。実際にサッスオロは攻撃のフェーズでうまくユベントスを出し抜くことはできませんでした。サッスオロに訪れた決定機はユベントスのボールロストに起因したカウンターだったので、ユベントスの守備は機能したと言えるでしょう。

ユベントスのボール保持

アッレグリはボール保持においてもサッスオロを封殺するための策を用意していました。ボール保持時のユベントスの配置は、最前線にブラホビッチを置き、ミレッティとユルディズがサッスオロのSBを引き付けるようにハーフスペースをウロウロしていました。絶好調男のブラホビッチの圧倒的なフィジカルの強さもあり、このポジショニングでサッスオロの4バックを固定。そしてウイングバックをサッスオロのウイングの後方にポジションを取らせてウイングを引き付けます。サイドバックが上がれない以上、ユベントスのウイングバックにはサッスオロのウイングがつくしかありません。ウイングがCBまでプレスに出られないように微妙なバランスでウイングバックのポジショニングを調整して、3CBとロカテッリが4vs2の数的優位を確保していました。ピッチを上から見ると、ミレッティが一列上がった3-4-3への可変と言ってもいいかもしれません。

さらにロカテッリ、ブレーメル、ダニーロが入れ替わってサッスオロのマークを分断し、フリーとなった両サイドのCBを起点に攻撃を仕掛けていました。前半の早い段階で、ポジションチェンジで左CBの位置に入っていたブレーメルから逆サイドのカンビアーゾへ、右CBのルガーニから逆サイドのコスティッチへ、それぞれ対角の鋭いロングボールを通してサッスオロの高い守備ラインの裏を突いてチャンスメイク。サッスオロがCBからのロングボールを警戒して守備ラインを下げると、今度はショートパスを使って前進…と、チームとしてサッスオロの守備戦術を揺さぶって攻撃を仕掛けていました。

選手の配置でサッスオロに迷いを生じさせ、フリーになったCBから対角のロングボールで守備ラインの裏を突く。サッスオロは、より積極的に前に出てハイプレスをかけたかったところなのだろうと思いますが、ユベントスのボール保持の仕組みによって前に出て行く勢いを止められてしまったように思います。

試合を通して

ハイプレスを仕掛けて選択肢を奪い、パスが出た先でボールを奪って仕掛けたショートカウンターから得点を重ねて主導権を握りました。こうなれば自陣で構えて堅く守るのはお手のもののユベントス。ハーフウェーライン付近でパスミスからカウンターを喰らう場面が何度かあったことは反省すべきですが、試合運びはほぼパーフェクトと言っていいのではないでしょうか。

ユベントスは選手のポジショニングでボール保持を安定させることに成功していました。その後の攻撃はむしろ縦に速く、その分ボールロストも多いのですが、ゴール前に迫る回数が多くエンタメ性が高い試合展開を見せており、チームとしての若さを感じました。守備の権化のようなアッレグリですが、比重が守備にあるだけでこれくらいの試合展開は作れる監督です。今のユベントスは、年末あたりから毎試合シーズン最高のパフォーマンスを更新しているような状態だと思っています。これからどんな試合を見せてくれるのか、ますます楽しみになってきました。


それにしてもブレーメルのビルドアップ能力の成長はとんでもない。昨季のバタバタ感はどこへやら。ロカテッリが多くのチームから警戒されている中、むしろブレーメルがビルドアップの中心を担っています。カンビアーゾへの対角パスはマジでシビれました。

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