セリエA 第27節 イタリアダービー(AWAY) 〜見えてきた完成形
インテルとのイタリアダービーは0-1でユベントスが勝利。ラビオやブラホビッチのハンド疑惑が盛んに議論されているようですが、クリエイトした決定機の数を考えても、ユベントスの勝利は決して不当なものではないでしょう。この試合ではディマリアもミレッティも出場させず、ユベントスの方からフィジカルなゲームを誘っていました。コッパ・イタリアの準決勝でもインテルと当たる(しかもホーム&アウェイの2試合!?)ため、手の内を隠したのかもしれません。互いにCL、ELを挟んでコンディション調整も難しかったところもあり、やや大味な試合になりました。
フィジカルなユベントス
ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、デシーリオ、ガッティ、ブレーメル、ダニーロ、コスティッチ、ファジョーリ、ロカテッリ、ラビオ、スーレ、ブラホビッチ。いつも通りの5-3-2をベースとしてきたが、右WBにクアドラードではなくデシーリオを使ってきたあたり、守備から試合に入るというアッレグリのメッセージだったのだろう。そうなると、必然的にボール保持はインテルに譲ることになるため、ディマリア・ロールでボール保持はプランAではなくなる。つまり、ディマリア、ミレッティではなく、よりフィジカルに優れたキーンを使いたいところだろうが、ローマ戦の密着ローキックのためにサスペンションで使えない。ミレッティは万全であればボールも運べるし、守備でも走れるため先発もアリだったと思うが、2月は負傷で休んでいたことも考慮に入れたのだろうか。結局、スピードのあるスーレが先発となった。
ブレーメル、ガッティ、ブラホビッチらフィジカルに優れた選手を並べて、インテルにボール保持を譲りつつも堅い守備からカウンターを狙う。実際、インテルのクロスに対してはブレーメル、ガッティ、ダニーロに加えてロカテッリも加勢して徹底して跳ね返していた。ユベントスに対してクロスを入れるなら、CBを外して大外を狙うか、ハーフスペースをとって低いショートクロスを折り返すか、なんらかの工夫を加えないとシュートまで行くのは難しいだろう。ペナルティエリアに人数を揃え、しかもフィジカル勝負でも負けない選手たちが待ち構えている。外からのハイクロスは余程の精度とスピードがない限り得点にはならない。その自信があるからこそ、ユベントスの5-3-2守備ブロックは徹底して中を閉める。相手の攻撃ルートを外に誘導してクロスを上げさせれば、ほぼ失点しないと計算しているはずだ。
しかし、中盤には人が足りないユベントス。ロカテッリ、ラビオ、ファジョーリは連戦の中出場を続けており、疲労も重なっているだろう。互いの距離が遠くなり、簡単に中を通される場面も散見された。ルカクがブレーメルに封殺されている以上、クロスをメインに攻撃を仕掛けても埒が開かないインテルは、なんとかユベントスの守備ブロックの中を使いたかった。ルカクとバレッラが左ハーフスペースで見事なパス交換からシュートに持ち込んだシーンは素晴らしかった。ラストパスに浮き玉を使ったため、バレッラのシュートがボレーシュートになった。それでコースを狙うのが難しくなったかもしれない。浮き玉の処理は流石に間接視野では難しいだろう。ユベントスの守備も裏を取られても最後までバレッラにプレッシャーをかけようと戻ってきていた。バレッラはボールに集中してシュートを撃ち、シュチェスニーはしっかりとシュートコースを塞ぐ立ち位置に立っていた。最後はシュチェスニーが基本通りのポジションを取れていたことが大きいと思う。危なかった場面はこれくらいで、残念ながらインテルは中を使った効果的な攻撃がほとんどできなかった。
専守防衛
それはなぜか。一つは、そうは言ってもユベントスの守備がコンパクトでソリッドだったこと。中盤の守備ラインは越えられても、中盤と最終ラインとの距離が恐ろしく近く、ダニーロやガッティが素早く前に出て間受けを狙うラウタロやバレッラ、チャルハノールを潰しにかかる。バレッラの決定機以降は守備ブロック内へ入ってくる人とボールへの警戒レベルをさらに上げたように思う。外を使わせる分にはOK、守備ブロックをコンパクトに保って5バックから前に出る守備も組み合わせて中を使われたとしてもタイトにマークについて自由にさせない。ユベントスのタチが悪いところは、ガッティやダニーロが前に出て守備をしても、そこで奪おうと無理はしないところだ。外に逃げられるのはOKなので、無駄なファウルでFKを与えない。インテルからしたらチャルハノールのFKは大きな期待値があったはずだが、直接FKを狙えたのは一度だけだった。このユベントスから点を取るとしたら、ピンポイントのクロスを合わせるか、神コースにミドルを撃ち切るか。もしくはユベントスのミスにつけ込むか。若手を多く起用していることもあり、今季のユベントスは細かいポジションのミスはあるし、不用意なパスでカウンターを誘発することもある。特に攻撃のキーマンとなっているコスティッチの裏は狙い所だろう。インテルも右サイドからのクロスで何度かチャンスを作っていた。この試合では、ガッティ、デシーリオが冷静に対応して事なきを得た。ただ、コスティッチの攻め上がりはユベントスの攻撃にとって欠くことのできない要素なので、これは仕方ないところだろう。CBや中盤の選手が上手くフォローしながら、攻撃の期待値がリスクを上回るように管理していくことになるだろう。
もう一つの理由は、インテルのコンディションが上がり切っていなかったこと。インテルはCLに勝ち残っており、週2試合のスケジュールをこなしている。しかも、イタリアダービーの前にはポルトに押し込まれながらも0-0で押さえ込んでR8進出を決める壮絶な試合を見せていた。ユベントスはフライブルグが前半で退場者を出したこともあって、後半には主力をベンチに引っ込めることもできた。コンディション調整はユベントスの方に分があったように思う。密集の中でボールを扱うのは、そんなに簡単なことではない。ラウタロやバレッラ、チャルハノールクラスの選手でもコンディションが万全でなければボールが思ったところに止まらなかったり、そもそも動きのキレが落ちてマークを剥がせなかったりしてライン間でのプレーがうまくいかないことはある。インテルが中をうまく使えないとなると、ユベントスの守備を崩すのは至難の業だ。インテルもブレーメルに抑え込まれていたルカクに替えてジェコを投入するが、届かなかった。
カウンターの切れ味
そして、この試合で目立っていたのはユベントスのカウンターの切れ味だった。5-3-2守備ブロックを自陣に敷いてインテルを引き込み、敵陣のスペースを突く。ブラホビッチとスーレに加えてラビオ、コスティッチが駆け上がる。フィニッシュワークが会わずに得点を重ねることはできなかったが、敵陣で数的優位、もしくはブラホビッチやキエーザがDFと1対1という状況を何度となく作り出した。
インテルもボールを失ったところからすぐにプレスに動いていた。しかし、ラビオやブラホビッチはボールを奪われないし、ロカテッリやファジョーリは技術を駆使してパスワークでインテルのプレスをいなしていた。その後は広大なスペースを駆け上がってカウンターを放つことができる。ボールを保持して攻め込んでくる相手に対して、ボール奪取から前線に繋いでロングカウンターを撃つ。相手の即時奪回を狙うプレスをいなして敵陣に攻め込む。リトリート、即時奪回、相手のネガティブトランジションがどちらであってもカウンターを撃てるだけの鋭さが今のユベントスにはある。その気になればディマリアかミレッティを使ってボール保持もできる。アッレグリが目指すどんな状況でも対応できる全方位型のチームが完成しつつあるのかもしれない。
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